ホン雑記 Vol.566「魂魄階層エレベーター」

補助輪が外れた時、工作で電動糸ノコを使った時、家庭科で鮭のムニエルを作った時、修学旅行で友達と夜なのに一緒にいる時、運転免許を取った時…。

大人の階段をのぼったなぁと感じられることはいくつもある。その時の空気感はなんとも清々しく、わずかの誇りにまみえ、充実感があり…まぁ、つまりは、わかりやすく幸せだった瞬間だ。

今は自転車なんか乗りたくもないし、初見の機械は危ないし、料理メンドくさいし、夜の外出は億劫で19時には家に居たい、運転もメンドくさくなって運転手を雇う…。

イキイキとした瞬間が全部やりたくないことに変わるなら、そりゃぁ大人になってしまった人のほとんどは幸福感を得にくいわな、と思う。ここに生きづらさの答えがすでにある。誰に何をコントロールされたわけでもなく（もちろん時代が下るにつれ規制は増えるけどそれもそれほど関係なく）、自分で手放して来た。
上に挙げた例が180度変わってしまったということだけでも、そりゃぁ天国はどんどん見えなくなっていくよなぁ。あ、オレの場合は料理だけはそんなに落ちてないわ。発作的に炒め物したくなる時ある。

オレが時たま神になりたいだとか、自分のことを神と思いなよってのたまうのは、こういうことの対処として言ってるのかもしれん。ほとんどのことは制御可能なのだと。
「いやいや、このご時世窮屈で窮屈で、思い通りになんていかないよ」ですとな？　そういうこっちゃーないんだよ、小僧。

あれだけ幸せだと感じたことが、今ではもうメンドくさくなってつまんな～～～い…。
その勝手な変化には、自然の摂理も偉い他人も介入してない。元に戻すには自分の思考によって、人間界からちょっと外に出た思考によって色合いを変えるしかない。

これ、怪しい話をしてるんじゃないのよ。誰でも、人間の形を取る前にすでに思考してたよね。他者を蹴落としてでもゴール卵子を目指した時があったよね。自分を多く拡散することを置いておいて、たどり着いた最初の泳者精子にエネルギーを注ぐことに決めて月に1回しか生まれないぞと決めた時があったよね（こっちも毎月1000分の1ほどの競争を勝ち上がった者らしい）。

もっと言えば、その形を取る前にも思考してたよね、もっと原初の細胞の時点で。いや原子の時点で、いや素粒子の、いや無形のエネルギーだけの…。どこまで遡っても思考はある。たまたまそうなったとかしょーもないことほざくんじゃない、科学者ども。

反抗期の娘が「なんでアタシなんか産んだのよ」とか言うけどさ。自分もその時すでに意志あるのよ。なきゃー受精も着床もしないし、メシも食わんし、寝返りも打たんし、立ち上がりもしないし、ニマーッとしてまわりの大人たちの笑顔を引き出したりもしない。勝手に自分でやってきたことだろがい。
それがなんだい、人間界でちょっとつまずいたぐらいで出生まで人のせいにして。いったいどこまで他人事にすりゃー気が済むんだい。

いかん、メチャクチャズレてるわワシ。
まぁとにかくさ、人間としてじゃなく、原子や魂…とまでは言わんけど、ホモサピエンスとして生きてみたらどうだいって思うわけ。また怪しいこと言うけど（自覚ある）、その生きてみる生命体の階層ってある程度コントロールできるんよ。今日は虫だなとか、今日は女だなとか、今日は花だなとかさ。ポジショントークの真逆の発想だわね。言うてもオレもまだまだ無意識やってるけどね。ポジトー。

昨日の『マツコの知らない世界』で歩行者天国が日本を変えると思うっていう若者がいたけど、オレもホントそう思う。

単純接触効果ってのがあるぐらいでさ、生物って何度も何度も会えば、たいていの場合は仲良くなるもんなのよ。これと同じライン上に逆なる「非接触効果」もあるはずで、なんの意図も敵意もなく、たまたま気づかずに挨拶しなかったり、出来なかったりすると急にゼロ以下になる時あるじゃない？　これって「飲みにいこーぜ」の反対の現象よね（なぜオネエ）。

ホントはニュートラルな関係のはずなのに、お互いに頭の中でマイナスモンスターを作っちゃってギクシャク。これって自分の中でも、好き嫌いの影響がどこ（接触の範囲や頻度が）からはじまって、どこからは影響受けないのかわかるもんじゃーねーんだよ。そんなもん。

だからこそ、だからこそよ、挨拶や何げない交流っていうのは、自分たちが思ってる以上に大切なことだとアタシ思うの（情緒イカれてんのか）。

目に見えないことって、そういうことでもあるんだよ。

つまり、朝ゴミ捨てに行く時に、ハツラツと歩いてないオレにはこんなことを言う資格がない。