ホン雑記 Vol.526「ラブルーキー」
昨日の記事で「愛は技術」だと書いたけど、それってどういうことだろう。ま、少なくとも持って生まれたものだけじゃない。あっても2%ぐらいのもんだろう。
たとえば若い女子が彼氏に「昨日はなんで電話くれなかったの?」というよくある光景に、男のほうは「あぁ、昨日は疲れてて寝ちゃったよ」なんてこれもよくある返し。
この女子の愛のスキルは低い。あ、先に言っとくけど、こんな女子の典型がオレぞ。嫁にこんなことばっかり言っている。だから自分も全然できてないし、自分への超備忘録だ。
「なぜ?」は当人も相手も気づかないほどの威力がある。もうこれだけ覚えて帰ってもらってもいいぐらい。「なぜ?」はアカン。オレも頑張ろ。
なぜ「なぜ?」がアカンのか。
・「あなたは私に何々すべき」が根底にある
・自分の思いを率直に告げていない。
・それによってクイズ形式
実は「なぜ?」と問うだけでこれだけの火種をはらんでいる。当人も、相手も気づきにくい。純粋な質問に見えるからだ。そして、こんなやりとりによって男が変わることは、無い。
この「なぜ?」は質問ではない。「何々できなかった理由を答えよ」が形を変えてるだけで答えなど決まっている。というか、答えを求めてすらいない。ただワーキャー言ってるだけ。
「なぜ?」の土壌である「寂しかったんだけどな」「心配したんだけどな」を素直に告げるほうがよほど男の記憶に刺さる。次からは電話も来るだろう。(「だけどな」も、十分に成熟したふたりなら十分に未熟で脅しだと受け取るだろう)
それを素直に言えないためにクイズ形式。そう、みんな大嫌いクイズ形式だ。オレだけか?
これは時間と思考のリソースを無駄に奪う。相手に「えっ、えっ!?」と思わせる。そう思わせてくる相手の欲求を、なぜ次回から叶えようと思うか。
不慮の事故で子供を亡くした夫婦が離婚に至るケースがあるが、これなんかは技術の不足ゆえの最たる悲劇だろう。そんな時にお互いへの愛情が減るなんてことはそうそうないはずだ。
そこで起こっていることは、お互いの表現方法と受取方法の4つともがすべてボタンを掛け違っているだけ。だけと言っても強烈な落胆を生むわけだが。
話す側が「なぜ?」ではなく本当の気持ちを吐露していたら、そして聞く側が相手のやり損じたアウトプットを修正して受け取ってやれば「俺が悲しんでないとでも言うのか!」という買い言葉を言ってしまうこともなかったかもしれない。
甘えすぎ、甘えをハネのけすぎ、どっちが悪いとかではない。問題なのは、
「相手は自分の思う通りのことを言語化しているはずだ」
「こういう時はこういう感情になるはずだ」
というデフォルトの設定がズレているということだ(ふたりが出逢った時には合っていたものが)。
つまり「わかった気になる」ことからすべての人間関係のほつれが始まる。
「信じてたのに」「普通そんなことする?」「あなたのためを思って」などなどがすぐ口を衝く場合は技術不足かもしれない。
以前、コブクロの小渕健太郎が「相方とケンカをしない秘訣は」と訊かれて「絶対にケンカをしないことです」と答えていたが、禅問答のようでありながらオレは瞬時に理解した。
そもそもの土台がズレてるよ、そういうことなんだろう。ケンカをする機会など、これからたびたびやってくるに決まってる。その時に「絶対にケンカしない」とセレクトし続けること。ケンカしないふたりだなどと夢にも思わないこと…。そう言われた気がした。
ウチら夫婦は事実でも小説でも見かけたことがないほどの素晴らしい夫婦だけど(こんなノロケあるんか)、それでも嫁が居ない時に「あれは言いすぎたなぁ」(逆はない。かわいそう)と思うのはなかなか無くならない。
目の前にいるとオレの強烈な甘えん坊が出て、人間関係が見えなくなるんだろう。で、あとになってひとり皿を洗ってる時なんかに「こういうふうに接しないといかんなぁ」とふと思いつくようなスタンスこそが、オレの思う理想の自分なんだろう。
人のことになるとよく見えるもんだけど、「私が~、私が~」の瞬間は愛のド素人になるよね。