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ホン雑記 Vol.768「おっさん、数年ぶりに『魔女宅』を観る」

歳とってから、前に観た映画を観るとまったく受け取りかたが違うってことはよく聞くし、実際そうだなぁとは思ってたけど、今回はひどかった。だからまぁ、すんごい良かったって話。


それが『魔女の宅急便』なんだけどもね。この映画、オレが初めてひとりで観に行った記念すべき作品なんだよね。映画館の雰囲気や観終わってからのパンフレットなどなど、しばらくはホヤ~ッとなるような浮遊感というか非日常感を覚えてるなぁ。
それが中1の13歳だったからさ、キキと同じ年齢ってのも没入感をいや増してくれたんだろうな。

ところがですよ、以前から録っといたレコーダーの魔女宅を停めつ戻りつしながら観てたら、いままでの自分はいったい何を観てたんだろうかと思わされた。「これ、同じ作品?」ってなぐらいだった。
最近のオレはお好み焼き食ったり(自炊です)、月を見上げたりするだけでも泣けるレベルなんで(いつもじゃないです)、映画なんて観なおしたらどんなもんだろうと思ったらそりゃぁひどかった。

そもそも、いままでのオレはずーっとジブリ作品に対して「トップクラスに好きな映画たちだけど、特に感動はない。ただ雰囲気とか世界観は最高」っていう評価だった。トトロあたりから特にそう思ってた。ナウシカやラピュタみたいなわかりやすい目的も特になく、サザエさんに毛が生えたようなストーリーだと。
が、昨日観たら泣きまくってビックリした。観てすぐに2回泣いたんで、これは、と思ってカウントしてみることにした。なんだかせこい映画の観かただけど。
実際落涙まで行った5か所を挙げてみる。


1.おしゃぶり

グーチョキパン店の客が忘れた乳母車の赤ちゃんのおしゃぶりを、パン屋おかみのおソノさんに代わって届け終えたところでポロリ。「あぁ、この偶然が運命を切り開いたんだなぁ」と。
このシーンの前にキキの母親や、通りがかりの先輩魔女を通じて「飛ぶこと以外に何もできない」という情報を入れられてるんで、「あ~、『仕事』が見つかって良かったねー。そうか、だから宅急便なのかー!」とわかりきっていたはずのことになぜか小躍り。
大人になっても何者にもなれていないオレから見て、13歳の少女が自分の才能を活かして糧を得ることがどれほどすごいことなのかと思ったんだろう。


2.おとどけものいたします

ハプニング続きでようやく配達から帰ってきたキキは、このパン製の看板を見つける。無口なパン職人のフクオ(名前いま知った)が新しいビジネスのために作ってくれたのだ。
キキはこのあと店に入り、おソノさんと「あれ何?」ってな感じで話して、フクオに抱きつくんだけど、そこが無声のためかポロリ。3回見直した。
これ店の外からのカメラワークじゃなかったら泣いてないと思う。セリフがなくても完全に伝わる…いや、それ以上に伝わるところは音声情報を省くんなだなぁ、ハヤオ、スゲーなぁと思わされたシーンだ。


3.ニシンとカボチャの包み焼き

…が泣けるわけではない(のちにある意味泣けるが)。正確には老婦人宅の電気オーブンが壊れてしまったためにキキが発した「そのオーブン(窯)は使えないのですか?」以降の流れで泣いた。なんか、生きてるって感じするやん。
歳とると『コクリコ坂から』みたいに全編掃除してるだけの映画がやたら好きになってくるけど、なんかそんな感じ。
中1の時はバーサ(お手伝いの婆さん)が窯のオーブンごときで「ワクワクする」って言ってたのスルーしてたけど、今回はオレもワクワクした。まだジーサでもないのに。
掃除だとか、調理だとか、なんかすごいエネルギーが秘められてるんだろうなぁと思ったシーン。アンチデジタル野郎だから特にかもだけど。うつ気味の人は是非やるといいよ。
っていうこの文もデジタルでおとどけしてます。

そんな苦心の末のニシンパイ、届け先の老婦人の孫娘に「あたし、このパイ嫌いなのよね」と言われるんだけど、この時のキキの呆然っぷりに今回初めて気づいた。そりゃ呆然とするわな。嵐の中ズブ濡れになってきたっていうのにさ。ジジの「ホントにあの人の孫?」がせめてもの救い。


4.「違うの。ごめん。だって、とても怖かったの」「僕も怖かったよ」

34年前に観た(え、そんな経つの)時の自分と一番の差を感じたシーン。
この画像のあと、プロペラが取れて死にかけるんだけど…とはいえ、アニメなんで「イテテテテ」ぐらいのもんだけど、そのあとにキキが大笑いする。ヒックヒック言って息もできないぐらいになって、口もアワワとしたヘンな形になるんだけど(笑いをこらえるのに必死な感じの表現が見事)、トンボがどうしたのかと訊ねるそのあとのふたりのセリフで徐々にポロポロ。
これは中1の時も、そのあとに何度か観た時もそうだったんだけど、なんかこっぱずかしいような感情しか湧かなかった。FF10でティーダとユウナが無理くり笑顔の練習をするのを見させられる時の「さぶっ感」に似たようなさ。
ところがいまは、これを書いてるだけで半泣きしている。その感情の理由がまるで言語化できない。こんなのは珍しい。「助かって良かったね~」って感じでもない。ただ、ふたりがとっても輝いて見えたんだな。このシーンが特に。
それはもちろん、トンボが「僕も怖かった」のにキキにつられて大笑いするというのが琴線なんだろうな。


5.大団円

飛行船から落ちかけるトンボをキキが救出に向かう流れ全般。この絵のシーンあたりですでにウルッと来ている。
ここはクライマックスなんで、おしゃぶりのとこで泣いてるようなボクちゃんは当然ここでも泣くわけだけど、特筆すべきはやっぱりこれまでキキが不調で飛べてなかったってことなんだよね。
魔力が弱まって飛べなくなることは、この町で生活していけなくなることを意味する。その不安をおソノさんや絵描きのウルスラに打ち明けて、そのあと初めての…うっ、あかん、また泣けてくるわおっちゃん。

トンボが力尽きてロープから手を離した時に、キキが急降下していくシーン、もちろん何度も見返した。カッチョえ~~~! と昔より思えたのもなんか幸せ者。



結論。
歳とるって最高、ですよ。

ホントそう思った。結局2時間の映画を4時間ぐらい掛けて観たわけだけど、綺麗な背景のところは全部停めて観たね。
これね、上に挙げたような心情的な気づきが爆増してたのはもちろん、こういう映画作品の資産性…それは貴重な映像を持ってたら売れるとか言う意味じゃなくて、自分だけが感じる映像の資産性が爆増してるってことなんだな。
たとえば夜のグーチョキパン店が映るシーンがあるんだけど、こんなの以前は見向きもしなかった。でも昨日は停めてまでして観た。じーーーっと。その界隈で暮らす人の動きをイメージすることもできた。
「こ、こんなものがこのレコーダーに入ってたのか。それをオレはずっとほったらかしだったのか」っていうニュアンスの資産性だよね。んで、資産は増えなくても、その資産性は自分で増やせるんだよね。心のままに生きてたら。それってホント有り難い話だよなぁ。


あー、もうちょい書きたいことあったけど、長すぎだな。明日にします。2800文字になっちまった。




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