ホン雑記 Vol.336「やっぱりアホでした」

「アメトーーク！」で、読書芸人が本を紹介するってのをやってた。

あぁ、この本いいかもなぁ～と思ったのがひとつだけあって、昨日久々に本屋に行って、最初に平台に乗ってたそれと目が合ったんでやっぱり買った。

『怒らないこと』という本だ。
アルボムッレ・スマナサーラという人が書いてるんだけど、怒らないって本に「スマナ」って入ってるから最初ふざけてんのかと思ったけど、スリランカ上座仏教の長老だということで、別にふざけてはいないらしい。

いや割とオレの好きな著名人たちは「怒り」に憑かれているんでね、いいもんだと思ってたんだよ。怒りって。人に当てなきゃね。
それが無い者、あるいは対義語は「諦め」であると思ってたし。でもねぇ、それでたいして解決もしてこなかったんだよね。
怒りに憑かれてると、ナメられないで済んだとか、あまり褒められたことじゃないけど結構得をすることがある、ってメリットはあるんだけど、それ以上に憑かれるのは疲れるんだよね。
ただ「ナメられても全然OK」って状態に持っていったほうがよほど建設的で幸せだったんだけど、なかなかそれに気づかないんだよね。自分では。

頭では分かってても、自分の人生にはなんら反映されてないのだと最近ようやく薄々感じはじめた。

その本を紹介者の芸人は「怒るヤツはマジでアホ」ってことがさんざん書かれてる本だと言ってたんで、そこでグイっと掴まれた。
怒りほど、他人のものは滑稽で、自分のものはいい所に警鐘を鳴らせているという勘違いの感情もないんだろうと思ってたから余計に。

まだ最初のほうしか読んでないけど、「怒るのは極端に頭が悪い」という。
ほほう。

たとえば、電車に乗る時に「座りたい」と思っていれば、混んでるだけで怒りの感情が湧く。混ませている人間まで憎しみの対象になる。
だけど「混んだ車内で立っている」というまったく同じ状況でも、自分が老人に席を譲ったあとだったらどうか。心に生じる結果はまるで違う。
少なくとも満員電車の片道分は朗らかな気持ちでいられる。

何が違うのか。自分が思っていることが違うだけ。状況はまるで同じ。
なので著者は、一切の希望を持つなという。
当然、怒りにまかせた生き方をしてきた者には「そんな軟弱な」とか「すっぱいブドウのキツネじゃねーか」とか「少年ジャンプには希望って書いてあったわ」とか「徒競走お手々繋いでゴールインってか」などと、すぐに反発心が湧くんだけど（いやいや、待て待て、自分で人生をどうしようもないと思ったから手に取った本だろう。言うことを聞こうじゃないか）と0.2秒で手のひらを返せた。

そしたら「希望を持たないことと成長を否定することは違う」とすぐに書いてあったんで「ほぇ～～～、じゃー違うのかー」とすぐに染み込んでくれた。

そしてまたすぐに「言葉は正しくない」とも出て来た。
意図を完全に伝えられる言葉など無いし、そもそも自分も相手も完全ではない。それを忘れるから怒るのだ、と。

この順番が良かった。「希望を持つなって、じゃぁ絶望の時には諦めろってことか」と思っちゃうんだけど、そう書かれていたことで「希望にもいろんな側面があるしなぁ。そもそも翻訳者がいるわけじゃないしなぁ（日本語も堪能な著者）」と当てはめられるわけだ。

そう思っていると「私は日本語が完全じゃないのでそのニュアンスの違いによってお叱りを頂くこともあるけど、それは私だけのせいなのかな？（もちろん相手に責任転嫁しているわけではなく、ここでの事例の格好の補説としてすれ違いが起こる様子を説明している）」というようなことが書かれていて「うぉ、全部先回りして説得してくれるなぁ」と驚嘆した。

期待するから怒る。
頭では分かっていることでも、まったく自分に反映してない。そして誰かに期待して同じ失敗を延々と繰り返す。
ほほう。完全にアホじゃないか、やっぱり。

それと「名前の付いている範囲を指し示せる」と思っていることも怒りの原因だと書かれていた。

たとえば「自分」であれば、この私の全身の皮膚の内側を自分と思いこんでいるけど、果たしてそうなのかな？　と。

たしかに、この皮膚の内側が得するか損するかだけで、幸不幸を決めている。
この外側の人間が幸せそうで、内側が不幸せなら、それだけで嫉妬という怒りが生まれる。その範囲は本当に合ってますか？　というのだ。
「私の土地」なんてその最たるものかもしれない。あぁ、もちろんそういう意味合いにおいての範囲のことだけでなく、単純にすべての名前について言っているわけだが。「テセウスの船」的な。

ゴキブリに嫌悪感が湧くのも「思い通りに」と「範囲の思い込み」があるからだ。
みなさんの好きなチキンは、みなさんの嫌いなゴキブリがご馳走に映っているし、綺麗なバラはトゲのある障害物にしか映っていない、ともある。

自分で思ってるよりも、なーんにも分かってないのかもしれないなぁ。