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南九州「崩壊」旅程と、「居酒屋九州新幹線」

博多から
つばめ309号|鹿児島中央
766-7015

相変わらず蒸し暑い。でも雨が降ってないだけマシか。新幹線側のコーヒーショップで軽く朝飯を済ませ、15番ホームへ。

まさかのN700系で、しかも西日本編成だった。
九州編成と何ら変わるところは無いが、地元のJR車が九州島内で「アルバイト」に精を出している姿は、どこか健気だ。
6時43分、発車。

シートは昨日の800系とはうって変わって、カジュアル寄り。
でも重厚な雰囲気はある。
面白いのは今乗っている6号車は、進行方向前半分が普通車指定席、後半分がグリーン車指定席という点。
国鉄末期に在来線特急の半室グリーン車って車両が流行ったが、最新の九州新幹線で再び見れるとは思わなかった

これから鹿児島中央へ向かう車内で、JR西日本編成の新幹線で採用されている「三都物語」のチャイムが流れるのは、なかなか新鮮だ。博多総合車両所への分岐を過ぎると猛然と加速。昨日の800系より鋭く加速するのは、やはり800系より「若い」からか。
最初の停車駅、新鳥栖を出て1分ほどで
「まもなく、久留米に着きます…」
の自動放送が流れる。どれだけ駅間が短いんだ?って言いたくなる。

59分、久留米着。
ホームに出来ていた長蛇の列は、こちら(指定席)に数人はやってきたが大半が隣の自由席車に流れた。東海道・山陽新幹線の「こだま」と同じく、各駅停車タイプの列車は自由席ニーズが高いことを再認識。

筑後船小屋、新大牟田と進み、トンネルが増えたな…と思ったらそこはもう熊本県。

それまでも田園風景だったが、やはり福岡と熊本でのそれは雰囲気が違う。7時21分、新玉名着。ここから指定席に1人乗ってきた。
相変わらず山の中を疾走するが、山陽や東海道のそれとは緑の「濃さ」が全然違う。

直前まで山の中で、トンネルを抜けたら唐突に街へ飛び出した。熊本だ。

30分、熊本着。
県都らしく客の入れ替わりも激しい。

熊本を出て程なく緑川を渡る。今にも降り出しそうな空だ。

43分、新八代着席。
僕はここで宮崎行きのバスに乗り換えるが、「つばめ309号」は鹿児島中央への旅を続ける。

新八代駅から
B&Sみやざき309号|宮崎駅
1539
(「乗ってみました」に記載)

都城から
特急きりしま11号|鹿児島中央
(未乗車なので車番取らず)

宮崎で一仕事終えて都城へ。
宮崎に着いた時点で、JR改札に立ち寄ると、日豊線が架線トラブルとかで遅れ&運休という「キナ臭い」状況だったのは見ていた。
で、都城にバスで着いて用事を済ませ都城駅に行くと、こんな案内が駅改札に出されていた。

何とも不穏なワードが並んでいる。
下手すると、事前にきっぷを買っていた夜の宮崎発の「きりしま」も運転するかわからないな・・・と思い、ほぼ本能的に券売機で鹿児島中央までのきっぷを買い、ホームに出て遅れの特急を待ってたら…
「大隅大川原の雨量計が規制値を越えたので、西都城〜国分が運転見合わせてでーす!」
との案内。

丁度特急「きりしま」が滑り込んできたが、当然抑止。
さて、どうしたものかと考え込んだのだが…どうやら小林方面に向かう吉都線とその先、隼人への肥薩線は「そういった」抑止を受けていない模様…

ならば、

都城から
普通|吉松
キハ140-2127

ついさっき買った「きりしま」のきっぷを払い戻し、急いで買い替え。
で、5番線の吉都線ホームへ行き、「ヨンマル」ことキハ140に乗車。

本線がダメージを受けているのに、存廃が取り沙汰されているローカル線同士の乗り継ぎが、この時点では鹿児島へ抜ける「唯一の」ルートになろうとは…
相変わらず駅のアナウンスは、日豊線の運転見合わせの繰り返しだ。このままだと鹿児島へたどり着けないと思った僕の判断を、信じる事にする。

三々五々と客が集まり、16時9分に発車。とりあえず動き出した。
日向庄内で学生が少し乗り込んできた以外は静かなもの。

18分、谷頭着。
架線が見えたので吉都線も電化?と思ったが多分電力系社員の練習のために貼られたものだろう。

しかし、車体が雨音を弾くパツパツという音とは別に、パラパラ鳴るのは何事?と思ったが、どうやら雑草が車体を叩いている音のようだった。
ローカル線なのでそういった保守も最低限、ということなのだろうが何となく不安にはなる。

車窓は南九州独特の黒々とした畑。
天気は悪いが、こういう風景を眺めていると南九州を旅している実感が湧いてくる。

34分、高崎新田着。
かつては急行停車駅でそれなりに大きな駅だったが、今はホームの末端は雑草ばかりに…
鬱蒼とした森の中にある日向前田を過ぎ、

46分、高原着。都城行きとすれ違う。
対向列車が来てるということは、この先とりあえずは動いているということか。

58分、小林着。
都城から乗ってた学生が降り、ここからの学生がドタドタと乗り込んでくる。自分等も嘗てはこうだったから特に文句はないが、でもこんなに元気だったかなあ・・・と回顧しきり。ここで10分ほど停まる。

17時8分、発車…と思ったら構内踏切を過ぎて急停車。
「異音を感知したため停車しました。発車までしばらくお待ち下さい」
の案内の後、運転士が最後部へ走り構内踏切のところで何かを確認している。
うーん、吉松で20分の乗り継ぎ余裕はあるけど、ここで足止めされたら間に合うかな…イレギュラーな旅をしていたらこういう事って続くものだなと、一人感心。
興味深かったのは、運転士がタブレット片手に指令と色々やりとりをしていること。
事故や事象とかがあれば、ライブで対処が可能ということなのだろう。
結局8分ほど停まっただけで、すぐ運転再開した。

一方学生はというと、別に遅れなど気になってないようで何なら話足りないくらいらしく、知り合いのいるボックスまで「出張」している学生までいた。
彼ら彼女らにとっちゃ「ヨンマル」の車内は、教室の延長なのだろう。

小林の次は西小林だが、それが結構遠かった。
小林市内にあるからこの駅名でいいのだろうが、7分ほど走ってるから結構離れてる。街中の私鉄なら別の駅名になっていただろう。

えびの飯野を過ぎて、山に沿って走っているがある程度の高さから雲がかかってて稜線は望めず。
雨がバカスカ降って水蒸気を生成中、なのかな。とにかく自然の営みを間近で見れていい感じだ。

えびの上江を過ぎて、JRと山の間に広がる田園風景に箱庭的な美しさにシャッターを切りながら、思わず見とれた。

40分、えびので2回目の都城行きとのすれ違い。
ここは最近駅舎が改修されたのか、屋根が黒光りしていた。

京町温泉で小林からの学生を含めてあらかた降りた。
1人だけ乗ってきたが、もう車内はガラガラだ。

スマホの地図アプリで見る限り、この写真中央の左下から右上に走る畑の畝あたりが、どうやら宮崎と鹿児島の「県境」のようだ。
吉都線はほとんどの駅が宮崎県に属するが、最後の駅・鶴丸だけが鹿児島県にあるというユニークな状況。駅そのものは質素だったが・・・

55分、少し遅れたが終点の吉松着。
ガランとした構内に「ヨンマル」のエンジン音だけが響いていた。

吉都線はいつ廃止されてもおかしくない路線だ。そういう訳で利用促進の振興策を宮崎県と沿線自治体の有志で「模索」しているようだ。
興味ある方は一読を。

吉松から
普通|隼人
キハ40-8064

吉都線は遅れたが、肥薩線は後から入ってくるのを確認してたので焦りはしなかった。
無事乗り継ぎは成功。

この列車もキハ40…「ヨンマル」だ。
客は僕と初老の男性、あともう1人と3人だけ…
肥薩線はここ吉松から人吉まで不通のままだ。吉都線から見ていたが、人吉方面へ向かう軌道は途中から草むらの中に隠れていた。色々と不安になる。

18時12分、発車。

ヨンナナ、ヨンマル名物のバスクーラーと扇風機。
この組み合わせは今日みたいな雨模様の時は重宝する。最新の車両にもクーラーは勿論ついているが、古い車両であるはずの「ヨンマル」にあるこれらの冷房器具の快適さは、最新のものとは「ダンチ」で違うように感じられるから不思議だ。

朝のバスからカウントすると、三度目の川内川。
程なく最初の停車駅、栗野着。
本屋側に山野線ホームが残っていた。

先程、吉都線でまるで叢の中を走ってるような感覚になると書いたが、それは肥薩線でも同じでこちらは森の中にいるような感覚だ。
吉都線同様に「草刈り」の保線作業は最低限支障がなければよい、という感覚なのだろう。

29分、大隅横川。まるで戦前にタイムスリップしたかのような駅だ。
「はやとの風」という特急列車が運行されていたときに整備されたのだが、もう運行されなくなって久しいのにまだ柱は「黒光り」していた。
おそらく運行終了後も「有志が」手入れを続けているのだろうけど、その努力の継続に頭が下がる。

39分、霧島温泉。
ただ、その温泉(祝橋、妙見)はここから結構遠く、二次交通が必要な距離だ。
かつての霧島西口から改称したのだけど、旧駅名時代の方がまだ的確に表現していたように思う。

ここで吉松行きと行き違い。
お互い違う方向に帰るのであろう、学生同士が窓越しに別れの挨拶をしているのが印象的だった。

嘉例川。ここも大隅横川と同様に旧い駅舎を手入れしていた。
大量にぶら下げられた七夕飾りの淡い色が幻想的だ。

中福良。ここから鹿児島空港まで約4〜5キロと近いという事だが、まあこの雰囲気を見たらここから空港へ行こうという客はなさそうに見える。

表木山からは下っているのが体感でわかるくらい軽やかに飛ばす。
過日、この肥薩線に負けないくらいローカルな因美線に乗った時は、下りであるにも関わらず25キロという徐行区間が点在し、乗っていてもややストレスを感じるくらいだったが、同じようなシチュエーションの肥薩線でそれほど徐行区間がなく快調に下っていくのが対照的だ。

19時3分、終点の隼人着。
久々に南九州のローカル線の旅、というものを堪能した気がする。

隼人から
特急きりしま15号(遅れ11号)|鹿児島中央
クハ787-113

一旦改札外の券売機で自由席特急券を買って、さあ準備万端…と思ったら遅れて運行している模様。
まあ昼間あれだけの雨だったから、遅れても仕方ないか・・・

17分、3分遅れて滑り込んできた。
でもデッキ仕切り上のLED案内がちょっとおかしい…時刻表では「きりしま15号」のはずだが、

2本前の「きりしま11号」と自動放送は言っている。
まあ今日はかなり混乱しているし、そういう事もあるのか…と思うことにする。

過日、福岡エリアで乗った普通電車のシートが「豹柄」だと書いたが、この787系も同じく「豹柄」だった。ただ、こちらは落ち着いた色調なので不思議と上品な感じだ。
小気味よいジョイント部分音を響かせ、23分、加治木着。

ふと先ほどのLED案内が気になって、ネットで都城の時刻表を調べた。
整理すると、隼人の発車時刻表では「きりしま15号」のそれと数分遅れで来たもののほぼ正常なダイヤだった。
で、遡ること数時間前。宮崎からやってきた「きりしま11号」は都城までダイヤに乗ってやってきたが、雨量規制で敢え無く「抑止」された・・・

・・・

・・・なんの事はなかった。
あの時、都城で抑止されてた「きりしま11号」が規制解除になって、遅れに遅れて「きりしま15号」のダイヤに乗ってやってきただけだった。
という事はあのまま待ってたら、特に費用を出すことなく乗れていたって事になる。あの時「僕の判断を信じる」といった僕の後頭部を、助走をつけてスラップしたくなった(笑)

でも、まあいい。
久しぶりに南九州のローカル線や、思い出深い「ヨンマル」に乗れたのだから結果オーライ、ということにしよう(笑)

ふと気づいたら、列車は重富を過ぎてまもなく錦江湾沿いに出る。
こうして今は、この勇壮な桜島を「きりしま11号」もとい「きりしま15号」から愛でる事が出来たのだからに、この雨に振り回されたハチャメチャな乗り継ぎ旅も、このサイトの「ネタ」になりそうだから「満足」している。

43分、鹿児島着。
隣からは退勤客を乗せた「ヨンナナ」が重低音を響かせて出ていった。

城山トンネルを抜け、

48分、終点の鹿児島中央に到着。
色々と胸に「去来」するものはあるが、ま、結果オーライという事で(笑)

都通電停から
2系統|鹿児島駅
9509B

これまた久しぶりに鹿児島市電に乗車。
在鹿時代は飽きる程に、や、飽きることなく乗り続けた交通機関の一つだ。
乗るとキンと冷えた車内。これでないと鹿児島では過ごしていけない。

20時31分、鹿児島中央駅前電停着。
ドヤドヤと乗り込んでくる。この光景も見慣れたはずだが、久々に見ると「こんな小さな電車にこんなに乗るのか」と思わず驚いてしまう。

高見橋、加治屋町と来て、高見馬場。
一定数谷山方面へ乗り換えていくのも在鹿時代も同じだ。

天文館で下車。
タカプラが無くなって、何か博多あたりにあるビルみたいなのものが建っている事に、鹿児島を離れた期間の「永さ」を痛感する。

鹿児島中央から
さくら408号|博多
700-7004

しめくくりは、やはり九州新幹線。

山陽乗り入れ用の愛称である「さくら」だが、最終一つ前は広島行き、最終は博多止まりとなる。
清掃終了の合図と共にドア開放。着席するや否や・・・

某TVドラマ「居酒屋新幹線」状態(笑)

22時19分、発車。
JR西日本エリアではお馴染みの「三都物語」のチャイムで自動放送が始まったのだが、
「今日もJR九州をご利用いただきまして…」
で始まり思わずズッコケる。
まあJR九州管内だし間違いではないが・・・おそらく車両の「所属会社」によりチャイムは決まるんだろうな、と一人で納得。

焼き鳥から開始。やはり芋焼酎は美味い。
九州は鶏の美味い土地柄なので、冷めててもそこそこ美味いのが嬉しい。

焼き鳥を平らげたあたりで、川内着。
外は大粒の雨だ。でも「居酒屋」が移動してくれているので、なんの心配もない(寝過ごしても博多が終点だし
トンネルばっかりなのと、また深夜の移動なので景色は楽しめないものの、その分酒と肴に集中できるので、最終列車で「居酒屋」ってのも悪くない。

二品目は「鹿児島産のカツオのタタキ」
生臭くなくて、これまた芋焼酎に合う。

カツオのタタキを平らげたあたりで出水。
出水といえば、今飲んでる芋焼酎「島美人」が出荷されたところだ(正確には近隣の長島町)
その土地の食材を、その土地の地酒で食せば美味いのは当たり前。でもこれは最高の贅沢だと思う。

出水を出たあたりで三品目の「きんぴらゴボウ」。
きんぴらなんてどこでも食べれるじゃん…って思うかもしれないが、ある程度酒を飲んでいる者にとっては、きんぴらゴボウの味でその店が旨いかどうかのバロメーターになる。
結果は・・・もちろん旨し!

そして二杯目。大口酒造の黒伊佐錦「ショットスタイル」
15度と薄めだが、すでに水割にしてくれているという簡便さがあいまって、鹿児島市内だとコンビニをはじめ結構見かける。
一口ふくむ。なるほど「薄い」…が、けっして焼酎の風味を損なってはおらず、これはこれでイケる。

居食を愉しんでいたら、いつの間にか熊本県に入っていた。時のたつのは早い…

さて、最後の四品目は「うなぎめし」
タレのかかった御飯のところだけでも芋焼酎に合うのに、鰻本体と合わせると…この旨さを知らない人は人生の半分を損している、と言いたくなるくらい旨い。

うなぎめしに取り掛かったあたりで新八代。
この時点で九州新幹線を完乗。や、もっと明るいうちに完乗したかったが、酔いどれながらの完乗も悪くはない。
そういえば今乗ってる8号車、鹿児島中央を発車以来だれも乗ってきていない。後ろに外国人観光客が2人いるだけだ。向こうはこの「酔っ払い」をどう思っているだろうか(笑)

熊本到着あたりで、デザートへ移行。

鹿児島の牛乳といえばデイリー、そしてパンはイケダパン。この2つは外せない。
デイリー牛乳は厳密には宮崎県都城市、イケダパンも鹿児島の製パン業ではあるが山崎製パンと密接な関係にあるので、いわゆる「地元パン屋」とは言い難いところがあるが、この2つは在鹿時代にかなりお世話になったので「地元食材」として「トリ」を務める。

ここまで各駅停車だった「さくら408号」だが、ここ熊本からは「快速運転」になる。博多までは久留米と新鳥栖に停まるだけだ。

居酒屋は新玉名手前で「閉店」
や、1時間以上かけて南九州の「食」を愉しませてもらった。満足、満足・・・

ちなみに今回の食材は、これまた在鹿時代には世話になり通しの鹿児島市内でチェーン展開しているスーパーマーケット「タイヨー」で調達。
地場のスーパーのツマミでしょ、と思われるかも知れないが、それだけに地のモノを把握されてるので通り一遍の惣菜であっても旨いものは多い、と思っている。

筑後船小屋を通過。ようやく「さくら」らしい走りに。

23時37分、久留米着。降りる客はほとんどいなかった。
41分、最後の停車駅である新鳥栖着。ホームに乗降する客は皆無だった。ま、最終列車だしこんなものか…

55分、博多着。
へべれけになるくらい飲んでも、こうして博多に「日着」でたどり着けるのは本当にありがたい。
【令和6年7月11日乗車】





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