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こころがしんどくなったら読みたい電話健康相談エッセイ3選

こころがしんどくなることはありませんか?

周りの人に相談が難しいこともあるでしょう。自分でもまとまらない感情があることも多いこころの不調。そんなときに電話健康相談を利用した体験談を2022年に募集した「私の電話健康相談エッセイ」から、3作品紹介します。

忘れられないあの日の電話 
(かおり 愛媛県 36歳 女性)

高校生の時、クラスで孤立していました。中学生までは、毎日楽しく孤立なんてあり得ませんでした。昼休みは勿論、移動教室やグループを組む時など、色々な場面で孤立は心を傷めました。日に日に辛く、耐えられなくなったけど母には心配かけたくない思いで相談できず、一人で抱え込む毎日でした。

ある日の下校時、泣きながら、いつもは通らない道で帰り、図書館のお手洗いに行きました。偶然入ったお手洗いに、相談窓口の電話番号が載っており、もうこれしかないと藁をもすがる思いで、震えながら電話をかけました。

電話口は女性でした。最初は涙で言葉が詰まる私を待ってくれて、少しずつ今の状況を話せました。誰にも言えなかったことを話せたというだけで、私の心は随分変わりました。

電話相談したから次の日から毎日楽しいというような、まるで魔法のような、そんなことではありませんが、気分的に違いました。

あの日の電話から20年経ちますが、今でもあの日の電話口の女性の声は忘れられません。電話相談を知らなかった私を救ってくれたことを一生忘れることはないでしょう。電話相談を、もっと広めてもらえたら、私のように辛い思いをしている人の救いになると思います。ネット社会の今ですが、ちょっとしたところに番号を載せてもらえたら、誰かを救う第一歩になるに違いありません。

会話は「心の重み」を軽くする 
(高菜 千葉県 46歳 女性)

健康相談と聞いて具体的にどんなものなのかわからなかったので、検索してみた。

「病気、予防治療方法、その他の健康一般の問題に不安、疑問を持っている者に対して行われる健康に関する指導や援助であって、相談者が適切な指導・助言を受けることにより健康な生活を維持又は回復することを目的とする」

相談することによって健康な生活を維持または回復することを支援してくれるんだというフレーズが心に残った。

電話の相手先は私のことを知らない。

自分のことを知らない人に相談するなんてと思うかもしれないが、自分のことを知っている人に相談できないこともある。こんなことを聞いて嫌われたりしないか、引かれてしまうのではないか。

そんなプレッシャーがあって相談することにブレーキをかけてしまっていた。

一方で、SNSやネットの氾濫する本当かどうかわからない情報に飲み込まれ、どんどんと心の重みが増え、ただただ不安だけが蓄積し、自分だけでは対処できない現実も目の当たりにした。

今の時代に電話ってアナログじゃないかと感じたが、自分の言葉で話すことで客観的な視点で不安を整理できるし、不安なことだからこそ言葉のぬくもりという会話のラリーを通してコミュニケーションを図ることによって不安という心の重みが軽くなっていくのではないかと思った。

『いつでも』は心のお守り
(紗菜 岩手県  44歳 女性)

体調を崩した夫が緊急入院した。「末期腎不全です。ご主人の腎臓は今、1%しか機能していません。」医師から告げられ頭が真っ白になった。

人工透析に通い続けるか、移植をするか。説明を聞いても「はい、はい」と返事をするのが精一杯で、質問も思い浮かばない。日中は仕事や家事に追われ、子ども達の前では平気なふりをした。不安が襲ってくるのは、夜、子ども達が寝た後だ。

“仮に私の腎臓を移植した後に、子どもが腎臓の病気になったらどうしよう。私からはあげられなくなる。夫は生まれつき腎臓が弱かったけど、うちの子ども達はどうなんだろう”

すぐにでも医師に聞きたいが、日中は私も働いているし、子ども達のいる所でそんな電話をかける気にはなれない。そこで頼ろうと思ったのが、加入している保険会社の電話による健康相談だ。

何度も利用しているが、症状を伝えると何科を受診したらよいか教えてくれたり、その場で答えられない難しい質問も調べて折り返しかけてきてくれる。夜遅くでも繋がり、最寄りの病院を教えてくれることもある。

さっそくかけてみると、担当となった方は腎臓移植に詳しいようだった。言葉もよく整理できないまま喋ってしまったが、私の伝えたいことを汲み取ってくれた。

「確実とは言えませんが、恐らくご主人様の幼少期の病気は◯◯というもので、遺伝性は低いと思われます。お子さん達も、今まで熱を出しやすかったり、尿検査で引っかかっていないなら大丈夫かと思いますが、心配でしたら主治医の先生に相談されるとよいと思います。」

「ありがとうございます。」

胸につかえていたものが取れ、私はその晩、安心して眠りにつくことができた。

電話相談の一番良い点は、時間帯を気にせず誰にも聞かれずに相談できることだ。

あれから一年。間もなく私は腎臓移植のドナーとして入院前の自宅待機に入る。

不安になったら、いつでもまた電話しよう。

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