見出し画像

テクノロジーでアガる体験を作り出す!!パーティーテクノロジストのプロトタイピング【Dentsu Lab Tokyo】

こんにちは。Dentsu Lab Tokyoでクリエーティブ・テクノロジスト / プランナーとして所属している、斧涼之介と申します。

「テクノロジーを活用して人々の日常をちょっと楽しくする。」をテーマに、日々企画やプランニング、時にはそれをプロトタイピングしてみるという業務を行なっています。

今回のnote連載は「Dentsu Lab Tokyoメンバーが携わった仕事以外でも興味あることや好きなことを語ってみる」ということで、最近私が興味あることとこれからチャレンジしていきたいことをツラツラと書いていこうと思います。

テクノロジーで「アガる」体験を作りたい!

「テクノロジーで人が集まる空間をアゲる!」ということにチャレンジできないかと日々考えています。

非日常空間ー例えば、人が集まりお酒やご飯と共に何気ない会話を楽しむ時間、音楽に没入し日常を忘れて踊る時間、休日に友人と予定を合わせて楽しむBBQやキャンプなど…いつもの生活とちょっと違う時間や空間で遊び、何気ない会話をし、そこから新しい刺激をもらうことで、より充実した日常を営んでいけるのだと私は信じています!!

そこに更にテクノロジーをプラスすることで、もっと会話を面白くする、もっと踊りたくなる、今日という日がもっと特別な1日になるといった、非日常の時間や空間をより盛り上げるためのスパイスを実装できるのでは!?と最近考えているのですが、今回noteを執筆するということで、せっかくなのでプロトタイプしてみました!

DJの楽しみ方をテクノロジーで拡張してみたい!

画像3

今回、アガる体験づくりの題材として選んだのは「DJ」。DJの楽しみ方をアップデートできないかということに挑戦しました。

クラブでDJのプレーイングを見ているときに、「DJってただボタン押しているだけじゃないの?」とか「DJって何をしてるのかいまいちよく分からない」って思ってしまうことはありませんか??(正直、私もそう思ってしまったことがあります。)

基本的に「音楽を途切れさせること無く、ミックスしながらフロアの人々を踊らせ続ける」ということをDJは行っていますが、DJがステージの上で何をやっているかということをざっくりと理解できていないと、細かな盛り上がりを感じ辛くDJプレイに没入するのが難しいのでは!?と考えています。

もし「今、DJがどんなことをしているのか」を可視化することができれば、DJについて詳しくない人でも「あ!ここで盛り上がる!」や「ここで曲が変わるんだ!」といったことがわかりやすくなり、より楽しむことができるのでは!と思いました。思い立ったら即行動!ということで「DJミキサーとリンクするLED」のプロトタイプを作ってみました。

TouchDesignerとDJコントローラーを連携してみた

スクリーンショット 2022-03-22 11.33.24

DJはターンテーブルでレコードやCD、PCを経由して音楽を再生し、中心にあるミキサーに付いている「縦フェーダー」と呼ばれるつまみを動かして、それぞれのチャンネルから流れる音のボリュームを調整し、なめらかにAからBへと遷移することで、音楽を止めること無くフロアを踊らせ続けているのです。(なのでクラブでDJのプレイを楽しむ時にステージを覗き込んで縦フェーダーを見ると、どちらの音楽が流れているのか、どのタイミングから音がミックスされているのかが分かるようになり、よりDJを楽しむことができますよ!)

今回のプロトタイピングでは、この「ミキシング」に着目し、左右のチャンネルから流れている音のボリュームをLEDで可視化し、ミキシングを分かりやすくすることに挑戦してみたいと思います。
そのためには、音の再生ボタンが押されたことを検出したり、EQや縦フェーダーが今どんな状況かを検出してくる必要があります。

何かを作りたいな…と思った時にはとりあえずTouchDesigner!!

TouchDesigner(タッチデザイナー)とは、カナダのDerivative社が開発した、インスタレーションアート、プロジェクションマッピングやメディアアートなど、デジタルアートに関するシステムを簡単に構築ことができる超便利なビジュアルプログラミングツールです。

TouchDesignerでは簡単にシリアルポートに接続しているMIDIデバイスからMIDIイベントを受信させることが出来る「MIDI in CHOP」というオペレーターがあります。アイデアが思いついたときに、最短距離でそのアイデアを実現するためのツールが揃っているのがTouchDesignerの最大の魅力ですね!!

MIDI(ミディ)は、Musical Instrument Digital Interfaceの頭文字をとったもので、楽器とPC間で演奏情報をやりとりする際によく使われる通信規格です。

スクリーンショット 2022-03-22 19.12.38

「OP Create Dialog → CHOPMIDI in CHOP」をクリック!

スクリーンショット 2022-03-22 19.12.25

初めてmidiデバイスを繋いだ状態だと、デバイスとして連携できていないので、上のメニューバーから「Dialogs → MIDI Device Mapper」をクリック。

スクリーンショット 2022-03-22 19.12.09

MIDI Mapper」の中の「Create New Mapping」をクリックし、「In Device」のタブを確認。ちゃんとDJコントローラーが接続されていると、midiデバイスとしてDJコントローラーの名前が表示されます。(私の環境ではPioneer製のDJコントローラーDDJ-400を使っているため、DDJ-400という文字が表示されます。)

スクリーンショット 2022-03-22 19.20.53

認識されていることが確認できれば、MIDI in CHOPSelect CHOPをつなげて検出したいボタンを押したり、ノブを回転させて、どのMIDI信号とリンクしているかを探し、値を引っ張ってきます。

簡易的に、PLAYボタンの状態や、縦フェーダー、EQの値を可視化するUIを作ってみました。

これで、DJコントローラーとTouchDesignerを連携させることができました!!

Art-NetでLEDを光らせてみよう!

DJコントローラーとTouchDesignerが連携できることが分かったので、今回目標としていた「DJがプレイしている時の縦フェーダーの値をLEDの光の量で可視化する」プロトタイプ制作に挑戦してみましょう!!

ちなみに、今回はArt-NetでLEDの光を制御するために、AlibabaやAliExpressで購入できる比較的安価なArtNet-SPIコンバーター「BC-204」を使って制御していこうと思います。


任意の色を出すためにフルカラーLEDの「NeoPixel」と光の粒が見えると悲しいので、光を拡散させるために「アルミフレーム角型」を購入してみました。(乳白色のフレームがいい感じの発色でした。)

TouchDesignerからフルカラーLEDを制御するために今回はDMX / Art-Netを使っていきたいと思います。

DMXはライブやコンサート、イベントなどの舞台を演出するときに、照明器具の調光や調色などの制御を行うための通信規格です。

スクリーンショット 2022-03-22 19.34.03

「OP Create Dialog → CHOP → DMX Out」を選択。今回使用するBC-204はArt-NetからDMXに変換するコンバーターなので、InterfaceをArt-Netにしました。

 Art-NetはDMX512信号をイーサネットを介して送受信するための物です。512チャンネル以上のデバイスを制御したい時によく使われます。

スクリーンショット 2022-03-22 19.34.14

次にNetworkを記入していきます。Macユーザーなら「システム環境設定 → ネットワーク 」から接続されているイーサーネットの「サブネットマスク」と「IPアドレス」を調べ、TouchDesignerのDMX Out CHOPに記入します。

Constant CHOPなどで、それぞれのチャンネルに値を送ってLEDが光れば成功です!!

そしてこちらが、今回作ってみた「DJのプレイを可視化するLED」になります!

DDJ-400から送られてくる縦フェーダーの値と照明の明るさをリンクさせるのと、より分かりやすくするために左右のチャンネルで色を分けてみました。せっかくなので、より空間を盛り上げるためにTouchDesignerのPaletteにある「audioAnalysis」を使って音楽のキックに合わせてLEDの明るさを変えるようにもしています。

新しいDJの楽しませ方として面白いのでは!?今回は縦フェーダーと音のキックを要素として引っ張ってきましたが、EQの変化に合わせて光を変えてみたり、フィルターをかけている時だけ光の演出を変えるなんてこともできるようになりますね!

導入を検討してくださるクラブ運営の方!ぜひお声がけください!!

人を踊らせるアフォーダンスってあるの?

最後に、最近作ってみたいなと妄想しているデバイスについて紹介させてください。

クラブに行って感じたことは「フロアで踊っている人があまりいない空間だと、恥ずかしくて踊りたいという気持ちになれない」ということです。フロアに100人いて全員が踊ってたら自分が踊ってもあまり目立たないから踊ろうかな、という気持ちになりますが、フロアに100人いて誰も踊っていない状況で自分だけ踊ろうというのはとてもじゃないけれど恥ずかしいですよね。

そこで「フロアに踊っている存在があると、自分も自然と踊れるのでは!?」という仮説を立ててみました。

踊るロボットをフロアに置くのはあからさますぎるので、どのクラブにでも置いているような「照明」に着目して、低音に合わせて左右に首を左右に振る「踊る照明」のプロトタイプを作ってみました。

可愛い予感!さくっと作ってみたので、手で支えている状況ですがちゃんと土台に立てて自立するようにしてみたいですね。引き続き、制作を進めてクラブに設置し「踊る照明は人の踊りを誘発するのか」を検証してみたいと思います。

<2022.06.15 - 追記>

せっかくなので、自立させてみたいと思い、3Dプリンターで土台を作ってイベントに展示してみました。来場者からは「可愛い!空間を盛り上げるスパイスになっている!」と良いリアクション。引き続きこの領域は研究していこうと思います!

まとめ

今回のnoteでは、私がこれから挑戦してみたいことと、TouchDesignerとDJコントローラーの連携方法DMX in CHOPの使い方DJのプレーを可視化するLEDのプロトタイプ踊る照明のプロトタイプについて紹介させていただきました!!

これからも引き続き「テクノロジーで人が集まる空間をアゲる!」をテーマに、ものづくりをしていきます!!また、新しいプロトタイプが生まれたり、実際パーティー空間に展示する機会があればここにてご報告させてください。

以上、斧でした!次回もお楽しみに!

斧 涼之介 Ryonosuke Ono
Creative Technologist

体験をより面白くするためのテクノロジー活用が得意。arduinoやraspberryPiを使ったガジェット開発から、センサーを使ったインタラクティブな空間作りなど。パーティー好きがこうじてミラーボールとスモークマシンを買いました。

画像出典 :
Blue Planet Studio/stock.adobe.com
Daniel Krasoń/stock.adobe.com

ーーーーーーーー

Dentsu Lab Tokyoは、研究・企画・開発が一体となったクリエーティブのR&D組織です。メンバーはコピーライター、プランナー、アートディレクター、テクノロジスト、映像ディレクターなど、さまざまな職能をもった人たちです。日々自主開発からクライアントワークまで、幅広い領域のプロジェクトに取り組んでいます。是非サイトにもお越しいただき、私たちの活動に触れていただけると幸いです。

このnoteでは、Dentsu Lab Tokyoのメンバーのご紹介、制作の裏話、イベントのレポートなどをお届けできればと思っています。

今回は個性豊かなメンバーが、興味があることや好きなことを執筆する連載をお送りしています。多種多様な集団の頭の中を、ちょっと覗いてみてください!


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?