テクノロジーを味方に戦うヤングコンペ
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テクノロジーを味方に戦うヤングコンペ

広告業界の、テクノロジストの仲間たちへ。

こんにちは。Dentsu Lab Tokyoにクリエーティブテクノロジストとして所属している村上晋太郎と申します。

さて、今年もヤングコンペの季節がやってきました。

ヤングコンペとは、30歳以下の広告業界の若手が、共通のお題に対して企画を提出し、プレゼンで勝負する国際コンペティションです。国際広告賞であるCannes LionsやSpikes Asiaなどが主催しており、国内予選で入賞すると、本戦の国際コンペで戦うことになります。

予選が毎年8月〜翌年3月ごろに開催され、若手である自分にとってはソワソワする季節であります。

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そんなヤングコンペですが、リクルート所属の高彦くんと組んだチームで、今年の1月末に行われた「ヤングスパイクス」のインテグレーテッド部門の本戦でゴールドを受賞しました。

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今回のお題は「Overfishing」。クライアントはNPO「Conservation International」で、ターゲットである企業の執行役員(CxO)とパートナーシップを作り「持続可能なシーフードを実現する」キャンペーンを提案せよというのがお題でした。

私達のチームは、

魚が絶滅する時、その魚を使用している製品も消滅する。それは企業にとって大きな関心事のはず。

というコンセプトのもと、魚製品の賞味期限(EXP)の隣にその製品の消滅日(EXT)を印字するというキャンペーン「The Extinction Date」を提案し、本戦でゴールドを受賞しました。

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席が隣だった二人で、社会人2年目から挑戦を続け、4年目にして結果を残すことができました。4年目で彼は別の会社に行ってしまいましたが、コンビは健在です。相方の高彦くんには、本当に、感謝の気持ちで一杯です。

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受賞時の記念写真。右が高彦くん。

私達のチームの4年間のチャレンジについては、高彦くんが素晴らしい記事を執筆してくれています。

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さて、冒頭でも自己紹介させていただきましたが、私は「クリエーティブ・テクノロジスト」という肩書で働いています。

普段は、機械学習のコードを書いたり、iOSアプリを作ったり、Reactでウェブアプリを書いたり、InstagramのARレンズを作ったり、UnityでCG映像を作ったり、、、幅広くテクノロジーのプロトタイプ制作から納品までこなす傍ら、プランナーとして企画もするという、二刀流の生活をしています。広告業界の若手テクノロジストには、同じような働き方をしている人が多いと思います。

企画とエンジニアリング、二つの領域を行き来する働き方は自分にとってとても刺激的で楽しいですが、ヤングコンペに挑戦するときは、「エンジニアリング」という自分の職能をどう活かすか悩ましく感じる時期がありました。

「企画職一刀流のライバルに、プランナーとして本当に敵うのだろうか。」「強い画作りができるアート職のメンバーがいるチームに勝てる気がしない」「英語のネイティブスピーカーのチームにプレゼンで勝つにはどうしたらいいのか」などといった葛藤を抱えながら、ヤングコンペに挑戦していたことを覚えています。同じような葛藤を抱えている若手テクノロジストは多いのでは無いでしょうか。

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四年間の挑戦のなかで、これらの葛藤を、テクノロジーの力を使ったり、使わなかったりしながら、乗り越えて来た気がします。

今回は、そんな自分なりのノウハウというか、コツのようなものを、お伝えできればと思います。

• 広告業界で頑張る、若手のテクノロジスト
• 英語に壁を感じている日本語ネイティブスピーカー
• アート職じゃないけど、強い画作りができるようになりたいプランナー

そんなヤングたちの、お力になれれば幸せです。

※ ちなみに相方の高彦くんはアメリカ育ちなので、英語をとても流暢に話すことができます。ただ今回は英語の壁を乗り越えたいというワガママを聞き入れてもらい、英語修行中の自分にプレゼンテーターをさせてもらいました。そのかわりプレゼン練習が数十倍大変になりましたが、辛抱強く付き合ってくれた彼に、本当に感謝です。

この記事で伝えたいことは、下記の4つのポイントです。

① やっぱり企画が一番大事
② デザイン力はテクノロジーで補強
③ 英語は毎日25分で、話せるようになる。
④ 継続のコツ:勝ちにはこだわらないが、カタチにすることにこだわる

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① やっぱり企画が一番大事

英語やデザインの力が万全ではないからこそ、基本の「企画」の力が一番重要だったと思います。そして、四年間挑戦し続けて、企画に自信が出てきたからこそ、英語のプレゼンに挑戦したり、デザインを頑張ってみたり、自分にとって足りないピースを集めることが出来た気がします。

企画の土台を確固たるものにするために、まず、過去の広告賞・ヤング広告賞の受賞作を一緒に徹底的に見ました。

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過去の事例を研究するということは基本中の基本ですが、自分のチームでは「一緒に」勉強することで、企画に対して共通の言語を作れたと思います。言語が共通なので、「ローンチは例えば〇〇の事例のように」「今回のプレゼンは○年ゴールドの〇〇みたいに」と、効率的にコミュニケーションを取ることができます。時間が限られているヤングコンペにおいては、大きなアドバンテージになったと思います。

また、相方と徹底的に「喧嘩」することが大事です。自分たちの企画のどこが強くて、どこが弱いのか。構造的な矛盾はなにか。徹底的に議論して洗練された企画ならば、それがプレゼンの場での自信に繋がります。

「思いっきり喧嘩できる。でも飲んだら仲直りできる。」

そんな相方がベストだと思います。

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② デザイン力はテクノロジーで補強

今回のコンペでは、初めてBlenderというツールを用いて企画書を作成しました。これは、テクノロジーの力で自分の能力を補完できたポイントだと思っています。

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Blenderはフリーの3Dモデリングツールです。アートディレクターがチームにいない自分たちが、魅力的なキービジュアルを作るためのツールとして導入しました。

自分で3D空間を構築してしまえば、床の色を変えたり、ライティングを変えたり、アングルを探ったり、素早くいろいろな検証を行えるので、非常に重宝しました。

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3Dモデリングを活かして行った、様々な配置、
ライティングのキービジュアル検証

デザイン力を補完するためのツールとして、flaticonというサービスもおすすめです。月額1000円で、商用利用可のアイコンがたくさん自由に使えます。SVG形式でダウンロードできるので、イラストレーターで少し編集すれば、オリジナルのロゴを作ることも可能です。

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flaticonの素材を駆使して作ったスライド

あとは、ひたすら過去の受賞スライドをスタディして、スライドレイアウトの研究をしました。これは、プログラミングでいう「デザインパターン」の学習に似ている作業です。自分の引き出しにパターンを入れておくことで、デザイン時間の面でアドバンテージを得ることができます。

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③ 英語は毎日25分で、話せるようになる。

今回のヤングスパイクスは変則的で、国内予選がなく、世界中の参加者からショートリストが選出された上で、3ヶ月後に決勝プレゼンという内容でした。

そこで、ショートリストに選出されたタイミングから英語の特訓を初め、決勝プレゼンに挑みました。具体的には、DMM英会話の1回25分レッスンをなるべく毎日いれるようにしました。

一日25分という設定は、自分にとって、ギリギリ継続できるちょうどよいラインでした。繁忙期には、深夜一時になってから英会話を始めるという、非常にハードな日々になりましたが、2ヶ月続けた当たりで、英語で物事を考え、会話が成立するようになりました。

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結果、英会話がほぼ出来なかった自分が、プレゼンと質疑応答に対応できるまでに成長することができました。これは自分にとって大変大きな進歩でした。

もし四年前の自分になにかアドバイスできるとしたら、「とにかく英語を毎日話そう」と、アドバイスしたいと思います。


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最終的には総レッスン時間が3500分になっていました。

☆ テクノロジーの力で挑んだ「アイスブレーク」

今回はリモートという状況を活かして、プレゼン用にこのようなSnap CameraのARレンズを作成しました。

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「私達は寿司の国からやってきました。もちろん寿司が大好きです。」
「でも、2050年には多くの寿司が食べられなくなると予測されています」
「なので、私達はこの問題に大きな関心があります」

こんな内容のアイスブレイクを、リモートで行いました。

このパフォーマンスが審査の加点対象になったかはわかりませんが、zoom越しに半数くらいの人が笑顔になってくれたので、その後リラックスして、気持ちよくプレゼンをすることができました。

振り返ると、英語のハンディを補強する、良いアイデアだったと思います。

自分と同じタームに発表していた6チームのうち、アイスブレークをしたのは自分のチームのみでした。リモートということもあり、アイスブレークは必須ではないですが、場を暖められそうなアイデアがあれば、トライする意味はあると思いました。

④ 継続のコツ:勝ちにはこだわらないが、カタチにすることにこだわる

最後に、一番大事な話なのですが、これはコンペの戦い方というよりは、コンペとの付き合い方についての話です。

自分の身の回りでは、年次を重ねるにつれ、コンペの参加率が下がっているように感じます。

一方、ヤングコンペへの参加を重ねるに連れ、自分たちの企画の完成度が上がっていくということも感じていました。

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となると、年次を重ねてコンペから離れることは、少しもったいないと思います。

では、どのようにコンペへの参加モチベーションを保つのが良いのでしょうか。

☆ 自分なりに見つけたコンペとの付き合い方

自分は去年あたりから、勝ちにこだわることをやめ、カタチにすること、知見を吸収することをコンペ参加の目的に据えるようにしました。

「大人カンヌ」の完成されたアイデアを学ぶことも重要ですが、それは計算ドリルの答えだけを眺めているようなものです。

一方、一度自分が全力で解いた課題の、勝った企画を見ることは非常に勉強になります。

ヤングカンヌで一度問題を解いてから回答を見るときの学びは、他の学びと全く質が違うのだと思いました。

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そのようなことをモチベーションに取り組んで来たことが、29歳までヤングコンペを継続できた要因だと振り返り感じています。

そして、結果得たものはとても大きかったと思います。

ザッカーバーグ風にいうと、(ザッカーバーグさんごめんなさい)

Done is better than winning.

もちろん、細かいイテレーションを重ねて、改善を重ねる前提ですが、参加すること自体が、自分にとって意味あることだと思い続けてきました。

そんなヤングコンペとの付き合い方が、今回の結果につながった大きな要因であったと思っています。

(そして、その根底には、試行と改善を是とするエンジニアリングの考え方があると思います。)

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以上、自分たちのヤングコンペへの挑戦を、テクノロジストという視点で振り返ってみました。

四年間の中で、たくさんの偉大な先輩方の、ヤングコンペの記事に助けられた記憶があります。同じように、この記事が、テクノロジーな人にも、そうでない人にも、少しでもお役に立てば、とても嬉しいです。

それでは。またどこかでお会いしましょう。

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Dentsu Lab Tokyoは、研究・企画・開発が一体となったクリエーティブのR&D組織です。 テクノロジーを起点とした新しい表現開発に取り組んでいます。 http://dentsulab.tokyo