見出し画像

ほんのちょっと強い自分になって、悩むより行動を。失敗しても周りは温かく見守ってくれるから。

学校法人 電波学園
あいち造形デザイン専門学校 高等課程 教頭
大崎 英子 先生

この3年間はあくまでも基礎。その先を見据えた教育を。

現在、教頭として職務にあたる大崎先生。生徒さんとの関わりについて聞いてみた。
「授業もありますし、一緒に掃除もやります。現在も昔も全然変わっていません。担任は随分前に外れていますが、その頃は寂しかったですね。1か月ぐらいはボーっとして、朝、先生方がSTで教室に行くのを悲しく見送ってましたよ(笑)」
あいち造形デザイン専門学校高等課程の生徒さんはどんな子が多い?
「朗らかで、すごく素直な子や、はにかみ屋さんですが、誰とでもすぐ仲良くなれる生徒が多いと思います。前は、感情の起伏の激しい子もおりましたが、今の生徒は皆おとなしいです。やんちゃな子だったら、言ったら理解しますし、自分自身でも反省して、それで終わっていましたが、今は、普段は大丈夫でも自分の感情がいっぱいになってしまって、動けなくなってしまったり、急に泣き出したり、そういう点で手がかかるケースはありますね」
学校として大切にしていることは。
「芸術肌の学校というだけではいけないと思っています。きちんと高校生としての知識やマナーも身につけて、なおかつ絵の力を身につけてもらう。その上で、本校は専門課程があるので、高校3年間プラス専門課程の2年間、合計5年間でプロになってもらえれば。そのためにも、高校としての規律は必要で、ただ、がんじがらめにすると創造性など失われてしまうのでむずかしいところですが、良いことと悪いこと、時間の観念など、必要なことを教えていきたいです」

作文コンクールに入賞した生徒と記念撮影

「好きということは宝」。一生懸命になれるものがあるのは幸せなこと。

絵を描いたりすることが好きな生徒さんがほとんどだと聞くが。
「絵を描くことが好きで来ている子ばかりです。3年生になると、全体の半分以上が制作の時間になります。好きな子にとってはたまらない時間なのですが、自分の考えるレベルが高すぎて課題の提出が遅くなったり、『ここらへんで良いんじゃないの』と言っても妥協ができなかったり、その辺のジレンマがあるのがデザイン学校特有の悩みですかね。実技科目の中でも好き嫌いがあったり、例えば、デッサンは好きだけど色を塗るのは苦手、好きなことには時間を掛けてそうでもない作業は嫌いだから後回しといったケースがある。こだわりをかけるところが平均になればすごくいいと思うのですが。自分の求めているものがあること、一生懸命になれるものがあることは幸せなことですよね。
生徒は、ちょっとでも時間があれば、何か描いています。えんぴつと紙さえあればいい。それでどんどん世界が拡がっていく。『すごいね、好きということは宝だよね』とよく言ってますが、生徒からしたら『当たり前のことだから』って通じていないみたいです(笑)」

生徒たちと七夕の飾りつけ

コミュニケーションの取り方がうまくできない生徒もいる。

「学校説明会の個別相談で、昔は『芸術の学校に行くと先々が心配』という声が多かったんです。最近は、『自分の好きなことを一生懸命やって、朝「行ってきます」と言って家を出てくれることが一番いい』という保護者の方が増えてきました。今の子の中には、コミュニケーションの取り方がうまくできない子もいます。担任を持っていた時、生徒と面談をしていて、『仲の良い友達は誰ですか』と聞いても、答えない子がいる。『〇〇さんと一緒にいるよね』と聞いても、『相手が私の事を友達と認めていないかもしれないので、言えません』と言う。『あなたは思っているんだよね』と聞くと、『私は思っているけど…』で終わってしまう。何か変ですよね。いつも一緒にいるんですよ。それでも一歩引いてしまうみたいで、そこが不思議です。『私の言った一言で、相手がどう思うか悩む』というのはよく聞きます。相手のことを考えすぎて、身構えてしまうんでしょうね」

絵を描く力は環境も変えてくれる。

「本校では、入学してすぐにみんなの前で自己紹介をする代わりに、自己紹介と自分の好きなイラストを描いた『自己紹介カード』を作ってクラスで掲示するようにしています。そうすると、皆が関心を持って見に行き、そこで、『この絵すごい』となって、どんどん友達ができていく。しゃべらない子も、そこから友達ができていく。昔は、周りの席の子と声を掛け合って友達になったじゃないですか。今はそうじゃないんです。絵がきっかけとなって輪が広がり、友達ができていく。内向的な子でも、すぐに打ち解けていく。『あなたたちの持っている力ってすごいね』って、いつも子供たちをほめてますよ」

サマーセミナーで京都の嵐山に

3年間は将来の準備期間。失敗を恐れずに挑戦しよう。

大崎先生のように、「失敗してもいいじゃない」と言ってくれる大人が今の世の中少ない気がする。そういう風に言ってもらえることが、子供たちの勇気に繋がる。
「ほとんどの子が、美術やデザインに関わる仕事がしたいと入学してきます。だけど、周りの子の上手さを見てしまうと、自分はダメじゃないかと思ってしまう子もいる。私から見たら、そんなことないよ、素晴らしいよと思うんですけど。それに、芸術的なものって判断を下すのは自分ではない。いいも悪いも。マンガ家とかイラストレーターだって、なれない訳ではない。本当になっている卒業生もいるし、私も「なれません」とは言わない。それよりも、絵が好きで入ってきて3年間しっかり頑張った子が「あきらめる」と言ったら、本当にもったいないなと思います。あの子たちは、ダメだった時に傷つく自分を想像してしまうので、『良いことを想像しなさい。失敗も学びの機会だから、どんどん悩まずに行きなさい。みんなの年代は、修正や変更はいくらでもできるし、失敗しても周りは温かく見守ってくれるから』と生徒たちには常に声を掛けています」

学校のロビーで生徒たちと一緒に

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?