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相手の立場に立って、思いやる姿勢が大切。その結果が、心の底からの「ありがとう」に繋がる。

学校法人 電波学園
あいち福祉医療専門学校 介護福祉学科 科長
齊藤 隆司 先生

無理だと思った介護の仕事。「何かしてあげる」ではなく、「助けられる」不思議な体験がきっかけ。

介護をやろうと思ったきっかけは?
「たまたま、ホームヘルパー2級(現:介護職員初任者研修)を受けに行ったんです。嫌々でしたが、親に言われて(笑)。施設で、やり方も分からないのに、入浴介助をいきなりやらされたりして。これは無理だと考えていた時に、利用者さんに『見ない顔だね』と声をかけられました。『体験して、良いなと思ったら働こうと思っていたけど、自分には無理です』と話したら、『残念だね、あなたみたいな若い子がいてくれると私たちもうれしいんだけどね』と、利用者さんの部屋で話し込んでいたんです。その間、施設の中では、実習生がいきなりいなくなったので、指導者が血眼になって私を探していて、見つかった時にはものすごい勢いで怒られました。すると、利用者さんが、『ごめん、ごめん。私が無理やり連れてきて話を聴いてもらっていたんだ』と、かばってくれました。介護って、『何かしてあげる』仕事だと思っていたのが、自分が『助けられる』不思議な体験でした。そこで、『ちょっとやってみようかな』と思ったのがきっかけです。最初は、研修も辞めようと思っていたのに(笑)」

利用者さんにとって快適な環境を整える、ベッドメイキング実習

介護が好きだから、「この道に来て良かった」と本気で思わせたいし、「介護を一緒に楽しめる仲間」を一人でも増やしたい。

「学生に『この道に来て良かった』と思わせたい。本気で思っています。『介護ってこんなものか』って思われたら悔しいし。私は、介護の仕事が楽しくて仕方がなかったので、『一緒に楽しめる仲間』が一人でも増えたらな、という想いがあります。昔、滅茶苦茶やんちゃな学生がいました。入学しても、『介護の仕事には就かない』と言い切る様な子です。その学生が施設実習に行って、いきなり『先生、就職の事なんだけど』、『何、なにかいいのあった?』、『介護してみようかな、と思って』。ものすごく恥ずかしそうに言ってきました。皆がびっくりしました。
こういったケースは結構あったりします。私たちも、悩んでいる子には『とにかく施設実習だけでもやってごらん』と言っています。利用者さんには、世話をしてもらいたい人もいれば、自分の孫の様な子が来れば『教えてあげなきゃ』と思う方もみえます。おじいちゃん、おばあちゃんがフォローしてくれて、そこで達成感を味わえる。心の底から『ありがとう』って言われますしね。それが自信に繋がって。ただ、彼の場合はちょっと違って、やってあげたいと思った時に、これまで勉強してこなかったことを『しまった』と思った数少ない学生なんです。卒業してから『もっと勉強しておけば良かった』と思う子はいっぱいいるんですが。この学生の場合は、最初『誰でもできる仕事だろう』とか、『給料安いし』といった感じでした。でも実習に行って、実際に利用者さんから頼りにされて、ただ、その時の学生の知識では、何もしてあげられることができなかった。『勉強している介護福祉士ってすごい』と気づいたんだと思います。それがきっかけで一念発起して、卒業試験も一発でクリアしていきました。その後、無事にその施設に就職して、残念ながら家の事情で転職してしまったのですが、惜しまれて辞めていきましたよ。『いつかまた戻ってきたい』と言っていました」

教えるというよりは、介護福祉士の先輩として「育てたい」と思って接している。

「今までの『先生』の概念が変わったと言って卒業していく学生が多くいます。具体的にどこが、というのは自分たちでは分かりませんが、卒業生がたくさん学校に遊びに来るのはそういう事なのかな。自分たちは、あまり教員と思って接していない。介護福祉士の先輩として、教えるというよりは『育てたい』と思って接している気がします。授業中に寝ている学生がいても基本的にはいきなり怒ったりはしません。大事な時は、すぐに起こすようにしていますが、まずは眠くなった理由(何があったのか)を聞くことが大事だと思っています。昔、校則が厳しかった頃、施設実習に出かける際に、長髪の男子学生がいました。当時の学科長に髪の毛を切られそうになって、『齊藤先生!齊藤先生に切られるならしょうがない。けど、学科長にだけは絶対切られたくない』と言って飛んできたことがありました(笑)。横着な子たちに好かれるみたいです。最近は、立場と年齢で、学生との距離はできましたけど(泣)」

撮影に協力してくれた学生さんと一緒に記念撮影

先生方の学生を見る目が温かい。「学生のために」という想いが、介護福祉学科は特に強い気がする。
「見ている、の度合いが違うと思います。大概は指示をするが、私たちは指導をしている。『やっておきなさい』ではなく『やれないなら、一緒にやっていこう』。『なんでできなかった、明日までに提出しなさい』ではなく、『できなかったのか。一緒に考えようか』、その違いだと思います。出せなかったらダメではなく、担当の先生がいかに学生に関わるか、そこが大事だと私たちは思っています。『先生たちが自分の事を気にかけてくれている』って、学生が何かの折に感じた時に、利用者さんに対して『気にかけるってこういう事か』と気づくと思います。何年かかってもいいので、学生にはとにかくそれを教えてあげたい。それが覚わらないと、介護では相手から本当に『ありがとう』とは言ってもらえないので」

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