「メリケン殺し」


9.11ってあるだろ?
あれみたとき、俺はスカッとしたね。メリケンの泣き叫ぶ声は耳に心地よかった。なぜホワイトハウスに突っ込まなかったかは疑問だが、やっぱりよくやってくれたと思ったよ実際。
アメリカは世界大戦では、国土に被害がなかったし、民間人が死ぬこともなかった。けどアメリカのエリートたちが無様に死んでったんだ。中には火から逃れようとビルから飛び降りたメリケンもいて、その映像がしっかり撮られていた。体の重いメリケンでも、やっぱりガリレオのあの法則は働いて、ゆっくり落ちてるように見えたな。

俺はなんでメリケンが嫌いなんだろう。よくわからねえ。イギリスはあるが、アメリカに行ったことはねえし、日本で会ったメリケンは良い奴が多かった。多分、日比谷とか新宿にいるメリケンどもの偉そうな鼻が気に食わねんだろうな。

いつからだろうな、メリケンを殺したいと思ったのは。どうしようもなく殺してやりたくなったんだ。抑えられないんだ。どうしたらいい?

殺すならメリケンの男だよ。背の高くて、痩せているメリケンがいい。女を殺すのは芸がない。背の高い痩せた男。できれば、エリートがいい。

そう思ったのが去年の春頃だったかな。俺はもう殺っちまった。

俺はよ、ノルウェーの大量殺人事件の話を小耳に挟んで、そうかノルウェーなら人を殺しても罪に問われないんだと思ってた。とんでもねえ。ここには白米も納豆もねえ。日本語の本もねえ。メリケンの作った映画ばかり見せられる。拷問だよ。まあ日本の刑務所に入るよりはいいけどな。あとなによりここでは死ななくていいしな。

俺はよ、メリケンを殺ったぜ?何人殺ったと思う?15人だ。15人!そらヒトラーとかブレイビクに敵わねえが、俺としてはよくやった方だと思ってる。全員射殺だ。アサルトライフル。なんつったかな。忘れた。銃の名前をひけらかすような奴にはなりたくないんだ。

俺は自分が殺されねえように結構苦労した。まずGoProを買うところから始めた。ちゃんと俺に害意がないことを警官に伝えて、無抵抗の犯人を演じる練習をした。万が一録画できなかった時のために録音もすることにした。何度も何度も、銃を置いて、手を上げ、無抵抗に見えるように予行演習した。

ネットの回線も一番良いやつにしてな、5Gにしたよ。カメラでとれていても、配信されてなかったらやばいからな。

射撃の練習は実はあんまりしてないんだ。セミオートで10m先の的に当てられることだけ確認して、あとは天に任せた。

アメリカ大使館を狙ったのは単純にアメ公が多いからだ。

寒くってよ。凍えそうだった。大体寒いのは嫌いなんだ。退庁時間に奴らめ揃いも揃ってぞろぞろ出てきやがった。

1人目を殺したのは実は2発目の玉だった。1発目ははずれて雪の中に埋まった。2発目。俺が一番殺したかった細身で背が高いメリケンの後頭部にスポーンと当ててやった。即死つっても、そいつが倒れるまですごく長く感じた。もう1発撃ち込もうって時に、奴はうつ伏せに倒れた。

女は殺さないって言ったけど、あれは所信表明みたいなもので、実際は殺すしかなかった。最初に殺したやつの周りに集まった女職員2人を即死させた。

警備員が近づいてきた。俺は緊張した。こいつらは確実に殺さなきゃならない。ノルウェー人だが、すまない。緊張してたから、胸を狙った。すると首に当たって警備員は死んだ。

それから俺は大使館の入り口に走った。

サブマシンガンに切り替えて、殺しに殺した。もう途中からアメリカ人でもノルウェー人でもパプアニューギニア人でも、どうでもよかった。できるだけ殺したかった。

警察は思っていたより早くきた。サイレンが聞こえ出してから、俺は外に出て、練習通り銃を放棄して、両腕を上げた。

「俺は抵抗していない。俺を殺すな。」

何度も何度も練習したノルウェー語を初めて使った。実を言うと俺は今でもノルウェー語でおやすみも言えない。

ああちくしょう。映画の時間だ。メリケン映画は嫌いなんだ。

また明日な。

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