「生かすべきか、殺すべきか。それが問題だ」


僕は思案した。どうする!時間がないぞ。
この赤ん坊を生かすのか殺すのか。それが問題だ。
赤ん坊は死産ということになった。看護師が勘違いをしていたのだ。
しかしこの子は生きている。指が動いている。
心臓をマッサージすれば、生き長らえさせられる。
さて、僕はそれができる。多分唯一の人間だ。
僕は赤ん坊の目の前にいる。いとこの出産に立ち会っていたのだ。
いとこは泣いている。いとこの夫は泣いてはいないようだ。
1分、いや30秒考えよう。
この赤ん坊を生かすのか殺すのか。
まず生かした場合、僕はこの赤ん坊に対して、文字通り命の恩人になることができる。それを鼻にかけ、生きて行こうか。いわば僕は男でありながら、この赤ん坊の生みの親と同義になれる。これは素晴らしい。ただ、こいつは育ったあと、僕のことを疎ましく思うんじゃないかな。命の恩人が側にいたら疲れるだろうしなあ、いとこ夫婦とは仲良くしたいし、そうすると、やっぱり殺しておけばよかったと思うんじゃないかな。
殺した場合はどうだ。僕は初めて、消極的な形ではあるが人を殺すことができるわけだ。そんな機会のある人はいない。そしてこれは合法だ。合法的に人を殺せるなんて!そして見殺しにしたことをいとこ夫婦に話して反応を楽しむのもいいな。ただ、罪悪感はあるだろうなあ。それに耐えられるかしら。
まずい、あと5秒しかない。生かすならいまだ。声を出すか?出さないか?
反出生主義の輩はどうするだろう?やはり殺すのだろうか?
ええい、人の判断はどうだっていいんだ。お前はどうしたい?
うーん、うんうんうんうんうん。待て待て待て待て、
今考えている。うん。それでああなって、こうすると
スッー


どうでもいいや

おわり

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