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タノミノ作品集

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タノミノの作家としての作品集です。 エッセイだけでは書けない。タノミノのホンネや伝えたいこと。
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2021年7月の記事一覧

「幸せな一幕」ショートショート

「煙草ォ一本ください」 爺さんが若い不良2人に声をかけた。 「なんだって、爺さん」 「煙草ォ…

「私の最後の仕事」ショートショート

どうやら私は肺が悪いということだけは知っていた。 行きずりの女と見れば、どんな女だろうと…

「え、僕が大統領に!?」ショートショート

どうやら別人に生まれ変わったらしい 随分と豪勢な家に住んでやがる。はてさて、誰に生まれ変…

「浦島花子伝」

浦島太郎とは言わず、浦島花子の物語を記そうではないか。 だって、今は、女が芸術をたしなみ…

「顔面喪失」ショートショート

鏡を見ねえと何が起こるかと言うと 顔がないと言ってもだな、あなた方の顔に当たる位置に物体…

「本は読まれたがっている」ショートショート

本は読まれたがっていた。 彼らは擬人化していた。僕が図書館を歩いていると、彼らは僕の前に…

「男が待つ相手」ショートショート

男が誰がを待っている。(もちろん、文字通り誰かを待っているのだ。ゴドーではない) 誰だろうか?私は思った。 男は定年間近のサラリーマンといった体だ。 待ち合わせ相手は遅れているらしい。 男はコメディタッチにキョロキョロ辺りを見渡す。 私は推理をして見たくなった。これから来るのは、どんなやつだろう。 まず、上司ではなさそうだ。なぜなら男は眉間にシワを寄せ怒りをあらわにしている。相手が自分より目上の人なら、万が一この様子を見られるとまずい。だから上司ではない。これは確実だろう。

「愛子はどこですか」ショートショート

「誰か、愛子をしりませんか?私の娘なのです」 人身事故があった現場で、痩せこけた女が通行…

「当たり前だ。それをいうな」

未開人には知恵がある? 当たり前だ。だからそれをいうな。 動物は人間より賢い? 当たり前…

「嫉妬と軽蔑」

嫉妬するのはおかしい。偉大な事業はそれが誰によって行われたかなど関係がない。たまたまその…

「私に入らないで頂戴!」ショートショート

霞ヶ関を歩いていたら(普段ならこんな場所絶対に来ないのよ)ある男がやってきて、私を巨大な…

「なぜ助けない?」ショートショート

「見ていなさい。あの子供が死にますよ」 「あの子供が?」 「見ていて」 「どうしてそんなこ…

「孤独を楽しむ男」

そうか、これが孤独というものなのか。と彼は思った。 30歳にして初めて孤独の味を知ったのだ…

「ある娼婦の運命」ショートショート

ホテル行く?と彼がいうと、彼女は目をまん丸くした。憤りと幻滅。彼に対する憎しみは彼女を活動的にし、彼から逃げると言う選択をとらせた。彼女は終始彼に対して無言を貫き通した。それは賢い選択だった。彼と会話をすれば言葉のアヘンで中毒になってしまうことを、彼女は知っていたのだ。白痴の女でも経験からか、このような知恵を編み出したことは、彼をほんの少しだけ驚かせた。 彼女の怒りと悲しみは彼が引き起こしたものだが、彼は彼女を本当に憐れに思った。体を売り、行きずりの男に金を蕩尽し、人生で初め