如何なる花束にも無き花を 水原紫苑 第10歌集

水原紫苑の第10歌集。題名はマラルメの「あらゆる花束に不在の花が」から。因みに作者は、この題名をつけることに「思いきって夢を叶える」とし、文章を書きかえることに「この是非は問われることと覚悟して」いると記している。I’absente de tous bouquets〈あらゆる花束の中にない不在の花〉absente、は花が不在なのではなく「無」とも取れる。ある人は世阿弥が『花伝書』でいう〈まことの花〉との共通性を語るが、門外漢なので深い詮索は無視する。さて、歌集であるが、年月と喪失を経て愈々水原紫苑は高まっていくようで水原流の難解さも勝るようでファンとしては嬉しいばかりではある。父母、愛犬、師、そして打ち解けざる日本への思いは自らの生をも痛めつけるように溢れるばかりだ。しかし、歌集全部を読み自分の栞とした「よき歌」をたどれば旧態依然の古臭い歌を選んでいたりする自分がいる。
よきとした歌をたどれば我がうちにまさる右翼のかたき言の葉

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