日本の旅人 菅江真澄  秋元松代


戦後日本を代表する劇作家、秋元松代(1911-2001)が1973年に淡交社から出版した菅江真澄の評伝。秋元女史は劇作家として著名で今でも作品が舞台で上演されている。現在読むことができる菅江の評伝としては最高の出来ではないかと思われる。菅江の旅を辿るように春の天竜沿いから始める記述はまるで菅江本人と旅をしているような幸福な錯覚さえおこさせる。長野塩尻の洗馬から新潟へ抜け山形、秋田、青森、蝦夷と菅江自身が数十年かけた旅を共にできる幸いは他の本では中々味わえない。
青森津軽での天明の大飢饉との遭遇、内陸部から岩手方面への飢饉からの避難。念願の蝦夷への旅。
津軽へ帰ってからの不可解な津軽藩の追及?秋田へ逃れての白神山地での命がけの彷徨。そして、急に訪れる死。手に取るように菅江真澄という旅人の心情がうかがえる。旅人・菅江と劇作家・秋元の何とも幸福な出会いに感謝するしかない。

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