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[奇談綴り]入れない

twitterでかなりたくさんの怪談作家さんをフォローしているのですが、こんな記事が流れてきました。

東京で事故や事件というと、人間の多さからたいてい巻き込み型になるわけで、池袋が特にそうだとも思えないのですが、この話に出てくる「塔」は覚えがありました。

池袋P’パルコ(以前ニコニコが入っていましたね)のすぐ脇で、人通りは悪くないのですが、すぐそばの地下道ともどもなんだか落ち着かない嫌な雰囲気のするエリアです。
塔も通りすがりに目に入ったことはありますが、足を止めてじっくり見たいという気持ちにはならない場所でした。

記事のせいで、そういえばちょっとだけ関係あるかもしれない話を思い出しました。
件の視える友人の話です。

その日は池袋で飲もうということになって集まったのですが、せっかく池袋に来たのだから買い物も済ませたいと思いました。
池袋近辺では当時P’パルコにしか入っていない店だったのです。
友人は飲み以外用事はないということで、すぐ済む買い物だし、どうせなら一緒に行こうと言う話になりました。

いつもどおりくだらない雑談をしながらP’パルコに近づいていくと、友人の口数がどんどん少なくなります。
とはいえ足が止まるわけでもないので、そのまま進みました。
いよいよ入り口にたどり着いた時、友人の顔色が少しおかしいことに気づきました。普段から白い肌の色がさらに白くなっていて、表情が消えています。

どうした、と問うと「ごめん…ここから先には行けない。店の中いっぱいに黒い靄があって、怖くてここから動けない」と言います。

私はちょっとぽかんとして店の中を覗き込みました。
これほどの大規模な駅前のデパートにしては人が少ないけれど、靄は見えません。
普通のオシャレファッションビルです。

「そんなにひどいのか」と聞くと「真っ黒でまともに見えない。無理」と言います。

黒い靄の話は以前も聞いたことがあります。サンシャインシティのアトラクションであちこちに居たそうで、なんかすごく変なルートで連れ回されたことがありました。
それが視えるとなると、友人を連れて行くのは無理そうです。
でもせっかくここまで来たのだから、お店には行きたいな…。

「じゃあさ、そこの喫茶店で待っててよ。一人で行ってくる。
買い物したらすぐに戻るから、少し休んでて?」

友人はそれでもまだ迷っていました。
真っ黒い靄の中に私を置いて行くのが心配のようです。
視えてたらさすがに避けると思うのですが、自分には全く視えません。どう見ても普通のお店です。ゼロ感バンザイ!
なんだか涙目で渋っている友人を説き伏せて、ごく普通に店内に入り、目的の店まで行きました。

買い物が終わってから合流すると、友人に呆れられました。
「怖かったよ…あの靄でなんで平気なの。しかも靄が少し避けてるし…。キミホント何者?」

ただのゼロ感ですが?
そういえばほぼ店員しかいなかったよね、あのビル。売り上げ大丈夫かな?

予定通りの買い物を抱えてご機嫌の私は友人の困惑を全く気にせず、そのまま飲み会になだれ込んだのでした。

靄は平気でしたが、あの近辺、本当になんかこう「近寄りたくない」んですよね。あそこから旧巣鴨プリズンあたりまでは歩いているだけでものすごく緊張するんです。
ただ、そういう怪異が起きる場所は人を呼ぶので商業施設には適しているそうです。さらに、大人数で踏むことで徐々に力を削ぐのだとか。
なので、東京の大きな商業施設には怪異がつきものだったりします。

このへんは東京で暮らす以上、しょうがないのかもしれないですね。

ゼロ感のはずの私が頑なに行きたくない場所なので、特に塔は興味本位で行かないほうがいいかもしれないです。
行く場合は要注意で。
都内で似たような「ここ行きたくない」という場所、他にもあるんですけど、それが将門の首塚と回向院(小塚原刑場跡地)、明治神宮なんですよね。
結構強力にヤバいかも知れません。

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