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使えなかったお小遣い

これは、私が子供の頃の切ない話です。ちょっと離れた場所に住み親戚から、秋祭りがあるので遊びに来ないかと、お誘いを受けました。父母は用事があったので、私(当時8歳)と弟(当時5歳)だけがバスに乗って親戚のうちに行きました。親戚の家は、バス停の真ん前なので降りるバス停を間違えなければ、問題ありません。

バスに乗る前に、母が「これは3人分のお小遣いだから」と言って300円を渡してくれました。私はその時、親戚の家には従兄弟が3人いるので、一人100円づつ渡せば良いんだ、と思い込みました。兄弟だけで乗る初めてのバスには緊張しましたが、乗り越すこともなく、親戚の家に無事につきました。親戚の家には私と年が離れた高校生と中学生の従兄弟がいて、もう一人私と2つ違いの年の近い従兄弟がいました。私は、お利巧ちゃんなので母からもらった300円のお小遣いを従兄弟たちに全てあげました。

お祭りには、年の近い従兄弟が私と弟を連れて行ってくれました。お祭りには出店が出ていて、色んなものが売られていました。しかし、私と弟はお金を持っていませんから、何も買うことができません。弟は人懐っこくてチャッカリしていたので、従兄弟にねだって色々と買ってもらっていました。私は真面目ちゃんなので、そんなことはできません。結局、私は何も買うことなく、ただお祭りの店を見ただけでした。

次の日、バス停からバスに乗せてもらい、自宅に戻りました。母から祭りの感想を聞かれたので、「お小遣いが無いので、何も買えずに楽しくなかった」というと、「お小遣いはあげたじゃないの」と言いました。「どういうこと?」と聞きなおすと、「300円は、お兄ちゃん(私のこと)と○○ちゃん(弟のこと)と△△(年の近い従兄弟)の分だったのよ」と言いました。「そんなこと聞いてないよ~」と愕然としました。

うちの両親はいつもそうで、肝心なことをちっとも説明しませんでした。家の引っ越しの時もそうでした。私への引越しの事前説明が全く無く、帰ったら家の家具が運ばれていて、元・我家はすっかりもぬけの殻でした。私は、「捨てられた!」と本当に思いました。

あれから半世紀以上経っていますが、祭りの出店を見ると、”使えなかったお小遣い”のことを思い出します。

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