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お勧め”シリーズ本”#1 『赤頭巾ちゃん気をつけて』

 ”赤頭巾あかずきん”は、グリム童話などに収録されている有名な童話です。ストーリーの詳細は知らなくても、”赤頭巾”は知っているはずです。でも今ドキ、頭巾という言葉は死語で、ほとんど使われていません。頭巾で思い付く言葉は防空頭巾(今なら防災頭巾?)くらいです。

 この赤頭巾をモチーフにした小説が、庄司薫さんの『赤頭巾ちゃん気をつけて』です。庄司さん(男性)は、この小説で1969年の芥川賞を受賞しています。本の中身は、読んでから楽しんでもらうことにして、時代背景だけを掻いつまんで説明します。

 この本が書かれた時代は、学生運動がピークの頃で、多くの学生がヘルメットをかぶって、ゲバ棒を振り回していました。その頃小学生だった私は、テレビで見る大学生を「なんて怖い人たちなんだ。大学生なんかにはならないぞ!」と言う風に感じていました。本書の主人公は、作者と同じ名前で”薫くん”です。薫くんはお勉強ができるので、東大志望なのですが、学園紛争で東大入試自体が中止になります。嘘のような本当の話ですが実話です。現在は、東大でも卒業式がありますが、かなり長い間、卒業式が無かった時期がありました。これも、学園紛争の名残でした。

 この本はシリーズものを意識して書かれたものではないでしょうが、その後に続く3つの小説で、4冊のシリーズものになってしまいました。その題名は以下の通りです。

『赤頭巾ちゃん気をつけて』『さよなら快傑頭巾』『鳥の歌なんか聞えない』『ぼくの大好きな髭』

 お気付きの通り、小説のタイトルに色(赤・黒・白・青)が入っています。これは四方(東西南北)を表わす4色になっています。作者の庄司さんは私の父と同世代の人なので、私が大学生の頃に読んだ感想は「昔の大学生って、こんなだったんだ・・・」です。今の若い人達が読めば、もっと大きなジェネレーションギャップを感じるはずです。 

 近未来小説ならぬ、近”時代小説”と思えば、新しい発見があるかもしれません。ちなみに、庄司薫さんは有名なピアニスト・中村紘子ひろこさん(故人)の旦那さんです。



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