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もう20年以上前になりますが、伯父さんが亡くなりました。当時まだ新婚だった私は、妻と二人で伯母さんの家に向かいました。母の親戚には家族単位で会うことはありましたが、親戚一同で揃うのは久しぶりでした。伯父さんは仕事の関係で、家にほとんどいませでしたから、伯父さんとの記憶は少ししかありませんが、子供の頃、母の故郷に帰省した際には、伯母さんには本当にお世話になりました。

午前中に伯父さんの葬儀が終わり、その日のうちに初七日をするということで、午後になってから一人のお坊さんが現れました。そのお坊さんはかなりの高齢で、少なくても80代に見えました。もちろん80代でも若々しい人はいますが、その時のお坊さんは見るからにヨボヨボでした。足元もフラフラしていて、まっすぐ歩けないような状態でした。

なんでこんな人が来たの?、と親戚一同も同じ思いだったと思います。あとで聞いた話では、法事が重なってあのお坊さんしか残っていなかったそうです。たぶん、ほぼ引退状態の元・住職みたいなお坊さんに運悪く当たったようでした。読経も歯切れが悪く、何を言っているのかよくわかりません。また木魚を叩くのですが、うまく当たらないのです。

法事なので笑うことはできません。親戚一同、必死に笑いをこらえていました。何とか最後まで終わって、初七日の法要も無事終わりました。お坊さんが帰った後に、叔父さんの一人が言いました。「俺は、あの坊さんが法要の途中で亡くなるんじゃないかとヒヤヒヤしたよ」と言ったので、親戚一同の我慢が限界に来て、一斉に大爆笑になりました。もちろん不謹慎なのですが、すでに身内しかいませんでしたので、問題ありませんでした。

笑ってはいけない状況では、反対に笑いたくなってしまいます。読経中に大爆笑にならなかったのが、不幸中の幸いでした。その後は、和やかな雰囲気の中、葬式後の夕餉となりました。酒が入るとまたお坊さんの話が蒸し返されましたが、伯父さんの良い供養になったと思います。

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