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ランスとフリーランス

 今回は、語源オタクの人にはある意味常識のウンチクである、フリーランスの原義のお話です。

 フリーランスとは、”特定の企業や団体・組織に属さずに、自らの技能を提供することにより社会的に独立した個人事業主”のことを言います。このフリーランスは、フリーランサーまたはフリーエージェントとも呼ばれます。フリーランスの語源は”傭兵”で、”フリー(自由)なランス(槍)”が元々の意味です。つまりフリーランスは、どこの王侯貴族にも属さない兵士のことを意味しました。

 ただし、ランス(lance)と(spear)は厳密には違います。我々が想像する槍には先端に刃物が付いていますが、ランスには基本的に刃物がついておらず、棒の先が尖っているか円錐型をしています。ランスは、馬に乗った状態ですれ違いざまに突き刺す攻撃が基本となります。そのためランスは長く、一般的なものでは2m前後、長いものでは4~5mを超えるものもあります。大雑把に言うと、重装歩兵が使う武器が”槍”で、馬に乗った騎士が使うのが”ランス”です。

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 スペインの作家セルバンテスが書いた小説『ドン・キホーテ』には、妄想癖のある主人公が、”槍”を持って風車に突撃する有名なシーンがあります。このときの”槍”は原文では”ランス(lance)”と書かれています。タイトル図のように、銅像のドン・キホーテが左手で握っているのがランスです。よく見ると、ランスには持ち手に日本刀のつばみたいな部分があります。

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