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お薦めマイナー本#6 ガリバー旅行記

 ガリバーと小人の国の話は、絵本になったりもしているので有名です。しかし、『ガリバー旅行記』を風刺小説としてきちんと読んだ人は少ないと思います。私は大学生の頃にこの本を読んで、断片的ではないガリバー旅行記を知りました。

 『ガリヴァー旅行記』は、アイルランドの風刺作家ジョナサン・スウィフトにより、執筆された風刺小説です。正式な題名はとても長くて、『船医から始まり後に複数の船の船長となったレミュエル・ガリヴァーによる、世界の諸僻地への旅行記四篇』です。この長いタイトルからもわかるように、旅行記の内容は4篇に分かれています。順番に書くと、第一篇 リリパット国渡航記、第二篇 ブロブディンナグ国渡航記、第三篇 ラピュータ、バルニバービ、ラグナグ、グラブダブドリッブおよび日本への渡航記、第四篇 フウイヌム国渡航記、です。

 このリリパット国が、絵本で有名な小人の国です。また、ブロブディンナグ国は巨人の国、ラピュータはジブリのアニメの題材にもなった空飛ぶ島の国、フウイニム国は馬(に似た知的生物)の国です。また、ほんの少しの記述しかありませんが、第三篇には日本も出てきます。スウィフトが描いたこの奇想天外の物語を、単なるユーモアあふれる冒険譚だと考えたらいけません。この本には、スイフトの鋭く辛辣に人間と現実社会をみつめている風刺が散りばめられています。

 第一編では、小人の国が戦争を始めるのですが、戦争の理由は「茹で卵を頭から食べるか、お尻から食べるか」です。これは、当時のイギリス国内での宗派対立が背景になっています。この話は、自身がキリスト教の牧師でもあるスイフトが、当時のつまらない宗派対立を揶揄したものだと考えられています。

 下記の本に載っているかどうかわかりませんが、私が読んだ本には、当時の時代背景などを解説した多くの注が書かれていました。大人になって本書を読み込むなら、注を丁寧に読むことをお勧めします。



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