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お勧めシリーズ本#9 大沢在昌『坂田勇吉シリーズ』

前々回に大沢在昌さんの『新宿鮫シリーズ』を紹介しましたが、同じ作家さんの”マイナーだけど面白いシリーズ”を思い出したので、是非紹介したいと思いました。そのシリーズが、『坂田勇吉シリーズ』です。シリーズといっても、まだ三冊しか出ていません。また、作者自身が三冊目で終わりと宣言しているので、続編は期待できません。

新宿鮫の主人公である鮫島は、アウトローのキャリア官僚で、頭も良いし、腕っぷしもそれなりにあります。しかし、本シリーズの坂田勇吉は、本当に普通のサラリーマンです。頭が切れるわけでもなく、腕力もない、どちらかというとヘタレです。本のキャッチコピーでは、坂田勇吉は”日本一不運なサラリーマン”と書かれています。

シリーズ第一弾『走らなあかん、夜明けまで』では、27歳の普通のサラリーマン・坂田勇吉ゆうきちは、生まれて初めての大阪出張に向かいます。しかし、日本一の不幸体質のため、大阪のやくざ組織の抗争に巻き込まれてしまいます。主人公の名前は、大阪&坂田ということで、大阪出身の有名な棋士・坂田三吉さんきちをモジった名前にしたことが容易に想像できます。この本は、萩原聖人さんが主人公の坂田役で映画化されています。私は見たことが無いのですが、いつか見てみたいと思います。

シリーズ第二弾『涙はふくな、凍るまで』では、舞台がスケールアップして、主人公の坂田は北海道でロシアンマフィアとトラブルになります。日本一不運なサラリーマンは、ここでも不幸体質全開です。ロシア美女やクラープと名乗る謎のロシア人なども登場し、北海道を舞台に大活躍(?)します。シリーズ中でお薦めなのは、この第二弾です。映画化も、第一弾よりこちらのストーリーの方が向いていると思うのですが・・・。

シリーズの最後を飾る『語り続けろ、届くまで』でも、「日本一不幸なサラリーマン」は健在で、地元東京でヤクザがらみの厄介な事態に巻き込まれます。主人公の坂田は、少しづつ成長しています。第一弾では”まったくのヘタレ”でしたが、第二弾では”肝が据わったヘタレ”に変わっています。シリーズ最後のこの作品では、ヘタレ感は影を潜め、”頼もしい”とさえ思える若者に成長しています。

三冊しかないシリーズなので、読破することは容易だと思います。我こそは”不幸なサラリーマン”と思っている人には、勇気を与えてくれるかもしれません。週末の連休中にいかがでしょうか?。


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