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古生物バンザイ#1 原始生命の起源

 現在の地球の表面の7割は海(水)で覆われていますし、生命の維持にも水が欠かせません。そのため、生命は”たぶん”海中で誕生しただろうと考えられています。ただし、その原始生命誕生のメカニズムには、いろいろな説が提案されてきました。

 ”歴史的に”もっとも有名なのは、『化学進化仮説』を実証するための『ユーリー-ミラーの実験』です。ユーリーとミラーは、原始地球の大気組成をメタン・水素・アンモニアと考え、無菌化したガラスチューブ内でそれらのガスと、水を熱した水蒸気でガラスチューブ内を循環させ、6万Vの火花放電を行なうというものです。

 これは、フラスコ内に”原始地球”を再現する実験でした。驚いたことに、1週間後にはガラスチューブ内の水中にアミノ酸が生じていた。この実験は、メタン・水素・アンモニア・水(蒸気)という極めて基本的な成分から、タンパク質の元になる複雑なアミノ酸が合成する実験でした。この実験が成功したことから、「もしかすると、生命の誕生のなぞが解けるのでは・・・」と驚きを持って受け入れられました。

 しかしながらその後の研究で、地球誕生初期には隕石などの衝突熱により、地表はマグマの海ともいえる状態だったので、原始大気の組成は現在の火山ガスに近い二酸化炭素・窒素・水(蒸気)という組み合わせだった説が有力になりました。そのため、残念ながらこのような手順で原始生命が誕生したのではないことが判っています。

 この実験は化学的なアプローチですが、生物学的なアプローチもあります。現在は、遺伝子分析の技術が進歩しているので、ゲノム(遺伝子情報)から、生物の近縁関係を調べることができます。これを突き詰めていくと、生物の共通祖先に行きつきます。生物は、ドメインと呼ばれる3つの大きなグループに分けられます。そのドメインとは、真正細菌真核生物古細菌です。この3つのドメインの共通祖先が、原始生命だろうと考えられています。共通祖先に近い原始生命は好熱性を示すものが多く見られることがわかっています。しかし、最初の生物がどのようなものであったかは、まだよくわかっていません。

 最近の研究では、深海熱水孔の周辺に原核生物や多細胞生物を含めた真核生物による独自の生態系があることが発見されています。このような太陽エネルギーの存在しない深海という環境で、独自の生態系を形成している様子は多くの学者を驚かせた。このような背景の下、”原始生命は深海熱水孔の周辺で誕生”したという説も浮上しています。

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 また、地球科学的なアプローチもあります。深部炭素を研究テーマとした多くの研究者で構成される深部炭素観測所は、深海熱水孔だけではなく、海底あるいは地上を掘削すると地下5km程度まで化学合成独立栄養細菌群の支配的な生物圏が存在することを明らかにしました。つまり、地下にも生物がいることを突き止めたのでした。そのため、『地下5km内で発生した化学合成独立栄養生物が生命の起源』とする新説も現れています。

 生命の起源については、まだわからないことだらけですが、この最初のご先祖様から、多種多様な生物が進化していきました。これからの記事では、気になった(またはイチオシの)古生物を紹介したいと思います。

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