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お勧めシリーズ本#8 森博嗣『S&Mシリーズ』

森博嗣先生は、理系ミステリィのトップランナーです。森先生自身が、某国立大学の建築学科の助教授であったことからもわかりますが、ガチの理系です。ベストセラー作家・東野圭吾先生も理系出身で、『探偵ガリレオ』シリーズの理系ミステリィを書いていますが、作風が全く違います。個人の感想ですが、森先生は感情を抑えたドライ(乾いた)文章で、東野先生は情緒に訴えたウェットな(湿った)文章です。同じ理系ミステリィでも、趣(文体)が全く異なります。

森先生は、主な登場人物が異なる様々なシリーズを書いていますが、S&Mシリーズは、第1回メフィスト賞を受賞したデビュー作『すべてがFになる』から始まる一連のシリーズです。このシリーズ名は主人公である犀川創平さいかわそうへい西之園萌絵にしのそのもえのファーストネームのイニシャル、S(ouhei)とM(oe)に由来します。このシリーズに共通な話の流れとしては、西之園と犀川らが事件に巻き込まれ、犀川が仕方なく解決するという構成になっています。

シリーズの第一作『すべてはFになる』は、TVドラマ化され、アニメ化もされているので、映像としてみた人も少なくないのではないかと思います。理系ミステリィと称されるように、理系的なガジェットやトリックが使われています。中には、「そんなのアリ?」と思われるようなトリックもありますが、従来の推理小説の枠組みを破る画期的なストーリーになっています。

シリーズ本のタイトル(下記参照)は、日本語タイトルと英語のタイトルがペアになっています。これなどは、学術誌に投稿する論文のスタイルを踏襲しているようですが、単なる和訳ではなく、駄洒落のようなタイトルもあり、それがまた二重の意味でストーリーと関連があったりします。また、シリーズ最初の英語タイトルは『The Perfect Insider』で、シリーズ最後の英語タイトル『The Perfect Outsider』と対をなしています。どこまでも、心憎いお洒落なタイトルです。

すべてがFになる The Perfect Insider
笑わない数学者 Mathematical Goodbye
詩的私的ジャック Jack the Poetical Private
封印再度 Who Inside
幻惑の死と使途 Illusion Acts Like Magic
夏のレプリカ Replaceable Summer
今はもうない Switch Back
数奇にして模型 Numerical Models
有限と微小のパン The Perfect Outsider

私が森先生の本が好きなのは、感情を押し殺した犀川先生の極めて論理的な推理です。極端に言えば、人間的な感情が欠落していますが、そのドライな感じが新しい主人公像を浮き上がらせています。シリーズ本のストーリーは独立していますが、まずは『すべてがFになる』から読み始めることをお勧めします。少し血なまぐさい表現はありますが、そのトリックに驚くこと、間違いありません。


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