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サブちゃんの魅力 革新的な演歌

”サブちゃん”の愛称で呼ばれる北島三郎さんは、言わずと知れた歌謡界の大御所です。ただし競馬好きの人には、『キタサンブラック』の馬主としての方が有名かもしれません。サブちゃんのコブシの効いたエネルギッシュな歌声は、オールドファンだけではなく、若い人達も魅了しています。

最近、出張で利用した飛行機内で偶々、北島三郎さんの『まつり』を聞きました。特にサブちゃんが好きなわけではありませんが、「せがれ、その手が宝物♪」の歌詞のところで、なぜか感動してうっすら涙が流れてきました。普段は感情を表に出さないドライな性格なので、自分でもビックリしました。しかし、涙の原因が自分でもよくわかりません。

私は結構な歳なので、北島三郎さんのことは昔から知っています。しかし曲名で言えば、往年のヒット曲の『函館のひと』や『与作』くらいしか、サブちゃんの曲は知りませんでした。なので、少しググってみると面白いことが判りました。

北島三郎さんは、コテコテの演歌歌手のように見えますが、実はそうではありません。若い頃に酒場の”流し”で鍛えた歌唱力は絶品ですが、歌のメロディは全然演歌っぽくありません。

デビュー当時のヒット曲『函館の女』(1965年)では、ラテン的なリズムが特徴的です。そのため、歌詞の内容は”好きな人との別れ”なのですが、不思議と明るい印象の歌になっています。記憶を呼び覚ますために、動画で『函館の女』を聞きましたが、バックバンドの伴奏もやっぱり”ラテン”そのものでした。

演歌は単一のジャンルではなく、戦後様々な楽曲が試されました。しかし、1980年代にカラオケが普及し始めると、演歌は”歌うための音楽”に変容し、その進化が止まってしまいました。しかし、北島さんは進化を止めませんでした。1984年に発表された『まつり』は、楽曲全体に和太鼓による強力なビートを盛り込んでいます。これは一見、”和”のテイストを入れたように映りますが、実は当時世界的に注目され始めたアフリカンポップスのビートを彷彿とさせます。

演歌と聞くと保守的なイメージを連想しますが、北島三郎さんは革新的な演歌歌手なのです。

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