コンクリートミキサー車の衝撃
小学校に入学して初めての社会の授業でした。なんせ半世紀以上前のことなので正確には覚えていませんが、”働く車”の授業だったと思います。教科書のページをめくると、交差点周辺の絵が描いてあって、そこには色々な車が描かれていました。
貧乏な家でしたが、働く車の絵本(図鑑?)みたいなものは持っていたので、どの車がどんな名前かはすぐにわかりました。先生が、「この絵の中にはいろんな車がいますね。車の名前がわかる人は手を上げて」と言いました。まだ純真無垢の1年生ですから、「ハイ、ハイ!」とクラスの多くが元気に手を上げました。私は、様子を見ながら観察していました。
「パトカー」「救急車」「消防車」と簡単な車はどんどん答えられていきました。段々と車の種類が絞られていく中、何人目かの同級生(男の子)が「コンクリートミキサー車」と答えました。今ならもちろん知っていますが、その当時、”コンクリートミキサー車”という車は、見たことも聞いたこともなかったので衝撃的でした。その子の説明によると、確かに絵の中に変わった形をした車が描かれていました。どうも、その子の父親が建設関係の仕事をしていて、その子にとっては身近な車だったようです。
しかし、まだまだ世間知らずな私は「世の中にはスゲー名前の車があるんだな」としきりに感心していました。この感動を誰かに伝えたいと思って、別のクラスの友達にその話をしたら、「僕も知ってるよ。生コン車でしょ」と言われました。またしても、謎の言葉”ナマコン”が出てきました。ナマコンが、固まる前の生のコンクリートだと知るのは、ずっと後のことでした。