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どうする”影武者”家康

NHKの『どうする家康』では、遂に本能寺の変のエピソードに突入しました。本能寺の変では、明智光秀が織田信長を殺害するわけですが、その理由は未だに解明されておらず諸説あります。家康黒幕説や秀吉黒幕説など、信長以後に天下人となった人には、”天下統一”という動機があるので、状況証拠はそれなりにあります。

家康には、信長に正室である築山殿と嫡男・信康を自害させられた個人的な恨みもあったのかもしれません。ただし、これは現在の倫理観で考えているだけで、戦国時代の倫理観には当てはまらないかもしれません。奥さんや子供が亡くなって悲しいと思いますが、当時の状況では仕方ないことだったと割り切って考えていたかもしれません。

戦国時代には、主君自ら肉親を排除した例が少なくありません。織田信長は、実母と実弟を亡き者にしています。伊達政宗も同じように実母と実弟を亡き者にしています。また、武田信玄は実父を国外追放処分にしています。戦国時代には、権力維持のため、肉親の粛清も当たり前だったのです。

史実かどうかは分かりませんが、武田信玄には影武者がいたという話が残っています。それを題材にしたのが、黒澤明監督の映画『影武者』です。タイトル画↑↑のように、主演は仲代達矢さんです。この作品では、戦国時代に影武者として生きる運命を背負わされた”盗人”の姿を描いています。

実は徳川家康にも影武者がいたという設定の小説があります。『影武者徳川家康』は隆慶一郎作の時代小説で、”徳川家康が実は関ヶ原の戦いで西軍により暗殺され、影武者と入れ替わっていた”という設定で話が進みます。随分前に書店で見つけた時は、「そんな無茶苦茶な設定は、さすがに無理がある」と思いましたが、読んでみると意外とスンナリと話に入り込めました。隆慶一郎さんは遅咲きの作家で、元々はテレビ関係のお仕事をされていました。そのためかどうかはわかりませんが、設定に無理があっても、隆さんには読ませる力がありました。隆慶一郎さんの活躍期間は短いものでしたが、私が最も好きな小説家の一人です。

文庫本『影武者徳川家康』の表紙

この小説はその後、『北斗の拳』で知られる原哲夫さんによって漫画化され、さらにはテレビドラマ化もされています。この徳川家康の影武者となる主人公は、世良田二郎三郎元信せらたじろうさぶろうもとのぶという諸国を流浪する野武士です。実は徳川家康の”最終的な”本名は、徳川次郎三郎源朝臣家康ですが、元服後の最初の名前は家康ではなく”元信”です。この小説はフィクションですが、家康が隠居後に駿府城に移った史実や、徳川御三家を置いた史実などが、”影武者”という設定に矛盾が無いように虚実を交えて上手に説明されています。この本を読んでいると、”関ヶ原以後の家康は影武者に違いない”と思ってしまうほどでした。

史実は、新しい証拠が出てくるたびに、二転三転します。ひょっとすると家康は・・・。

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