見出し画像

空間を認識する仕組み 脳内GPS

 私たちはどうやって”自分がどこにいるか”を知るのでしょうか?。今まで通ってきた道を次に見つけ出すのに、一体どんな方法で使っているのでしょうか?。さらには、新しい道をどうやって探し出しているのでしょうか?。この疑問に答えるのが、自分の位置を認識できる”脳内GPS”です。

 私たちは、空間の中の自分の位置を瞬時に認識できます。この能力がないと、広い美術館を動き回ってお目当ての絵画を探したり、地図を頼りに待ち合わせ場所に到着することはできません。私たちの脳内の一体どこに、空間を正しくナビゲーションするための仕組みがあるのでしょうか。オキーフ博士モーザー博士夫妻は、このような空間認識の仕組みを、脳の海馬とそれに隣接する嗅内皮質の格子細胞に発見しました。2014年度のノーベル医学生理学賞において、「脳内の空間認知システムを構成する細胞の発見」で、オーキフ氏とモーザー夫妻が受賞しました。

 私たちがどの様に空間認知をしているかを調べるために、オーキフ博士はネズミに電極を付けて小さな部屋を走り回らせました。そこで、海馬の神経細胞の活動を観察していたところ、特定の位置に来た時だけ活動する神経細胞がありました。この細胞が、自分の位置を記憶していることが分かったので、”場所細胞(Place cell)”と名付けました。しかし、地図の全体が分からないと、自分の位置を正確に把握することは出来ません。この”経路の全体的な把握”に関わる細胞を発見したのが、モーザー夫妻です。

 モーザー夫妻は、海馬周辺にある嗅内皮質という部位を観察中に、場所細胞で記憶した位置と位置をつなげて、ある特定の形になる時に活性化する細胞を発見し、この細胞を”格子細胞(Grid cell)”と名付けました。この格子細胞で、私たちは方向と距離を認知することができるようになり、経路を認知しています。私たちは、海馬と嗅内皮質のネットワーク、すなわち場所細胞と格子細胞の連携によって脳内GPSが構築されていると考えられています。

 アルツハイマー病では、病気の初期段階でしばしば周囲の環境を認識できないという症状が現れます。これは海馬とその近辺に悪影響を及ぼす事が起因ではないかと推測されています。このようなアルツハイマー病患者の空間記憶の認識障害に対する原因が解明されれば、防止策の手がかりになるかもしれません。

 脳の中に、こんな便利な機能があることを最近知りました。ただし、私の脳内GPSは旧型らしく、よく道を間違えます(笑)。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?