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太陽の元素 ヘリウム

 1664年、ヨーロッパではペストが大流行して、ニュートンがいたケンブリッジ大学は一時閉鎖されることになりました。そこでニュートンはプリズムを実家に持って帰り、実験を行うことにしました。プリズムはタイトル図のような、ガラスなどからできた透明な三角錐や三角柱で、光を屈折させたり分散させたりできます。ニュートンは、窓の扉に小さな穴をあけて、太陽の光を暗い部屋に入れて、その光をプリズムに当てました。すると、白い色をしていた太陽の光は、虹のように赤色から紫色の七つの色に分かれました。これが、いわゆる分光です。

 万有引力で有名なニュートンですが、光学分野でも多くの業績を残しています。ニュートンは、61歳になる1704年に『光学』という本を出して、光についての研究を発表しました。この本の中には、若い頃に行なったこのプリズムの実験などが説明されています。この本の序文には、こう書かれています。「私のねらいは、仮説によってではなく、推論と実験によって、光の性質を示し、実証することです」。含蓄のある良い言葉ですね^^。

 ヘリウムは元素番号2番目の元素で、常温では気体です。このヘリウムの発見のきっかけになったのが分光です。1868年8月18日、ピエール・ジャンサンは、インドのグントゥールで皆既日食を観察していました。この時、太陽の彩層部分から出る光を分光スペクトル観測した結果、これまで見たことのない波長587.49ナノメートルの黄色い輝線(下図)を発見しました。のちに、この輝線が太陽に含まれるヘリウムによるものだと判明します。ちなみにヘリウムという元素名の由来は、ギリシャ語のHelios(ヘリオス太陽)です。

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 物質にエネルギーを与えると、物質固有の分光結果(スペクトル分布)が得られます。このスペクトル分布のパターンから、物質の特定が可能です。このような分析手法は、化学から天文学まで広く利用されています。

 ヘリウムは、石油と共に出てくる天然ガスに含まれます。このヘリウムは、化石燃料とは生成の経緯が異なり、長い年月をかけてウランとトリウムが放射性崩壊することによりできると考えられています。現在、ヘリウムの多くはこのような天然ガスから取り出されています。世界全体の生産量はアメリカ(約60%)カタール(約30%)で、ほぼ2国で世界の需要をまかなっています。アメリカの主なヘリウム含有ガス田は、ほとんどがカンザス州、オクラホマ州、テキサス州西部の地域にあります。

 ヘリウムは不燃性のガスなので工業用として利用されますが、遊園地などで売られている風船のガスとしても使われています。覚えている人もいるかと思いますが、一時期、ディズニーランドで風船の販売が中止になったことがありました。これは、アメリカでのヘリウム供給が滞って、ヘリウム価格が急激に上昇したためでした。

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