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反省できる人間

これは単なる男子高校生の愚痴に過ぎない。

僕は相手の気持ちが理解できない。
相手の言った事が「マジ」なのか「ネタ」なのか。
僕は無意識に相手の地雷を平気で踏み続ける。
無意識と言うよりは、無自覚なのかも知れない。
気が付くと、僕はYシャツの胸ポケットを握り絞められていた。

「調子乗るなよ?」
これは、つい先ほど修学旅行の最終日
帰りの飛行機を待つ最中
彼にチケットの入った胸ポケットを握り絞められた時に言われたセリフだ。
その瞬間、僕は震えながら
「ごめん。ごめん。ごめん。」
状況が全く理解できないが
とにかく謝り続けた。
面倒な奴を怒らせてしまったからだ。

その相手は、高校の同級生で柔道部(部活には、ほぼ参加していない)。
2年の頃、仮面ライダーをきっかけに
彼と初めて話した。
彼は、周りから嫌われていた。理由は知らなかった。
彼との関係が続くと色々と嫌な部分が見えてきた。主に2つ。

まずは、ノリが面倒臭い所。
彼は何かと殺そうとしてくる。
彼の誘いを断ると
「殺そうか?」「◯◯で殺してあげるよ」
「大丈夫。毒が含まれてる奴だから」
いちいち、それに反応する僕も悪いのだろうが、このノリを永遠に繰り返しやがる。
無視を続けるか、キレるか、他者の介入が無い限り、このノリは永遠に続く。
このノリが5ターン以上続く場合、
僕は大概 キレてノリを終わらせる。

もう一つは、怒りの沸点が分からない所。
僕が一番苦手とするタイプだ。
ある日、彼は「この前、Aとカラオケ行ったんだけど、最悪だった」など愚痴を話した。
そんな事もあって、
彼にカラオケを誘われた時
「断るわ。A連れてけば?」と返したら
腕を捕まれ、握り絞められた。
彼は、僕に顔を近づけ0キョリで
「知った感じで言ってんじゃねぇぞ。」
「次、言ってみろ。この腕へし折るぞ。」
腕に感じる痛みとこの場から逃れたかった僕は、すかさず
「ごめんなさい。」と謝った。
彼とは、冗談が通じる仲だと思っていたが
そんな事は無かった。
そんな事件があってから
僕は、彼とは距離を置くよう心掛けた。
僕は文字に起こしてみても、何故キレられたのかは分からない。
距離は置いてみたものの、彼は面倒臭い奴だ。何かと関わってくる。その度に例の面倒臭いノリを行う。毎回生き地獄の様に感じる。

何となく、嫌われてる理由が分かった気がした。

それ以来の事件が空港で起こった。
僕は今夜食べるほっともっとのメニューを考えていた時、彼が現れた。
「面倒な奴が来たな…」と僕はため息を吐いていたのかもしれない。
彼に「丸亀行こう?」と誘われた。
僕は小声で「誰が行くかよ」と言葉を滑らした。
彼は「おい、もう一回言ってみろ」と言った。彼の声には怒りが含まれているのを感じた。
僕はあの日の記憶がフラッシュバックした。
彼に腕を握り絞められた、あの日を。
僕は、あの時の様な空気を二度と味わいたくない。
一か八か、一瞬ピリついた空気感を
ファニーな明るい空気感にする為。
「冗談で言ってみたお テヘッ」と誤魔化したかった一心で、ヘラヘラしながら
「誰が行くかよ」と返した。

時が止まった。いや、止まった様に感じた。
気が付くと、チケットを入れていた胸ポケットを捕まれた。そして握り絞められた。
「あの時と一緒だ。」
腕を握られた時と同等。もしくはそれ以上の力を感じた。
その瞬間、「調子乗るなよ?」
そんなセリフを0キョリで言われた。
僕は震えながら
「ごめん。ごめん。ごめん。」
状況が全く理解できないが
とにかく謝り続けた。

このエッセイを書いてて気づいた。
「これ、俺が悪りぃな。」
だって、ヘラヘラして「誰が行くかよ」は
みんなキレるぜ。

漫画の序盤で、ヘラヘラしている不良は
見下している陰キャ主人公に喧嘩を売る。
しかし、喧嘩を売った不良が主人公から返り討ちに遭う。
それを完全再現した様な瞬間だった。
僕は倒される事は無く、
チケットをくしゃくしゃにされたぐらいで済んだ。何か涙が出そうだった。
この時は、被害者面していた。
元々、僕は彼への不満を文字に起こしてストレスを発散したい一心でこのエッセイを書き始めた。
いざ文字を起こしてみれば、
加害者は自分だったと気づいた。

「まぐれだ」「手を緩めてただけ」
「あんな奴なんか…あんな奴なんか…」
自身の敗北を認めたくない不良は、
物語中盤で再び登場する。
しかし、主人公に呆気なく返り討ちに遭うのはお約束だ。

僕は人の気持ちが理解できない。
それは、経験を積むことでしか、改善されないのだとしたら
地雷を踏み続けていく事も重要なのか?
相手を怒らせたら、
当分僕はその出来事を忘れる事に専念する。
今までの事を忘れようとしていたからこそ、
今回の様な事件を起こしてしまったんだと考えている。

反省できる人間こそが、
人の気持ちを理解できる人間なのかも知れない。
僕の周りにいる相手の気持ちを汲み取れる人間は、
みんな経験を積んで、自分なりに反省していたからこそ、
僕と違って、人の気持ちを理解できる人間になれたのかも知れない。

僕はこれから反省しながら生きる。
人の気持ちを少しでも理解したいから。

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