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小中時代にいた、「スゴい」奴の話

どうも、去年のバレンタインは親からすら貰えなかった系大学生です。

唐突だが、地元で「スゴい」奴と言われると、どういう人を思い浮かべるだろうか。

滅茶苦茶足が早かった奴
ゲームを極めてた奴
学校内で一番頭が良かった奴
喧嘩が強かった奴 

色々思い浮かべることだろう。

今回は俺が個人的に「スゴい」と思った奴の話をしよう。

目次


彼について


学校での「絶対悪」的存在


俺と彼









彼について


これから話す「スゴい」奴、彼をAと呼ぶ。

まず、Aについてだが、彼と呼んでいるように男である。身長は学校の中でもかなり低い方で、体はやせ細っていた。小中時代の頃の話なので、今は分からない。Aとは、小学校で2度、中学校で1度、同じクラスになった。ちゃんと毎日学校に来ていて、何の偏見も無くAを見ればただの元気な奴だった。一方、特別運動が出来るわけでも無ければ、頭が良い訳ではなかった。むしろその逆で、テストの点数なんかはいつも低い方だった。

Aは自分の家もしくは友達の家で遊びたがる奴だった。根っからのインドア派という事だろう。俺も小学生の頃はよく彼の家に行って一緒にゲームをしたりして過ごしていた。彼の部屋は綺麗というには程遠い状態だったが、小学生だったのでそんなことは気にもとめなかった。Aはミリタリーオタクというのだろうか、銃や戦車、戦闘機のことをよく知っていて、戦争系のゲームをよくやっていた。

さて、ここまでだとAはどこにでもいる普通の男の子だと思うかもしれないが、彼を一言で表せば「いじめられっ子」だった。
小学校も中学校も、彼はかなり理不尽に扱われていた。

(予め断っておくが、他人の事を書いているように見せかけて俺自身の事を書こうとしている訳では無い。これは本当にいた、ある同級生の話である。)




学校での「絶対悪」的存在

もう小学生・中学生の話なので、俺自身記憶が定かではない部分もあるが、彼は確かに「いじめられっ子」だった。少なくとも小学校2年生の時点ではもう、その「いじめられっ子」的立ち位置は確立していた。小学生なんかは、特に大した理由も無く誰かをいじめる時がある。誰でも、それに加担したこともあれば、逆にその対象となってしまったこともあるだろう。しかし、Aの場合は一時だけの話では無く、中学を卒業するまでずーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっと、理不尽な扱いをされていた。中学に上がれば、他の小学校の生徒も同級生になる訳だが、他の小学校出身の人達でさえもAをいじめるようになった。

具体的にどのようなことをされていたか。

俺の学校では、いやどこの学校でもそうであっただろうが、給食のパンや牛乳・アイスなんかが余っていた時に、それを欲しい人達がジャンケンで取り合う習慣があった。ある日の給食時間、余っていた揚げパンをめぐって早食いをした猛者達が集まった。(ジャンケンに参加するには、まず自分の分の給食は完食しなければならなかった。)その集まった中に、Aは居た。結果、Aがジャンケンに勝利し、見事揚げパンを手にする権利を手に入れた。しかし、「いじめられっ子」なんかに揚げパンを取られたのが気に入らない奴もいる。ある生徒が、ただでは渡すまいとAの揚げパンを舐めたのだ。勿論、それにAは激情した。その生徒もさすがに先生に叱られていた。

またある日の下校の時、理由はよく分からないが2人の生徒にいきなり暴力を振るわれてボコボコにされていた。当然泣きわめく。俺はその様子を見つつ、ただ通り過ぎた。その後、家に帰って遊びに行こうと外に出た時、Aが何人かの奴と一緒にいた。Aをボコボコにした生徒とは違う奴らだ。どうやら、Aを慰めていた訳では無さそうで、なぜボコられたのか色々話を聞いているようだった。Aは未だに泣き喚いていた。まぁ当然だろう。今となってはその時の映像が浮かび上がってくるだけで、どんな言葉を交わしたのかは覚えていない。しかし

「みんな!みんな!だいっきらいっ!!」

泣きじゃくりながら、大声で、そう叫んでいたのは覚えている。Aは自分をボコった2人では無く、「みんな」と言った。恐らく、あの場に居てただ見てただけの俺達も、あの場にいなかったが自分に理不尽なことをした奴達も「みんな」嫌いだということなのだろう。被害者にとっては、加害者も第三者も無く、ただ自分を酷い目にあわせ、救ってくれなかった人間達、それで一括りということなのだろう。俺は何も出来なかった。かといって、何かをするつもりも無かったが。俺自身もAを下に見ていたところがあったので、特に味方をするつもりは無かったが、2人でボコボコにするのはさすがにやり過ぎだと思った。

またある時は、友達Bの家で、数人で遊んでいた時に、AとAの父親がAの上着を持ってやってきた。そして、Aの父親がその友達Bに「Aの上着に小便かけたってのはテメェか?」とキレていた。そこで色々あったが、後で話を聞いてみると、Aの上着に小便をかけたのはまた別の友達Cらしく、Bは何もやっていないのに怒られたのだった。
この話のように、ひどい時は上着やミニカーに小便を掛けられるなど、なかなか屈辱的な嫌がらせもAはされていた。

ここまでは小学校の話であるが、俺が実際に見た以上のいじめや嫌がらせが行われていたことだろう。暴力を伴うものは勿論、菌扱いされている時期もあった。一方で、年上の友達と遊んだり、前にAをいじめていた人達と遊んだりしているようなところも見かけた。俺自身もAと遊んだ、複数人で遊んでいた中にAもいた、という状況はいくらもある。しかし、後者の場合は仲良く遊んでいたかと思えば、誰かがAをいじめだして結局Aが怒って帰ったり、泣いて帰ったりしたこともしばしばある。

中学時代は1度しか同じクラスにならなかったが、人づてに聞いた話だと、ロッカーに閉じ込められた上、ロッカーをバンバン叩かれたり上から雑巾を投げ入れられたことや、教室に入ろうとした瞬間にドアを思い切り閉められ、足を強く挟まれたことなど、小学校時代と変わらずの状況だったようだ。


Aの「スゴい」所はどれだけ理不尽な目にあっても毎日学校に来ていたことだ。大抵の人間なら間違い無く不登校になるレベルの扱いや嫌がらせをされていた。あれほど「差別」という言葉が似合う状況は無かった。AはただAであるだけで、多くの人から蔑まれ、疎まれていた。Aが良い行いをしても誰も評価しないが、Aが悪い行いをすれば誰もが非難した。Aが優先されることがあれば、Aの足を引っ張ろうとした。Aを同じ人間として見ておらず、多くの人間がAに対しては理不尽な扱いをしていた。学校の先生でさえも、積極的に彼の味方をしようとする者はいなかった。

あの状況を、本人は間違いなく「いじめ」と捉えていただろう。中2の頃だったか、1年間の締めくくりに、国語の授業で1年を振り返る575の俳句を作らされた。その後、全員の俳句を掲載した冊子が学年に配られたのだが、彼は確かにいじめられていた旨の記述をしていた。

しかし、Aをいじめていた人達は、いじめているつもりなど全く無かっただろう。この章のタイトルにあるように、彼は「絶対悪」的な存在だった。逆に言えば、彼をいじめる人間達は「絶対的正義」なのだ。いじめは悪いことである、してはならないことだ。そういう風に小学校の頃から色々な大人に言われてきた。しかし、Aという「悪」を前にすれば、誰もが「正義」の味方なのだ。

いじめ?とんでもない。
Aが悪いのだから、当然の報いだ。
と言わんばかりに多くの者がAを理不尽に扱った。

Aの味方をするような事を書いてきたが、実際A自身にも全く落ち度が無い訳ではない。学校には、かなりの回数で遅刻してきたし、授業態度も不真面目で多くの時間を寝て過ごしていた。宿題などもやって来なかった。このような状態だったため、先生達を味方をつけるようなことは絶望的だった。ちなみに、何故Aがいじめられるようになったのかはっきりは分からない。「風呂に入っていない」「歯磨きをしていない」といった噂から少しずついじめられていったような印象であったが、定かではない。まぁ実際、歯が汚く不潔な印象を与える奴なのは間違いなかった。そこで、いじめられる口実を作ってしまったのかもしれない。


先程も書いたように普通の人間ならまず、学校に来なくなるような仕打ちを受けていた。それでもAは毎日学校に来ていた。もしかしたら、学校よりも家に居る方が嫌だったとかいう事情があったのかもしれないが、どんな事をされても学校には来た。

当時は気にも留めていなかったが、今考えれば「スゴい」事だと思う。

中学を卒業してから、Aとは全く会っていない。と言えば嘘になるが、今やAがどんな大人になっているのかは分からないし、想像もつかない。 

高校1年の時に、一度大規模な停電が起こる事件があった。俺はその時、部活が終わり家に帰る途中で、何となく家の近所のコンビニに寄った。当然、停電なので店はやっていない訳だが。しかしそこで、Aと偶然会った。特に何かを話したわけではなかったが、家に帰ってLINEを見ると、Aが中3の時のクラスLINEに停電の様子を送っていた。えっと、理解出来ないと思うが、Aはそういう所がある。いじめられてはいたが、自分の存在を誰かに見てほしがるような、かまってちゃん的な所があった。クラスLINEでは「無駄な通知増やすな」と誰かに怒られていた。まぁ、当然だ。停電の様子など誰も興味無いのだから。Aは理不尽な扱いを受けていたが、ああいった空気の読めない行動や言動が周りの反感を買う部分は結構あった。中学を卒業しても、Aに対する見方は誰も変わっていないのだとあの時思った。

話が逸れてしまったが、Aは小・中学校時代の誰よりも「スゴい」奴だと俺は思う。楽しい事よりも圧倒的に辛い事・苦しい事・痛い事・悲しい事だらけの少年時代だったと思うが、それでも毎日学校に来ていたことはスゴいと思う。俺は、当時そのスゴさには気づけなかったが、もしいつか会えたら当時のA自身や周りの人達のことをどう思っていたのか聞いてみたい。




俺と彼

俺は彼とは小学校時代に何回も遊んだ事がある。俺の家から彼の家は、窓からは見えないものの、歩いて15秒で着くほど近かった。2人きりでメタルギアソリッドピースウォーカーをやった事もあれば、複数人で彼の家に集まってスマブラだったりモンハンだったりをやった事もあった。特別彼を友達だと思っていた訳では無いが、かといって別に嫌うわけでも露骨にいじめる訳でも無かった。まぁ、下に見てた部分はあったが。

A本人は分からないが、少なくともAが学校で何度もひどい目にあっていたため、Aの親は俺たち(というか地元の子全般)を信用していないようだった。
ある日、Aの家で数人の友達と遊んで、帰宅した後、AとAの母親が俺の家に来た。どうやら、Aの携帯のストラップと1000円札が無くなったらしく、俺たちの誰かがそれらを盗んだのではないかと疑っていたのだ。本当に何も盗んでないので、知らないと言って帰ってもらったが、まぁ気分は良くなかった。だが、疑って正解なのは間違い無い。学校だけでなく、放課後に遊ぶ時も、彼は理不尽な扱いを受けていたし、カードやゲームソフトを盗まれるような事もあったことだろう。

今思い出したが、Aのゲームソフトをパクってプレイしていたことがある。
ある友達が下校中に大量のゲームソフトを拾い、その中の1つを貰ったのだ。いざウキウキで拾い物のゲームソフトを開くと、そこにあったのはAの苗字だった。あれ?これAのやつじゃね?。そう思ったが、①たまたまAと同じ苗字の人のものだった。②Aがゲームを捨てた。というミジンコ並の僅かな可能性にかけて、Aの苗字が書かれたデータを削除し、ニューゲームを始めた。ちなみに、Aの苗字は珍しく、地元で同じ苗字の人はまずいないので、間違い無くあのソフトはAのものだった。

結局、謎の罪悪感に苛まれ、Aには謝罪しソフトを返したのだった。彼が落とした他のゲームの行方は…知らん。



(※2022/03/07追記
小学校6年の頃だったか、当時少しだけ流行っていた遊〇王のパックをAと一緒に買いに行った。買いに行ったというよりは、俺が勝手にAに付いていっただけだが。

当時、俺は遊〇王をやっていなかったが、何故だか無性にカードが欲しくなった。そこで、Aの買ったパックに目当てのカードが無ければ、パックの中のカードをくれるようにお願いした。AはそれにOKしてくれた。コンビニで、Aはパックを2つ買った。

当時、俺は遊〇王をやっていなかったとはいえ、カードゲームをやった事が無いわけではない。パックを開ける時のあのワクワクは知っていた。

そこで俺は、Aにパックを一つ開けさせてもらった。中には5枚のカードが入っていた。カードゲームのパックというのは、だいたい一番最後にレアカードが入っているものだ。

俺はパックを開け、1枚目から丁寧に中のカードを確認していった。すると5枚目で、なんとAの欲しがってたレアカードが出たのだ。

今でも覚えている。
「No.17 リバイス・ドラゴン」である。



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幸い(?)このカードが俺の開けたパックに入っていたことは、Aに知られていなかった。俺は何を思ったのか「あー。当たってねぇや。」とAに嘘を吐いた。

俺を信用していたのか、それとも単に愚かだったのか、Aは俺の手にあるカードを自分の目で直接確認してこようとはしなかった。俺は手に持っていたカードを、当たりのカードごとポケットにしまった。
そう、盗んだのだ。

何で盗んだのかは、よく覚えていない。あのカードが欲しかったとか、そういった理由は全く無かった。もしかしたらレアカードを実際に手にして、必要も無いのに何となく欲しくなったのかもしれない。何にせよ、はっきり言えるのは俺はリバイス・ドラゴンを盗んだということである。

恐らく相手がAで無かったら、俺は素直にレアカードを渡していたかもしれない。Aを人間だと思っていなかったのは、どうやら俺も同じだったようだ。

ちなみに、その当たりのカードは持っていても仕方なかったので、後日別の友達にあげた。

Aよ、すまなかった。)



中学生になってからは、学校内で関わる事はほとんど無かった。放課後は尚更だ。ただ、家が近いので登校時にAと会い、一緒に登校する事もあった。部活を引退してからは、俺もAも遅刻ギリギリで学校に行くことが多く、会えば一緒に早歩きで登校した。

中学を卒業してからは、上に書いた通り何をしているのか全く知らない。


最後になるが、Aの味方をした事など無いし、もしかしたら恨まれているのかもしれないが、元気にやっているならそれで良いと思う。特別仲が良かった訳じゃないので、会いたいとは全く思わないが、何をしているのかぐらいは知りたい。


ここまで書いたが、やはり彼は小中の誰よりも「スゴい」奴だ。





Aに栄光あれ。

それでは。


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