【概要】リチウムイオン電池の正極材料【解説】

今回のNoteはざっくりした概要になります。
それぞれの材料について次回以降掘り下げていきます。

主要な正極材料


現在実用化されているリチウムイオン電池の正極材料はコバルト酸リチウム(LCO)※、ニッケルコバルトマンガン酸リチウム(NCM、いわゆる三元系)、ニッケルコバルトアルミニウム酸リチウム(NCA)、リン酸鉄リチウム(LFP)がほとんどを占める。

LCO


LCOは組成式LiCoO2で表される結晶で層状岩塩型の結晶構造を持つ。現在のリチウムイオン電池が発明された時に使用された正極材料であり、John Goodenough博士らによって見出された。層状構造の間にLiをサンドイッチしたような構造となっており、リチウムが層内を移動することで可逆的な脱挿入反応が可能となる。
大まかな特徴としては高電圧、高価などが挙げられる。
(※コバルト酸リチウムは慣用名である。厳密には酸化リチウムコバルトがIUPAC名であるが、使っている人を見たことがない。)

NCM、NCA


NCMはLiNixCoyMnzO2(x+y+z=1)、NCAはLiNixCoyAlzO2(x+y+z=1)の組成式で表されるが、x,y,zの比率によって容量などの性質が変化する。NCMやNCAはLCOと同じ層状岩塩型の結晶構造を持っており、一般にLCOよりも単位重量あたりで高容量である。より高容量なリチウムイオン電池のためにLCOをチューニングした材料といえる。
大まかな特徴として高容量、LCOに対して比較的安価などが挙げられる。

LFP


LFPはLiFePO4の組成式で表される結晶である。LFPはオリビン型の結晶構造であり、LCOとは異なる結晶構造である。LCOや三元系の正極材料と異なり、LFPは安価、低容量、低電圧などの特徴を持つ。

まとめ


これらの正極材料は自身がLiを持っており、リチウムイオン電池が組み上がった状態では放電状態である。
充電時には結晶内のリチウムがリチウムイオンとして電解液中に移動する。
(実は当初開発されていたリチウムイオン電池の正極はリチウムを持っておらず、組み上がった状態で充電状態であった。)


次回の内容


次回以降は上記の正極材料について以下の視点でそれぞれ解説していく。

結晶構造
→正極材料はリチウム-遷移金属酸化物の結晶である。また可逆な充放電を可能にするのも特異な結晶構造によるところが大きい。

容量
→リチウムイオン電池の容量を決めている大きな要素が正極材料である。容量を決定する因子は結晶構造と密に関係しているため結晶構造をについて述べた後に記述する。

電圧
→電圧(厳密には反応電位)についても容量と同様に結晶構造と関係する部分が多い。それぞれの材料ごとに出来上がるリチウムイオン電池の電圧や充放電カーブ形状も異なる。

安全性
→リチウムイオン電池は当然ながら安全でなければならない。それぞれの材料ごとに電池の安全性にどのように影響するのかを述べる。

製造方法
→正極材料はさまざまなプロセスを通して製造される。製造方法によって電池の性能は変わる。また希少金属を使用することから、近年注目されている電池材料のリサイクルに大きく影響する。

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