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【カンヌライオンズ2023 視察報告_vol.2】印象に残った施策映像作品と、セミナー体験

はじめまして、DeNAデザイン本部の伊藤です。

2023年6月19日(月)〜23(金)の5日間、フランス カンヌで開催された「カンヌライオンズ 2023 国際クリエイティビティ・フェスティバル(Cannes Lions International Festival of Creativity)」に、DeNAデザイン本部から3名で参加してきました。

今回は、会場で見た膨大な作品の中から、特に目を引いた施策映像作品(FILM作品も含む)と、参加したセミナーについてお伝えできたらと思います。


今年のカンヌライオンズは70推し!

創設から70周年を迎える今年は「70」という数字のモチーフとともに、会場の至る所にロゴマークとグラフィックが展開されていました。

地下では作品たちが集結!

地下では、カンヌライオンズの華やかなイベント会場とは変わって、多くの作品を静かに集中して見られる場所がありました。実物が置いてあるスペースや、PCやタブレットが並んでいて応募作品をPC上で見ることもできました。(多くの方がここで作品を熱心に見ていました。)

では実際に現地で見た施策映像作品の中から、印象に残った作品たちをご紹介します。(順不同)

施策タイトル
①企画/制作会社(エントリー企業)
②エントリー都市名
でまとめています。

Knock Knock


①Korean National Police Agency
②Seoul

韓国では家庭内暴力(DV)が急増し社会問題となっています。被害者が加害者と同じ場所にいることが障害となり、通報率が2%しかない現状がありました。

そこで、韓国警察のシステムを活用し、日本の110番に相当する112番に電話し、特定の番号を2回タップすることで、警察が発信者のカメラを通じて状況を確認し、位置情報を追跡できるリンクを利用する施策が導入されました。この施策を500日間運用した結果、計5万1158件の通報が受け付けられたそうです。また、DV被害者だけでなく、耳が不自由な人々も利用できる通報システムとして、韓国で正式に採用されました。

施策から実際に利用されるものに繋げるのはすごいですよね。ただ、声を上げられない家庭が多くある事実も浮き彫りになり、今後どうなるのかも気になった施策でした。

Runner 321


①adidas
②Toronto

有名選手の背番号や、それらを象徴する数字ってありますよね。

3月21日の「世界ダウン症の日」を記念して、世界中の主なマラソン大会で321番のビブスを付けた選手を出場させるキャンペーンが行われました。321という数字はダウン症の人々にとって象徴的な数字であり、21番目の染色体が多い21番に由来しています。また、ダウン症のスポンサーアスリートであるChris Nikic氏も参加し、より多くの人がスポーツに参加できるように働きかけました。

施策を通して象徴的な番号として今後も使用され、adidasだけでなく、スポーツを応援している他企業でも広がっていくといいなと思いました。

Cash In Cash Out


①ELECTRIC THEATRE COLLECTIVE
②London

ファレル・ウィリアムスと、タイラー・ザ・クリエイター&21サヴェージとのコラボレーションPV。(ファレル・ウィリアムスとタイラー・ザ・クリエイターは昔からコラボレーションを行ってきたそうで、2013年発表の『ウルフ』に収録された“IFHY”など有名です。)

頭に残る曲調と、クレイ・アニメーションをフォーモーションという技法を使ってかっこよくPVとしてまとめてあり、魅力的に伝わりました。

映像といってもPVなどの応募もあるんだと会場で作品を見た際、驚きました。応募する窓口が広ければ色々な作品も集まる分、受賞するまで残る作品達は何かエッジが効いていたり、印象に残る作りだなと思いました。

Rosalia MOTOMAMI Live Experience on TikTok


①TIKTOK
②Sao Paulo

TikTokってみなさん活用しますよね。TikTokを音楽市場で一番市場価値があるものとして打ち出すために、歴史が長く、最も影響力があるラテン音楽、アーティストとタイアップしてできたのがこちらのMVです。

アーティストのアルバムをTikTokの機能を活かしてつくり、TikTokを中心に新しい音楽の形としてSNSなど世界中で話題になった作品でした。クオリティももちろん高いのですが、全体を通して見てて飽きない映像となっています。

McDonald’s, ‘Raise Your Arches’


①McDonald’s
②London

過去3年間、英国で、マクドナルドを食べることは「心地いい瞬間である」ということに基づいてCMやPRなどが創り出されていました。「心地いい瞬間である」ということをもっとユーザーに身近に感じてもらうためにアプローチをより良い形に変えたのが、こちらのCMです。

言葉や食べ物、店舗などを出さなくても眉毛を上げる "知っている"という表情だけでマクドナルドを伝える内容です。コミカルにマクドナルドのMを体の一部を使って表現しているのが面白く、印象的な映像でした。

Clash from the Past


①Clash of Clans
②Portland

ビデオゲーム「Clash of Clans」の10周年キャンペーン映像。ブランドとユーザーの関係をもっと深めるために、あえて「偽の40周年」を祝う企画として実施された内容です。

今回の動画では、フェイクで時代を超えて愛される象徴的なゲームだと感じてもらい、「Clash of Clans」を、80年代のアーケードゲーム風、90年代のレースゲーム風、2000年代のオープンワールドRPG風につくり替えたゲームも新たに用意し、ユーザーが遊べるようになっています。

嘘もここまで徹底して細部までこだわって作り上げると、元々あったんじゃないかと思ってしまいました。(20分間のフェイクドキュメンタリー、フェイクCM、フェイクモーニングショー、フェイク映画なども制作されています。すごすぎる。。。)

いかがでしたでしょうか。上記以外にも、魅力的な作品がたくさんありました。

会場にあるプレゼンシートや会場風景を見て、自分も過去に、代理店に勤めている相方と2人1組でカンヌライオンズのヤング版、ヤングカンヌライオンズに応募して「カンヌ本戦で絶対戦いたいね」と夢見てチャレンジしていた当時のことを思い出しました。

会場では、スペースごとにセミナーも行われていました。次の項目では、そのセミナーで印象深かった内容をお伝えさせていただきます。

現地でしか聞けないセミナー

先ほどは、施策映像作品(FILM作品も含む)を中心にいくつか作品を紹介させていただきました。ここからは、各会場で行われていたセミナーで気になったものをいくつかお話できたらと思います。

It’s Not Content Creators OR Adland Creatives but BOTH


広告業界の有名人Sir John Hegarty氏と世界初のチーフクリエイターオフィサーであるAshley Rudder氏の対話。

クリエイティブは広告代理店が主となって、ブランドのキャンペーンなどに取り組むことが一般的でした。しかし、クリエイターエコノミー(インターネット上で個人クリエイターが商品・サービスを提供し、収益を上げるデジタル市場)の影響で、クリエイターは自身の小さなビジネスを立ち上げ、信頼するブランドと協力することを選ぶ形になったのです。2人の過去の体験を元に、今後どういったアプローチで物事を取り組んでいくべきかここでは議論されていました。

「時代も変われば作るものも変わる」ということは思っていたのですが、制作部隊や自分がどういったポジションで働くかによって、できること、やりがい含めて考えさせられる内容でした。

左:Ashley Rudder、右:Sir John Hegarty

How Community and Entertainment are Transforming Purchasing Habits Globally


TikTokのSofia Hernandez氏とUlta BeautyのCMO、Michelle Crossan-Matos氏との対談。

「コミュニティコマース」という新しい時代(SNSやブログ、コミュニティサイトなどを活用して生活者と関係を構築し、そこから自然に購買につなげていく手法)では、文化、エンターテインメント、ショッピングが掛け合わさり、製品の発見から購入までを1本の旅のように進んでいます。その中で、日頃からどのように生活者に対してアプローチや関係を築いていくかをここでは聞けました。

写真では、生活者をAIに置き換えた映像も流れていました。いち消費者として、企業との付き合い方や、こんなことまで考えているんだなと勉強になりました。

Unimagined Cultural Solutions - A Global Journey into The Next Creativity


アジア、米国、欧州、東洋と西洋、および他のさまざまな国々から seemingly unsolvable(解決不能に見える)な課題への代替解決策を紹介し、議論していました。ご当地ローカル発信の可能性を深掘りする内容は、英語が苦手な僕でもわかりやすく内容が頭に入ってきました。

参考例として、今回カンヌでも賞を獲得していた「シェルメット」についても触れられていました。シズル感があるプロダクトで、僕も使ってみたいと思いました。

F*CK AI, Let’s Go Analog with David Shing


AIの勢いに屈しないように、創造の領域の移り変わる流れをディスカッション形式で実践を行ったセミナーでした。人間のクリエイティビティーの本質的な意味を考え、勢いがあるAIに対してどう対処していくかを、David Shing氏と一緒に体験する内容でした。

他のセミナーではスピーカー同士のやりとりを聞いたりするものが多い中、David Shing氏は見た目も独特、内容も他のセミナーとは違った参加型のイベントだったので、より印象に残りました。

最後に

時間が経つのはあっという間で、あれだけ長かったカンヌ視察も終わってしまいました。今回の視察が僕にとって初めての海外体験だったこともあり、色々と不安でしたが、2人の先輩方にも支えていただき、いい意味で日本と全然違った文化に触れられ、とても良い経験をさせていただきました。

バスや電車での移動の間に、僕はある曲をずっと聞いていました。ミッシェル・ポルナレフの「Love Me, Please Love Me」という曲です。僕が小さい頃、夏の暑い日に父親とドライブに出かけたとき、車でよく聞いていた曲でした。当時「この曲は何語なの」と聞いたところ、「フランス語だよ」と教えてもらったのを覚えています。曲の始まりの繊細さなども含め、印象に残っていた曲でした。移動中や海沿いを歩きながら聞いていて、この曲そのものがフランスを表しているのだと思った曲です。

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