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#8 1991年『世にも奇妙な物語』ほかテレビドラマを多数監督

『世にも奇妙な物語』は、深夜枠でやっていたのがゴールデンに昇格、フジテレビの精鋭プロデューサーの石原隆小牧次郎両氏の思い入れたっぷりの企画だ。一時間に三本立てというフォーマットなので一話あたり15分くらい。そのため内容もテンポがよくなり、一本の撮影も二・三日なのでタレントもおさえやすく、視聴者にとっても製作者にとっても大変お得な番組なわけだ。いまも毎年製作され続けているということは、フジテレビにとって本当に優秀なコンテンツとなったわけだ。様々な製作会社が企画を出していたが、アイディア勝負でよほど芯がないものでないと通らなかった。もともと海外テレビの『ミステリーゾーン』をベースにしているわけで、ストーリーテラーはタモリさん。この年わたしは矢鱈タモリさんと仕事することになる。
わたしと明石プロデューサー大映テレビも色々な企画を出したが、我々のものがまず採用されたのは『廃校七番目の不思議』だった。廃校のうわさの七不思議をひやかしに行く無軌道な若者グループが、おそろしい目にあうが、なにもなかった。と、思ったら…。というもの。

フジテレビ側はなるべく定番のものは敬遠していたようだが、わたしのやったものは必ず型破りのもの。だから生き残ってきたわけだが。また、これは映画の『学校の怪談』の前だから、先見の明もあったわけだ。
主演は『ウルトラマン』のキャップ、『仮面ライダー』のおやっさんこと小林昭二、たのきんトリオの一角、野村義男ことよっちゃんに決まった。あとは『イコちゃん』の田山真美子、『メガロマン』の北詰友樹ら。本物の廃校の夜のロケはほんとこわかった。憧れの科学特別捜査隊のムラマツキャップ・小林さんには、空き時間にいろいろ貴重なお話を聞いたが、この当時小林さんはフジテレビの『とんねるずのみなさんのおかげです』のコーナー企画『仮面ノリダー』に出ていた。直前に放送されていた本物の『仮面ライダーBLACKRX』には出ないで。「なんでですか」と聞くと、「いまは、タカとノリのこれが本家ライダーより面白いんだよ」とのお答え。さすが、ウルトラマンとライダーの要を担った人だ。時代はライダーでなく、ノリダーだったのである。
最後に特殊メイクでのっぺらぼうを出したが、まだまだ技術的にきびしいものだったが、なんでもCGでやる現代とは違った味になっている。
残りの二本は、高嶋政伸主演の『黒魔術』伊藤かずえ主演の『峠の茶屋』。監督はそれぞれ一瀬隆重植岡喜晴という、わたしの同世代の8ミリ出身監督というのも、この回はびっくりだったろう。
本作の放映の視聴率は21・5%だった。すぐに次の企画をやることにする。
同時期、関西テレビの深夜で「ドラマドス」というドラマ枠があり、ここはプロデューサーの田中猛彦さんという名物男がOKならば、なにをやってもいいといういい枠だった。
ここではアイドル西野妙子と、『高校教師』に出る前の持田真樹を主演にして、『悶絶!!学園七不思議』というタイトルにしたまたもや七不思議ものをやった。『世にも奇妙な物語』で七不思議ものを直前にやってるのに、この節操のなさがテレビなのだ。

『世にも奇妙な物語』は、次に獣神サンダーライガーを主演にした『覆面』という話をやることになった。『タイガーマスク』の漫画版の最終回をベースにして、死亡した人気レスラーの替え玉がおこす奇跡の話。前作よりさらに変化球だ。ライガーは全盛期の人気で、後楽園ホールで撮影用の試合をやるとエキストラを募集したら、あっという間に満員となった。
まだ無名の天山広吉をマスクマンの敵役にして、本番さながらの迫力のシーンが撮れた。睦五郎さんと、『ウルトラマンレオ』のスーツアクターで殺陣師の二家本辰巳さんという渋いところをオーナーとトレーナーとして配した。
これは歴代の『世にも奇妙な物語』の最高視聴率をとった回になり、たびたび再放送もされている。

この年は『タモリ倶楽部』にはじめてゲスト出演した。タモリさんを祖師ヶ谷大蔵の円谷プロ本社に案内するという超マニアックな回だ。円谷のぼる社長とタモリさんの対話にわたしが入り、いまはなき円谷プロの郷愁の内部が記録できた貴重な回だ。ウルトラファイト的なシーンもあり、ラストは歌手もやっていた円谷社長がタキシードを着て怪獣倉庫で持ち歌『素敵な出逢いをありがとう』を歌うという、完全にどうかしているものとなった。

『コンプティーク』の連載はこの年「道場破り!」となり、獣神サンダーライガー・ショーコスギ・堀辺正史・佐山サトル・森田健作・豊田泰光・真樹日佐夫・前田日明・安岡力也という濃いメンツで、いずれも貴重なインタビューとなっている。

この時期、相原コージ竹熊健太郎が原作のコミック『サルでも書けるマンガ教室』がヒットしていたが、それをテレビにするという企画をTBSで撮った。『サルでも撮れるTV番組』である。

竹熊健太郎役に船越英一郎相原コージ役に城みちる。船越さんはまだ「二時間ドラマの帝王」になる前で、わたしは船越さんの主宰する劇団の役者にもよく番組に出てもらい、いいおつきあいだった。TBSのプロデューサーのRさんがこの番組にはノリノリだったが、オンエアしたあと編成から飛ばされてしまい、本作のあまりの出来のひどさのせいかなと思ったが、たまたまだったようである。

泉昌之原作のマンガ『豪快さんだっ!』をテレビ化した『豪快さん 嵐のカツ丼』も製作監督。これも関西テレビのドラマドスの枠だ。豪快さん役は、安岡力也さん。まさにはまり役だ。豪快さんがレンタルビデオ店に行き、「センズリがしたいのだが、よいビデオはあるかね?」というセリフがテレビ的にどうかということになり、監督なにか変えてくださいというので、「ではズリネタにしてください」と言ったが、テレビ局でサラリーマンの人がセンズリだのズリネタだの言って会議しているわけだから、笑った。加藤礼次朗の実家の早稲田の蕎麦屋・三朝庵で力也さんがカツ丼を食べるシーンを撮影したが、偶然にも永井豪先生がいらしていて、急遽特別出演していただいたというミラクルもあった。笑ったのが六本木の路上ロケで、撮影していたらヤクザがからんできて、そこに力也さんが走って行った。こりゃあ警察沙汰かと肝を冷やしたが、ヤクザが「力也じゃねえか。お前なら当然いいよ」と言った。ヤクザが力也さんと友達でよかったというわけだ。
豪快さんがレンタルビデオ屋を買い取り、ビデオをすべてトラックに回収するというシーンを作ったが、それはふんどし一丁の野郎どもが運び出し、意味不明の水垢離を店の前でやるのが我ながら狂っていると思った。

『世にも奇妙な物語』の三本目は『驚異の降霊術』だ。原作は清水義範さんで、主演は柴俊夫さん。ほかに石井富子玉川良一伴直弥さんたち達者なベテラン俳優が共演。シャーロック・ホームズの霊を呼べるというイタコを取材する番組で、嘘を暴こうとする推理作家とイタコとの意外な結末。柴さんはもちろん実相寺監督の『シルバー仮面』の主演だ。ホンを柴さんと一緒に現場で直したりして、ケッサクなものになったと思う。

ドラマドスの枠をこの年もう一本、『不滅の酔っぱらいOL』を撮った。主演は向井亜紀高田延彦との結婚前で噂になっていたが、撮影時に高田のジャンパーを着ていたのでバレバレだった。酔っぱらっていろんなものをもってきてしまうOLが遭遇するバカ全開の話で、『豪快さん』に出したふんどし軍団をまたも出演させ、メチャクチャなものになった。オチはOLの正体は酒でなく鮭だったというもの。よくこんな企画が通ったものだ。この作品でヤクザ役で『帰ってきたウルトラマン』きくち英一さんにはじめて出てもらう。新マンの大ファンだと言うと、翌日貴重なスクラップブックを持ってきていただいて見せてもらった。これ以来わたしの作品の常連となっていただいている。

そのほか、マンガ雑誌『ガロ』のCMを撮ったり、ビッグコミックスピリッツの『伝染るんです文化祭』にゲストで出たり、プライベートではで浜名湖11キロマラソンをやったり、気力体力ともに充実していた。

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