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【超短編小説】畳穴(たたみあな)

畳の上にパイプ椅子を使っていたために畳に穴が開いてしまった。新しい椅子を買ったはいいがその穴にはまってしまい使い勝手が悪い。仕事中いつでも前のめり状態になる。バランスが悪いので畳を修理することにした。

穴をのぞき込むと思ったより深い修理キットで治るのだろうか。
そもそも畳の修理キットってあるのだろうか。
大きなため息をついてしまう自分がいる。

畳の穴に指を入れたその瞬間!
目の前が突然真っ白になり意識が混濁した。
一瞬何が起きたかわからなかった。

大きな城下町の入り口に彼は立っていた。
目を開けてみるとそこには中世のような建物。
「異世界転生」?思わず思ってしまった。

しかし違うような気がしてきた、
「異世界の神様」お会いしていない。
チートスキルとかくじ引きとかしてもらっていない。

言葉も特に困らない車に引かれそうになった。
「バカ野郎道の真ん中歩いてるんじゃねー!!」怒られてしまった。 
輪が4個つながっているマークの車引かれそうになった。

現代のようだ乗っていたのは外国人のようだが日本語が堪能なようだ。
取敢えずせっかっく来たのだから見物でもしていくことにした。
この適用力の速さ異常ともいえるが考えてもしょうがない。

目的もないのも困りものなので畳の修理キットを探すことにした。
この中世の街並みでは期待することはできないだろう。
あの開いた穴の充填剤を見つけることにした。

門番が受付に誘導してくれた記帳をすると入国カードを発行してくれた。
「ようこそ、TATAMIへあなたが欲しいものが見つかるといいですね。」受付の人はそう伝えて送り出してくれた。渡されたガイドブックには「TATAMI国の歩き方、簡単なアルバイトもあるよ。」

どこも人手不足なのだろうか、そもそもお金持ってなかったな。
ガイドブックは便利のもので「アルバイトの見つけ方はギルドに登録しましょう」世界観で色々なものが混ざっているような気がするが「日払い」40過ぎてアルバイト可能とはありがたい。

こんにちは、アルバイトギルト受付嬢から簡単な説明を受けることになる。
「迷い人さんですよね。門番さんから突然城下町の入り口に現れったと聞いています。」「学んだことを知識を手に入れたとか言いますよね。折角だから使ってくださいね。」受付嬢は突然この国の目の前に現れるの人のこと「迷い人」と名前が付くとのことだった。

「入国カードを貸していただけますか必要な情報を登録します。」受付嬢に入国カードを渡した。「まず初心者さん定番は薬草採取、草取り、掃除です。迷い人さんはウエダさんですね。」「ウエダさん取敢えず薬草採取から始めましょう。100%天然素材って喜ばれるんですよ。」

どこの世界も天然100%素材は喜ばれるんだな。
「薬草採取マニュアルです。私の手作りですよ。」
イラストは詳しくかわいいキャラも載っている。

薬草は手間がかかる分1本TA$3,000~TA$5,000の収入で(TA$1=1円)
例の薬草採取マニュアルにはMATUの根本付近に生えている。と書いてある。松茸採取したことはないが松茸を見つける感覚かな。

結局薬草採取を行いTA$50,000を手にすることになった。全て入国カードで管理されている。入国カードには迷い人→初級アルバイト(迷い人)と変化していた。なんだかんだと時間がかかりもう夜になってしまった。
自分の世界に戻ることができない。探すことが増えてしまった。

換金ついでに宿屋とかこの国の生活について聞いた。
宿賃は7日でTA$3,000と言われた。激安!!
最低一人暮らしをするならTA$230,000あれば十分であり日本に近く、日時は地球に近いようだ。

アルバイトは明日は休みにして明後日に入れることを伝えた。
「薬草採取か雑用ですね。どちらか決めておきますね。」受付嬢は答えてくれた。畳の補修材を探すことに雑貨街に行くことにした。

雑貨店ではなぜは「和」のコーナーがあり日本によく似た商品が売られていた。醤油とか味噌とか米とか日本酒、なぜかワインとどめは車を展示販売されている。恐るべし異世界。。。
残念ながら畳の補修材そのものは見つけることはできなかった。何か代用品をさがすか別の方法を考えることにした。

アルバイトギルドに翌日の仕事を確認しに行った。
「雑用になります。部屋の片づけや掃除をしてほしいとの依頼です。」
「TA$20,000の当たりはずれの激しい案件です。」と受付嬢詳細は入国カードに転送しました。

「探していたものは見つかりましたか」
雑貨店の大きさの驚きと見つからなかったことを伝えた。
「雑貨店は一番大きいところをご紹介しました。見つからなかったのは残念ですね」「もしかしたら今回のご依頼している方からヒントがもらえるかもしれません。」

「元職人の養老院オールドビルダー205号室の清掃と整理整頓」これが依頼だった。帰還の方法とかを考えても思い浮かべても思い浮かばないし何もしないと飢え死にしそうだ。
畳を補修する方法を見つけるの優先順が下がってきたがしょうがない。

朝の7時に養老院の受付に挨拶をして道具を借りて院内の簡単説明を受けた。205号室につくまでに養老院の人とすれ違ったらご挨拶をして頭を下げること、話しかけられたら清掃のため失礼しますと言ってその場を去ること、礼儀作法を大切にしているところのようだ。

205号室はウンダさんとゆう55歳の元迷い人の配管工さんが入居している。
気さくな人で質問されたことには答えてあげてほしい。と養老院の受付でお願いされた。道具の借り受けや、説明、院内の方とのあいさつで8時にウンダさんの部屋に到着した。

ウンダさん部屋は15畳ほどの1LDKまま広いそんなに物はないがまあそこそこ汚れている。ウンダさんは気軽に話しかけてきてくれた、掃除の段取りや方法はウンダさんが指示出しをしてくれる。その間にウンダさんから掃除の依頼でちょうど迷い人が来たなら紹介してほしいと言っているそうだ。

ウンダさんはこの世界に何しに来たんだいと話しかけてくれた。
畳のへこみと擦り切れを治す為に穴に指を突っ込んだら転送されたらしいと伝えた。
ウンダさんは笑いながら君は畳の穴か私は煙突に首を突っ込んだ瞬間転送されたよ。と笑っていた。

部屋の物を全てだし天井から床までの掃除もひと段落したのでお昼を取ることになった。
ウンダさんが院内の職員が食堂に用意してあるから一緒に食べましょうと誘ってくれた。ご都合主義で申し訳ないが「無料である」ウンダさんからこの養老院は知識の伝授を行うと機関でもあり他の部屋にも掃除の手伝いをしているアルバイトギルトから派遣された人や学生もいることに気が付いた。

食事中にウンダさんはこの世界のことを教えてくれた。これも知識の伝授の一つとのことだった。
元の世界に戻った時に考えなければならないことは2つあるかもしれないね。ウンダさんは食事が終わり部屋に戻る廊下で話してくれた。
その畳を補修するべきなのか、その畳の上に板を引いて急場をしのぐのか、見積もりを取ったほうがいいじゃないかな。なんと的確なアドバイス。

午後は荷物を戻し水回の掃除を行い4時ごろには完了した。
ウンダさんに元の世界に戻る方法はないものだろうかと聞いた。
それなら帰還の森にある帰還の泉に行くといいよ。ギルドの嬢ちゃんは教えてくれなかったのかい?

その場でギルドの受付嬢からもらったハンドブックには「迷い人」項目には書いていなかった。
ウンダさんがギルドの嬢ちゃんに気に入られたのかな、兄ちゃんはちゃんと仕事してくれるしいい人だもんなと大笑いしていた。
ウンダさんは冗談はさておきそのハンドブックはその人が強く帰りたいと念じないと表示あされず、人に聞くことにより補うことになる。と諭された。

もう一度帰還をイメージしてハンドブックを見てごらんと言われ「迷い人」のページを開けると帰還方法が表示された。この世界はイメージが優先されるようだ。ここでは元の世界より年齢より若くなれるし、確かに鏡見たときに30歳ぐらいに若返っていたな。

ウンダさんと養老院担当者に依頼完了のサインをもらいアルバイトギルドに戻ることにした。養老院担当者は追加報酬出しておきました。誠実な仕事ありがとうございます。ウンダさんの指示に従っただけですよと伝えると、指示を的確にこなすことは何より難しく誠実さに感動し報酬をお渡しします。
もう断れないので素直にいただきます。と伝えた。

アルバイトギルドに戻ると受付嬢が寂しそうな表情で「お疲れさまでした入国カードをお願いします。」と言われ渡した。
「ウエダさんは元の世界にお戻りになるんですよね。」
畳の補修の件も片付いたし、帰還の方法も分かったそのとおりと伝えた。
「分かりました。知識と使い方を習得されたんですね」
そんな大げさな話になるのか。ここは合わせて「そうだ」と伝えた。

受付嬢があまりにも寂しそうな顔するので「帰還の泉」場所の確認と観光で3日後にすると伝えると、
「わかりました、今夜の身に行きましょう!!」と誘われてしまった。人生初の逆ナン(異世界でだけど)
そもそも、この街のことはよくわからんし飲み屋に行くのも悪くないだろう。お礼もしないといけないな。

その夜は、一次会はギルド人たちとプチ宴会、あとは受付嬢に引っ張られ町の繁華街に行くことになった。
朝宿屋で起きるとなぜかギルド受付嬢が横で寝ていたが彼女が起きてからは特に何事もなかったように会話が進んだ。
帰還の泉では帰還者そして送るための立会人が必要で今回そのギルド受付嬢が担当になることを教えてもらった。

ついに、帰還する日がやってきた。畳穴に指を突っ込んだめちゃくちゃな世界観の異世界転生も終わる。
ギルド受付嬢が立会人だ、機関の泉には女神がいるらしいのだが帰還の準備中で顔出してこない。
何だろうこの人不足感と超不慣れ感若干焦る。嫌な予感しかしない。

ギルド受付嬢も手伝いに行き何とか準備完了したらしい。
「元の世界に戻るようにセットできました。迷い人ウエダよ帰還の泉ドリの名においていくつか特典を付けてお返しします。」
「ウエダさん元の世界でもお元気でいつか私を見つけてくださいね。」とギルドの受付嬢が伝えてくる。
え??なんで、多分無理でしょう。

そして、無事に現実世界に戻ることになりました。
目を開けると「絶対病院だよ」とゆう天井、天涯孤独なウエダが倒れているのを職場の同僚が見つけたそうな。
鏡を見ると30代前半だね、テレビを見ると明らかに15年は巻き戻ってるよね。これが特典ですか・・・

検査も無事に終わり「過労ってことで」物事は片付き部屋に戻り、
畳穴を見ると畳穴は開いている。テーブルの上には入国カードが置いてある。でも元の世界のようだ。
ドアのチャイムが鳴る。扉を開けると目の前にギルド受付嬢
「こんにちは、回復おめでとうございます。」

「ウエダさん私この世界不慣れなんです。色々教えてください、良ければ置いて頂けませんか。ちゃんと戸籍は北海道にあります。」
え・・・なんで北海道・・・
「ウエダさんの年齢も若くしましたし、断る理由ありますか」ギルド受付嬢

受付のお嬢様、お名前聞いてもいいですか。
「ヤノ・マリアです。種族は天使です。」
はい、天使来ました。神じゃないです天使です。あまり深くこの先を聞くのはやめておきます。
「はい、ウエダさん専用の天使です。これからも死んでからも転生してからもよろしくお願いいします。」
天使が押し掛け女房って・・・

ウエダは少し変わったパートナーと人生を魂レベルで手に入れたらしい。

ウエダはレベルが上がった。
ウエダは天使の加護が付いた。
ウエダは悟りの境地を手に入れた。

ウエダは幸せを手に入れた。(強制補正:∞)

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