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【小説】あるある派遣社員⑤事前面接

第4章:事前面接
登場人物
主人公:山野五郎、派遣社員、35才、普通の社会人
現場に入り顧客の望むものを生産するのが仕事
(事前顔合わせを乗り切り配属先に行く。)

営業担当:山下新一
顧客にスタッフを紹介して現場に着任させるのが仕事。

出向先社員:鬼瓦丸渡
現地に人を入れるのが仕事。

出向先課長:谷間忠雄
現場での命令指揮者。

事務手続き、研修など入社の儀式が終わり部屋の片づけをしているところ、急遽に出向前の会社に最終面談が行われることになった。

面談の前に頭の整理を兼ねて、営業人事担当の山野さんから相関図を書くことを勧められた。サンプル版と渡された資料には商流の整理がついたらしくある程度書き込んであった。案件の詳細は書いていない。

就業場所←出向先(親会社)
       |
     出向先(子会社)   
       |
    グランドゴールデンスタッフソリューションネクスト(派遣会社)
    案件紹介会社
    案件紹介会社
    案件紹介会社
    叔父  (紹介者)
    山野五郎(業務委託)ランクF
   
出向先(子会社)はグランドゴールデンスタッフソリューションネクストの同列に5社抱えている。

仕組み上最下層からランクFのスタートになる役職は関係ない。信用を勝ち取りランクを上げる必要がある。事務手数料として上流会社は5%~20%の利益を手にしているとの説明は受けている。

当日は本当に適性があるか確認のため顧客から事務所の近所で営業の山下さんと打合せをしていた。

山下
「山野さんご足労かけて申し訳ないです。特徴のあるお客様なので私のほうから一言かけます。担当の方は鬼瓦さんといいます。鬼瓦さんが山野さんに話しかけたら基本的には私は話をしません。脇にはついていますので大船に乗った気になって話をして下さい。」

山野
「山下さん、質問したいのは山々ですが過保護的な面接と思えばよいでしょうか。」

山下
「はい、過保護的な面接です。研修の資料は復習しましたか?」

山野
「コミュニケーションを会社でドリルしてきました。」

山下
「いいですね。是非活用してください。では、行きましょう。」

山野
「はい。」

事務所に入ると入り口近くの喫煙所の煙が舞い上がっていた。

鬼瓦
「山下ちゃんお久しぶり最近どう?」

山下
「鬼瓦さん先日面談まで頂いたのに断らせていただいて申し訳ありません。」

鬼瓦
「山下ちゃんところが抜きすぎてんだよ(笑)」

山下
「鬼瓦さんのお言葉を励みにがんばります。」

鬼瓦
「ま、みんな生活しなきゃいけないからしょうがないよね。」

山下
「今回、ご紹介いただきますスタッフの山野五郎です。」

山野
「はじめまして、山野五郎と申します。」

鬼瓦
「おまえさ、名前なんだっけ?まいいや。」

山野
「お名前は鬼瓦さんでよろしいでしょうか。」

鬼瓦
「そんなのいいよ!なんだお前、まいいや。」

山野
「山野五郎と申します。」

鬼瓦
「分かった分かった。お前は、広告の何かやったことはあるのか?名前覚えないのは馬鹿にしているわけじゃないよ。また会えるかわからないからさ、覚えるの無駄でしょ。まいいや。」

これは、20年ほど前に流行ったとされる伝説の圧迫面接。人にプレッシャーを浴びさせそれに耐えて初めて仕事が出来ると認識されるという。
今でもでもあったとは、ここは正直に答えて。

山野
「広告の何かと言いますと?」

鬼瓦
「だから広告知ってるのか?」

山野
「広告媒体は存じ上げていますが、業務となると存じ上げません。ご依頼いただいた内容は現場で変わるとお話しいただいてました。」

鬼瓦
「はぁ、広告の仕組みくらい知らないでどうするの?インターネットあるでしょう。お前のその手のものは何か?電話しかできないのか?調べられないのか?バカなのか?あ?まいいや」

終わった。こりゃ無理だ。部屋の墨にいる山下さんに話をして別の案件を探してもらうしかないなぁ。帰り支度をしようと席を立とうとすると。

鬼瓦
「山なんとかだっけ人の話聞かない奴だなぁ。。」

山野
「山野です。宜しくお願い致します。」

まだ続くのか圧迫面接。。辞退宣言するか。

鬼瓦
「やる気があるのか聴いてんだよ。」

山野
「あのう、努力はしょうと思いますが、、、」

鬼瓦
「努力・・・馬鹿にしてるの」

山野
「いや、辞退を、、、」

鬼瓦
「お、いいねー、今から事務所に行って、課長にお会いしようか。ちなみに一次面接通過ね。」

山野
「あの、辞退させて、、、」

一次面接通過?!やっぱり何か嫌な予感がする。

鬼瓦
「実は俺人事の決済件ないのよ。これから会う課長と話して受けるか辞退するかは決めてもらえばいいよ。山・・くんは、やる気はあることだし」

山野
「営業に確認してもいいですか?」
(殺意が沸いて来た・・・)

鬼瓦
「山下ちゃん奥にいるよ。俺超多忙だから早く話しつけてね。」

山下さんに近づいていくと穏やかな表情をしていた。

山下
「山野さん研修の成果出てますね。圧迫面接時に使う『スキル睨み』良かったですよ。あと、コミュニケーションも素晴らしいですね。この調子で課長さん面接行きましょう。お名前は谷間さんです。」

山野(これは、面接受けるしかないようだな。)

山下
「鬼瓦さんお待たせしました。山野は是非この案件物にしたいと言っています。」

山野
「そのようなことは一言も言っておりません。」

鬼瓦
「いいね。ちょうどついたし、確認したいことは課長の前で話を聞こうか。」

山下
「山野さんここでも、自分が先行して話をしますから挨拶されたらお話しをしてください。」

山野
「な?!」

扉の中を見ると面接官の席がひな壇になってる。下段5名、中段3名、上段1名。笑をこらえるのがきつかった。

鬼瓦
「谷間課長面接お願いします!!」

山下
「グランドゴールデンスタッフソリューションネクスト(GSN)営業の山下、スタッフ山野入ります。」

ひな壇上段の男性が口を開いた。

谷間
「山下さん先日もありがとう決まらなく残念だったよ。」

山下
「申し訳ございませんでした。」

鬼瓦
「今回は物になるかどうか分かりませんが山・・くんです。」

そろそろ、忍耐の限界かな。

鬼瓦
「お手元にスキルシートをお渡しします。」

事務担当の女性が3人資料をひな壇のメンバーに渡している。

谷間
「鬼瓦くん。私が話しても良いかな?」

鬼瓦
「勿論です。」

谷間
「はじめまして、谷間です。」

山野
「はじめまして、山野五郎と申します。」

谷間
「山野くん今回の業種は初めてかな?」

山野
「はい。」

谷間
「やる気はあるの?」

山野
「もちろんです。ですが事前面接でお断りするか考えていたところです。」

谷間
「鬼瓦くんとは後で話をするので、いったん私の話を聴いて貰えるかな?」

山野
「はい、大変失礼致しました申し訳ありません。」

谷間
「いいえ、こちらも切羽詰っていてね。本題に入るけど進捗管理したことある?」

山野
「建築現場やコールセンターの構築、IT関係で進捗管理業務しておりました。」

谷間
「仕事に関してリーダー業はどのような認識を持っていますか?」

山野
「状況に応じて対応する必要がありますが、顧客の目的をメンバーの皆さんに遂行して貰うように働きかけるのが勤めと考えております。」

谷間
「いいね。彼で行こう本当は決め手はいけないのだけれど君決めた!!」

山野
「・・・・」

普通に会話してくれる人がいる!このあとは、淡々と面談が進んでいった。スキルシートを確認してどうやら、「スペシャルコミニケーションプログラマ」と進捗管理やリーダーの経験があったかの確認したかったとのこだった。

個性豊かで仕事に真面目な人達が多いことを聞かされて現場に入ることになった。問題が一つある。「個性豊か」何故だろう、「嫌な予感」しかしない。

谷山
「山野くんいいじゃない考え方もしっかりしてるし、安心感もあるし、今いるスタッフ皆を盛り上げていけそうだ。」

鬼瓦
「いゃー、谷間課長、彼は本当に筋が良いんですよ分かるなんて流石ですね。」

おいおい、15分前にあったばかりだよね⁈これが社会人のスキルなのか⁈

鬼瓦
「山野、これにサインしろ!!」

山野
「山下さんどうしましょう。]

山下
「山野さんサインしちゃいましょう!!」

サインした後に研修担当の太田さんにじっくり考えるように言われていたのを思い出した。

谷間
「山野君に最初の依頼は現場に秩序を入れることです。」

山野
「え、秩序?!」

次回に続く・・・


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