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ランニング学会講習会:運動生理学

今年、ランニング学会に入会したので、認定指導員資格取得のための養成講習会を受けてみた。

今回は伊藤静夫先生の運動生理学。オンラインの講義動画を見て、オンラインテストを受けて、オンラインディスカッションに参加する形式。受講者の質問に最新の論文を交えて詳しく説明して頂いた。オンサイトの実技指導を含めて全8回で1万円。会員ならではの素晴らしい特典。

運動生理学で特に印象に残ったのは次の7点。
1.行動性体温調整がとても大切
 犬は発汗ができないので夏場の暑い時は動かない。つまり、人間も暑い時は無理をしない。自分の感覚を信じて無理をしない、指導者は無理をさせないことが大切。夏場にパフォーマンスが落ちるのは、脳がブレーキをかけているから。

2.長距離ランナーも低糖質高脂質食が重要か?
 2023のNoakesらの論文[1]では、今までの常識と反して、長距離ランナーにとって大切なのは低炭水化物・高脂質(LCHF)食だと示唆している(注1)。これは、議論の余地があるので、食文化や自分で工夫することが大切。
 個人的は腸内フローラが大切だと思うし、ランニング中にはエナジージェルなどやエイドで補給できるので、カーボローディングは必要ないのではないかと思った。
(注1)論文[1]を読むと、LCHF食への適応により運動強度のクロスオーバーポイント(炭水化物から生産されるエネルギーと脂肪から生産されるエネルギーが同じ)がVO2maxの80%以上にシフトされる。つまり、高いVO2の運動でもより脂肪からのエネルギーが使われる。さらに、最大脂肪酸化能力(FATMAX)も向上する。

3.レース中の水分はほどほどに!
 水分は摂らないと脱水症状になるし、摂りすぎると低ナトリウム血症になり、最悪死に至る。なお、エリートランナーはレースの脱水率が8%程度もある。市民ランナーは数%が目安。これも自分の感覚を信じて給水するのが良いとのこと。

4.夏場はプレ・クーリングが大切
 夏場のマラソンではプレ・クーリングをして、深度体温を下げるのが極めて重要。プレ・クーリングにはアイスジャケットが有効。個人的には、アイスバス、水風呂、アイスラリーなども有効だと思う。昨年の北海道マラソンでは、プレ・クーリングをしたので、それほど暑さを感じなかった。

5.ベストタイムがでる気温は?
 マラソンでベストタイムが出るのは気温10℃から17.5℃。昔からいわれていたが、最近の論文でも検証された。タイムを狙うなら冬場の大会。

6.体の小さな選手が有利!?
 体の大きな(体表面積/体重)ランナーは放熱効率が悪いので、夏場は体の小さな選手が有利。野口選手とラドクリフ選手の例で説明あり。

7.30キロの壁を破るには!
 マラソンで30キロの壁を破るには、オーバーペースにならないLTスピード以下で走るのが大切。LTスピードはトレーニングで向上できる。

参考文献
[1] Noakes T. D., et al. "Low carbohydrate high fat ketogenic diets on the exercise crossover point and glucose homeostasis," Frontiers in Physiology, Vol. 14,  https://doi.org/10.3389/fphys.2023.1150265 (2023)


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