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時代劇ダシでいただくアクションアイドル映画鍋「忍者武芸帖 百地三太夫(1980)」

 エーハイ、ヨロシクオネガイシマス。今日はですね、1980年当時の旬の具材をふんだんに使った鍋料理ね、これをやっていきたいと思います。

 まずはダシを取りますね。東映時代劇の1980年ものです。
 これね、当時は10年か12年ぐらい使われてなかったんですけれども、「柳生一族の陰謀」が大当たりしまして。ワッとこう時代劇の機運が高まったんですが、あらぬ方向にエネルギーが噴き出して猿飛佐助が宇宙人になっちゃったりする、そういう時期のものですね。

 では最初の具材入れていきますね。ハイこれです、JAC。ジャパン・アクション・クラブ。今はエンタープライズって言うんですか? 千葉ちゃん率いる命知らずのアクション野郎どもですね。「柳生一族の陰謀」でも大変美味しゅうございました。時代劇のダシと合わせると新鮮な旨味が出るんですね。

 次これですね、カンフー映画。アレ? そんな妙なお顔なさらなくても結構ですよ? だってホラ、ジャッキーフィーバー真っ最中ですよ1980年といえば。ドランクスネーキークレージー。旬でしょ?

 いい感じに煮立ってきましたね。いよいよメインの具材です。

 アクションアイドルHIROYUKI SANADA、これをまるごと入れちゃいましょう。どうですか、この甘いマスク、新鮮な筋肉。この時期のHIROYUKIはJACにも所属してますからね、互いに引き立てあって大変美味しいですよ。さっと火を通す程度で結構ですからね。

 ハイできました、こちらになります。

「忍者武芸帖 百地三太夫」です。さっそく試食していきましょうね。
(ネタバレあり)







 羽柴秀吉の命を受けた不知火将監(千葉真一)の策謀により、伊賀ニンジャ・百地三太夫(石橋雅史)はヤミウチ死、クランは壊滅。三太夫の遺児・鷹丸をはじめ、幼い子供たちだけが僅かな生き残りと共に逃げ延びた。しかし鷹丸は追い詰められ、隠し金山の地図を秘めた短刀もろとも崖下の海に消える。

 アーイイですね。一口目から濃厚なJAC味が出てます。
 ホラここ、ヤミウチ部屋の左右から槍が突き入れられますね、ブスッと。すると三太夫、その上に乗っちゃう。新たな槍が左右から来る。またその上に乗る。槍が来る。乗る。どんどん登って行きます。

 対する将監(千葉ちゃん)はというと、二人の側近ニンジャを肩に乗せてニンジャトーテムポールで追撃します。もうこれ、意味とかはどうでもいいんですね。こんなアクションができる。できるならやっちゃう。JAC独特の歯応えです。

 次はですね、鷹丸が母(野際陽子)の自害を目の当たりにするシーン、これをいただきましょう。時代劇らしいこってりした情念味ですね。
 でも全然胃にもたれませんでしょ? その後に来る音楽がですね、完全にアイドル映画のそれですから。全編通してフュージョン系の、まあ大変に軽い口当たり。自宅でいただいてますとね、ワイフが聞いてくるんですよ「別の映画始まったの?」って。ハハハ。

 十余年が過ぎた。明国に流れ着いた鷹丸は逞しい若者(HIROYUKI)に成長して、豊臣の世となった日本に帰ってきた。

 スミマセン、この部分ちょっと食べにくいですね。小舟一艘で帰って来ますからねHIROYUKI。銛で仕留めたサカナで食いつなぎながらね。
 でもホラ、汗に光るHIROYUKIの肉体、いいじゃないですか。ここはぜひ、理屈抜きで素材の味を堪能してください。言わばスーパーHIROYUKIタイムですね。食べ進めると何度か出て来ますんでね、楽しみにしててくださいね。

 明国で鍛えたカラテで悪党を懲らしめ、耳目を集める鷹丸。その正体に気付いたのは、将監の弟・不知火幻之介、徳川家康のもとで働く服部半蔵(夏木勲)、そしてクランの遺児……石目、川次郎、五助、右衛吉、門太。彼らは力を合わせ、義賊「石川五右衛門」としてクラン再興の軍資金を稼いでいたのだ。
 再会を喜ぶ鷹丸と仲間たち。遺臣・弥藤次率いる蜘蛛一族も合流した。鷹丸は一同を前に、打倒将監、クラン再興を宣言する。

 埃っぽい戦国時代のキョートを闊歩するカンフー道着のHIROYUKI。新鮮な食べ合わせですね。明国にカンフー道着があったかどうか寡聞にして知らないんですが、まあ美味しければ問題ないでしょう。五人合作の石川五右衛門も、伝奇ものっぽい隠し味になってますね。

 子供たちの中でただ一人行方知れずだったおつう(蜷川有紀)も、鷹丸の前にひそやかに姿を現した。半蔵に育てられた彼女の狙いは、短刀に秘められた隠し金山の地図。しかし鷹丸は、その地図が半分しかない事に気付いていた。

 HIROYUKIはマスクが甘めですから、ヒロインまで甘くするとトゥースイートですよね(それはそれで嫌いじゃないですよ)。ですから彼女のこう、キッと思い詰めたような感じがね、味を引き締めて大変いいですね。

 五助(火野正平)の情婦の密告によって、幻之介と甲賀ニンジャの奇襲を受ける五右衛門一味。迎え撃つ蜘蛛一族の奮闘もむなしく、一味は囚われの身に。鷹丸もまた、将監と側近ニンジャに敗北を喫する。

 情婦のくだりで口の中が時代劇味になってるところに、「スパイダーマン」で熟成されたJACのワイヤーアクションをガッとこう、掻っ込む。食が進みますね。蜘蛛一族の迷彩ニンジャ装束もいいスパイスです。

 鷹丸と将監の対決は、また別の美味しさがありますね。鷹丸のカラテ味、将監のチャンバラ味、側近ニンジャのJACアクション味が互いによく絡んでます。道具めいて一切しゃべらない側近の渋味が効いてますね。

 伏見城の地下牢で恐るべき責め苦を受ける鷹丸であったが、これに耐え抜いてひとり脱走を果たす。

 ハイ来ました、お待ちかねのスーパーHIROYUKIタイムです。上半身裸で緊縛されるHIROYUKI。将監(千葉ちゃん)ボールブレイク・トーチャリングに悶絶するHIROYUKI。身体が温まります

 次はJAC味と混ぜていただきましょう。逆さ吊りからの振り子ムーブ燭台ロウソク咥え縄焼き切りHIROYUKI。そして最後に、伏見城天守閣ダイビングHIROYUKIです。限界ギリギリのアクションに挑むHIROYUKIが大変美味しゅうございます。
 欲を言えば、城内で偶然出くわした秀吉にパンチの一発も食らわせて、ひと味加えてもよかったかもしれませんね。でもそれやると「梟の城」になっちゃいますからね。やむなしですね。

 三条河原でカマユデの刑に処されんとする五右衛門一味。詰めかけた見物人の中には、明国から鷹丸を追って来た愛蓮(志穂美悦子)の姿があった。
 罠を張って待ち受ける不知火兄弟。水中に潜みアンブッシュを狙う鷹丸。そこに乱入したのは、唯一密告を免れた五助だった。刑場がアビ・インフェルノ・ジゴクと化す!

 五助のセルフカマユデを皮切りに、身重の情婦、石目、右衛吉、弥藤次、ドトン・アンブッシュ蜘蛛一族が次々と死んでいきます。巻き添えを食った見物人がアンタイセイの気概を見せますが、鉄砲隊の前にはひとたまりもありません。サツバツとした苦味ですね。

 凄惨なイクサの末、辛うじて逃げおおせたのは鷹丸以下二名のみ。死んだ仲間の名を記した木札を荼毘に付し、鷹丸は鎮魂の舞を捧げる。

 そこでスーパーHIROYUKIタイム、三回目です。闇の中、キャンプファイヤーに照らされて躍動するHIROYUKIの筋肉。舌に残った苦味がスーッと消えていきますね。ファイヤーダンスもしっかり味わって、口の中をリセットしましょう。

 おつうと共に百地砦跡に逃げ戻り、絶望に打ちひしがれる鷹丸たち。そこに突如現れた白髪白髭の老ニンジャこそ、かの戸沢白雲斎(丹波哲郎)であった。苛酷な修行の日々が始まる。

 50's時代劇めいたクラシック仙人キャラ(丹波哲郎)が、前振り一切なしで乱入しましたね。具材の中でもちょっとクセが強い部位です。
 でもこれね、思い切って呑みこんでしまえば、その後の修行シーンが大変美味しくいただけますよ。バック転とか片腕懸垂とか空中ブランコとかね。カンフー映画味とJAC味のマリアージュですね。
 なのでね、白雲斎は本来甲賀ニンジャでは? みたいな疑問はこう、あまり噛まずにツルッといっちゃってくださいね。

 季節は移りゆき、修行は成った。三太夫から預かっていたもう一振りの短刀を鷹丸に託す白雲斎。隠し金山の地図がこれで完成するのだ。

 だがその夜、おつうは二刀を盗んで逃亡を図った。彼女の処遇を巡り、鷹丸と白雲斎は最後の死闘を繰り広げる。命をかけたイクサの果て、鷹丸は短刀逆手持ち二刀流のファイトスタイルを体得。二代目百地三太夫鷹丸の誕生である!

「おつうは半蔵の手先だけどいいのか問題」を、白雲斎が命と引き換えにウヤムヤにした感があります。まあそれはそれでトンチキ味で美味しいんですけど、ここで本当にいい仕事してるのは二振りの短刀ですね。

 マクガフィンとしてはちょっと薄味かなー……なんて、食べながら思ってたんですよ正直。でもね、HIROYUKIが逆手持ちで二刀を構えた瞬間、ピシッと味が引き締まる。ああコレ、メインの具材をヒーローとして完成させるスパイスだったんだと。ストンと腹に落ちましたね私。

 死の床にある秀吉は、後継者・秀頼のために後顧の憂いを断たんと、将監に徳川家康の暗殺を命じた。将監は成功報酬として秀頼の後見人の地位を約束させ、手勢を率いて越前に向かう。
 おつうからその知らせを受け、鷹丸は逡巡する。彼女を信じて動くか否か……悩む彼の背中を押したのは愛蓮であった。

 じっくり煮込んだ将監の伝奇味、いいですね。うかうかしてると歴史が変わっちゃいますよ。徳川将軍の首を落とす東映時代劇ですからね、油断できません。

 愛蓮(悦っちゃん)も、ようやく鍋の底から浮かんできました。ここまでずっとストーリーに関わるのを避けてきたんですね彼女。つまりヒロインではなく女カラテ要員なわけですが、その彼女がメインの具材に絡んできたということは……そう、いよいよ最終決戦です。

 将監一行をアンブッシュする鷹丸と仲間たち。巧妙なトラップと地の利を活かして戦うも、将監の反撃は冷徹かつ苛烈。激戦の場に半蔵も馳せ参じ、最後のイクサはいよいよサツバツを増してゆく。その結末やいかに!

 ここからはもうね、鍋の中の具材をどんどん平らげていきましょう。
 人間扇風機、巨大マキビシ投擲器、空中ブランコレスキュー、逆さ吊りダブルヌンチャク……どれも大変美味しいですが、メインはあくまでヒーロー鷹丸です。剣のつばさをかざして羽ばたくHIROYUKI。このタイミングでコスチュームを一新するのも心憎いですね。

 将監との一騎打ち(側近は自我がないのでカウント外)はね、ぜひ皆さんコレ、ご自身で味わっていただければと思います。千葉ちゃん対HIROYUKIのカードにふさわしい名勝負ですからね。音楽がOFFになるので食べやすいですよ。






 ハイ、というわけで「忍者武芸帖 百地三太夫」、思わず完食してしまいました。

 JAC、カンフー、HIROYUKIだけでも十分美味しくいただけるんですけど、あえて東映時代劇のダシと合わせて、同時にメイン具材のアイドル味も引き出す。ちょっと欲張りすぎではありますが、かえってそれが独特の味わいになってるんですね。この時代の東映、この時代のHIROYUKIならではの旨味が、一見ごった煮風の鍋の中にギュッと詰まった一品です。皆さんもぜひ召し上がってみてくださいね。

 そろそろお時間ですね。渋すぎず甘すぎず、さっぱりしたラストシーンをシメにいただきながら、今日は終わりにしたいと思います。それではまた次回お会いしましょうね。アリガトゴザイマス。(エンディングテーマ:「風の伝説」)

(次回の放送は未定です)

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