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なぜ、「まちの保健室」は事業として食っていけないのだろう

過去に私たちは、地域コミュニティ内で保健室のような機能を果たす場を設け、ボランティアによって運営する試みを行ってきました。しかし、このボランティアベースのモデルは、サービスの持続可能性を保障するという観点から困難が伴っていました。また、収益を得ると言っても、我々の主な目的はあくまで事業の継続性を保つことであり、金銭的な利益を求めていたわけではありませんでした。

ボランティアや職能者による協力体制の美しさを理解しつつも、それでは「まちの保健室」が社会に広く普及することは困難です。優秀な人材が集まりにくい、つまり、「食えない」事業では、社会的なスケールへと事業を拡大することができないのです。これらの視点から、我々は新たなステージへと移行する方法を模索しています。

具体的には、スタートアップが成長段階の「キャズム」を越えるような戦略を取り入れることを考えています。地域で健康関連のサービスや事業を展開する際に、個人からの費用徴収は難易度が高いと感じています。これは、保健室という概念が一般に広く認知され、そのサービスは無料で提供されるべきだという感覚が強く根付いているからです。

そのため、我々は新たなアプローチを考えています。保健室の機能にリビングラボの機能、つまり地域実証の機能を組み合わせることで、その拠点が持つ価値を高め、企業からの調査研究費などを得ることが可能になるのではないかと考えています。

特に最近では、地域のビッグデータ収集というニーズが増えてきているため、データマネジメントの機能もこの新たな拠点に付与することを考慮しています。さらに、スマートシティの実現や都市OSの機能化が進むと、「まちの保健室」はそのサービス提供の窓口として活用される可能性があります。同時にデータ収集も可能となれば、これはサービスの持続的な改善と進化にも寄与するでしょう。

「まちの保健室」の継続的な運営には資金源が必要となりますが、現在の運営体制では、その資金源が寄付、国や自治体からの助成金・補助金、別の事業からの収益、オーナーの私財、そして共同出資等に依存しています。これらの資金源には各々の課題があり、サービスの継続性を保つためには新たな収益モデルの創出が不可欠だと考えています。

以上のことから、新たな価値を創造するためには、保健室機能とリビングラボ機能(地域実証機能)を組み合わせた拠点形成が有効な解決策となると考えています。

その一方で、地域のビッグデータ収集といった新たなニーズに対応し、企業からの調査研究費を得られる構造を作ることで、持続可能な事業運営が可能となるのです。

これら機能の複合的提供により、「まちの保健室」が社会により深く根付き、人々にとって価値ある存在となることを目指しています。

保健室機能+リビングラボ機能の連携モデル例

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