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シニアのスマホ使いこなしと健康サポート、デジタルヘルスのリアルな課題

シニア層向け(ここでは、65歳以上をシニア層と定義して書いています)スマートヘルスケア市場には、過去10年以上にわたって高まる期待が集まってきました。一部の専門家やコンサルタントは、ITリテラシーを持つ世代が徐々にシニアに移行することから、自然とスマートヘルスケアの利用が広がり、その市場が拡大すると予測してきました。

しかしながら、現実は予想とは大きく異なっているように見えます。現在でも、多くのシニアがスマートフォンの操作に苦慮しています。各地の携帯電話ショップで行われているスマートフォン教室に参加しても、基本的な操作の理解がやっとというのが実情です。中には、何回も通ってくるシニアの方々もいます。

このような状況において、ヘルスケアをサポートする新しいアプリが日々出現し、新機能を搭載したアプリがスタートアップから次々とリリースされる一方で、それらを適切に利用できるシニア層は依然として少ないのが実情ではないでしょうか。

■シニア層がアプリを使いこなせない事例
事例1:アプリのダウンロード
スマートヘルスケアアプリをダウンロードするためには、アプリストアを開いて適切なアプリを見つけ、ダウンロードボタンを押すという操作が必要。しかし、多くのシニアはこのプロセスが難しく、具体的には、アプリストアの場所の把握、検索機能の使い方、ダウンロードボタンの見つけ方などに困っています。

事例2:設定変更の難しさ:
スマートヘルスケアアプリでは、個人の健康状態に応じて設定を変更することがよくあります。しかし、設定メニューを開く、必要な設定項目を見つける、設定を変更するという一連の操作は、シニアにとっては非常に複雑で困難。また、誤って設定を変更してしまい、元に戻すことができないという事例もしばしば見られます。

事例3:データの読み取りと理解:
スマートヘルスケアアプリは、ユーザーの健康情報を視覚的に表示する機能を持っています。しかし、シニア層には、この情報の読み取りや解釈が難しく、例えば、心拍数や血糖値などのデータを見てもその意味が理解できない、という問題があります。特に、グラフやチャートの形で表示される情報の読み取りは、シニアにとって特に困難と思われます。

こうした状況を鑑みると、デジタルヘルスビジネスはシニア層において苦戦を強いられる可能性があると考えられます。ただ、企業とシニア層がより良い接点を持つための新しい仕組みの構築や、ビジネスとしての新たなアプローチ方法を模索することは必要不可欠です。

医学的な視点から考えると、スマートヘルスケアの導入は生活の質の向上、疾病の早期発見、そして健康寿命の延伸といったシニア層の健康維持に大きな効果をもたらします。しかし、それらの利点を享受するためには、スマートヘルスケアを理解し、適切に活用できるユーザー(シニア層)が必要となります。

大規模なスマートヘルスケア市場の創出は決して容易な挑戦ではありませんが、シニア層とデジタルヘルスケアとの関わり方を再構築することで、より良い未来を創出するための一歩を踏み出すべきだと私は考えています。



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