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坂東札所・笠森観音

天気晴朗、風もなく暖かな日。車で1時間ほどの上総国笠森観音に行く。ここは坂東三十三観音霊場の第三十一番札所なのだが、もちろん巡礼ではなくただのヒト。三十年以上前に訪れたことはあるのだが、細部は忘れてしまった。観音堂からの眺めが素晴らしかったことだけが記憶の片隅にある。

駐車場から古木に囲まれた階段をゆっくりのぼる。山全体が国指定天然記念物の自然林になっている。途中に子授け楠という古木があり大きく割れた幹の間をくぐるといいといわれている。同行の妻の友人に勧めると「私は年中妊婦だから」という回答。何と返せばいいのやら。60過ぎてもこんな会話ばかりしている。ちなみにここは三十数年前に弟のカミさんがくぐりその年めでたくご懐妊という実績?がある。

覗くと観音様が見える。

ほどなくして二天門という山門を抜けると観音堂が見えてくる。岩盤の上に組まれたその姿は清水の舞台を小さくし野趣を加えたような威容。1028年に建立されその後焼失、現在の建物は解体修理の歳発見された墨書銘から1579〜1597年の再建とされている。

さながら清水の舞台。

堂は61本の柱で支えられていて、その建築様式は日本唯一の「四方懸造」といい国の重要文化財に指定されているといただいたパンフにある。

これが四方懸造。

木組みの階段で観音堂へ。高い所は得意ではないが遠くを見るのであれば大丈夫。回廊でぐるっと回れるので低山なれど奥深い房総の山々を一望できる。同じ呆けっぱなしでも、時には遠くを見ながら呆けることが肝心だ。

気持ちのいい青空。
反対側は雲が。こちらが千葉方面か?
鐘はつかないように。

ところで、昼飯を食べていない。駐車場にレストハウスがあると聞いていたのだが営業していない。観音堂の前にある小さなカフェは週末のみの営業ではないか。隣の売店だけが開いている。なぜかは知らないがここは幸運を呼ぶ黒猫グッズが話題らしい。あわよくばお菓子くらいでもと店内を見回したが、隅から隅までニャニャ〜とネコ。小さな黒の招き猫を買ってしまう。

猫づくしの売店。
ということで、猫。

自然林の中を歩けるというのでそのつもりで来たのだが、腹がへっては何とやらでやむなく断念。昼飯を求めながらの帰途についたが、店らしいものが見当たらない。コンビニで何か買う?と諦めかけたところで、暖簾の出ているしっかりした構えの蕎麦屋を発見。もう食べられれば何でもと飛び込むとジビエ(いのしし)を出す店ではありませんか。「いのしし三昧」なんてメニューがある。蕎麦に丼、ケーキまで。時は2時半、広い店内に客はいない。飢えた還暦過ぎの集団は心ゆくまでようやくありついた御馳走を堪能したのでありました。

コロッケもイノシシの肉入り。そういえば近頃、千葉は「くまなし県」なんて呼ばれている。あ、ケーキはさすがにイノシシではありません。 


自然林に続く道から観音堂を見上げる。
広重の描いた「諸国名所百景」の笠森観音。さすがにこれは登れない。






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