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安曇野の夏・大王わさび農場

2泊3日の安曇野小旅行で、中日に朝食後向かったのは大王わさび農場。さすが安曇野の定番スポット、夏の観光シーズンを終えた月曜日でもそこそこの人出。朝市も開かれているらしい。季節の変わり目を独占できるかと思ったが甘かった。そういう自分も人出の構成員である。

散策できるところだけでもゆっくり歩いて1時間~2時間かけられる広さ。中にはレストランやカフェもある。入場は無料なので、近隣に住んでいたら毎日でも来てしまいそうだ。こんな散歩コースがあるなんてうらやましい。

わさび田。夏場は黒い覆いで水温の上昇を抑える。
覆いの下のわさび田を湧水が絶えることなく行き渡る。

夏場は広大なわさび田もすっぽりと覆い(寒冷紗という)に隠され、一面の「黒」になるが、その下には澄んだ湧水がゆっくりと流れている。水の透明感と冷たさを体感できる親水広場で一休み。日頃触れている水は何だったのかと改めて思う。池にはニジマスが泳いでいる。収穫は道具を使わず、すべて手作業で行われるという。

水車小屋のある川(蓼川)。並行して流れる万水(よろずい)川と合流する。

大王わさび農場といえば、黒沢明監督「夢」のロケ地としても知られる水車小屋のある川の風景。ほかにも朝ドラ「おひさま」のロケや吉田拓郎のアルバムジャケット撮影も行われた。ちなみに、DVD普及を図った観光販促用の「名前のない川-安曇野の四季」というディスクがあり、音楽を吉田拓郎・石川鷹彦が担当している。吉田拓郎が浅瀬の川をズボンの裾をまくって歩いていく後姿がラストシーン。清らかな流れを見ているとそれだけで心が落ち着く。

八面大王伝説の洞窟。

農場の奥に足を進めると「わさび田を守りつづける八面大王」という看板の立つ洞窟に出会う。中央政権から派遣された坂上田村麻呂と戦い敗れ去った大王が住んでいたという有明山(信濃富士ともいう)麓の岩屋を再現したものだという。大王が埋められた胴体がこの農場の一角にあり、大王神社として祀られていて、農場の名前もこの故事にちなむとある。中央政権は住民に無理難題を押し付け、討伐軍である坂上田村麻呂の軍勢などは、刃向かうつもりのなかった大王に対し、住民を襲い次々と村を焼き払ったというから恐ろしい。「夷敵」討伐にまつわる話は各地にあるが、要は征服者だ。軍神だか何だか知らないが、こんなものが祀り上げられる世の中は金輪際まっぴらごめんだ。

春は桜の道になる土手。この先に湧水の水源がある。

冷静さを取り戻して先へ進む。わさび田を見下ろしながら行く土手道は、開拓時に掘り出した土や石を積み上げたもの。春には桜の道になる。その頃にまた訪れてみたいが、混むだろうなあ。わさび田を折り返すと、反対側は梅林が待っている。

せっかくなので昼食は農場の食事処で。たっぷり汗をかいたので冷たい蕎麦をお願いする。おろし金がついてきて、ワシワシとわさびを好みの量だけすっていただく。「辛みもツーンとした感覚もなく、それでいて香りと風味があって美味しい」というのは妻の弁。食レポ能力のない夫は、ただ「うまい」と言ってひたすら食うのみなのである。チューブと違う位はわかる。

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