「バス停」 …散文詩(過去記事マガジンおまけ記事vol.2)
見渡す限りのコンクリート
工場の煙突から出る煙を遮るように太陽が射す。
バスを待っていた。
自分は今日も学校へ行く。
高校生になったのだ。もう歩いて学校へは通わない。
そのうち自分はバスを待ってるのじゃないことに気が付いた。
必ず、自分とのあいだに、一人か二人はさんだ後ろに並ぶセーラー服の学生を心待ちにしていることに気づいた。
彼女は、自分のうしろに直接並ぶことはなかったし、自分もまた彼女のすぐ前にならぶよう遅れて出かけることはなかった。
彼女は、こっちをチラチラ見ることもなく、自分も彼女の方に目配せをすることはしなかった。
いやできなかった。
ただ時折、彼女はバスを、あくまで自分ではなくバスを、バスがまだこないかをうかがうことはあった。
六車線の排気ガスでムンムンのバス停で感じたほのかな香気だった。
自分は何ヶ月かバス停で、またバスの中で幸せを満喫した。
突然、彼女が来なくなった。
何故だろう。色々、もっともらしい理由を考えた。
彼氏ができたのじゃなかろうかという考えに至ったとき、
自分はまたバスを待つようになった。
六車線の排気ガスにまみれたこのバス停で…
(終)
(あとがき)
「セーラー服」とか「工場の煙突」とか、今日の視点からはやや不自然な表現もありますが、それは昭和の頃をイメージしてつくったのでご了承ください。もちろん今日のはなしとしても意味があるとは思ってます。
(製作おまけ小話)
ヘッダー画像は自分で撮ったものですが、作品のイメージとしては、学生のころ単日派遣バイトでよくいった川崎の工場がある区域をイメージしてつくりました。そのあたりまで昨年ヘッダー用に写真を撮りにいきました。
自分は3000字とかある文章ばかり書いてしまいがちなのですが、こういう散文詩的な短い表現にも可能性があると思っています。
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