スペイン リェイダ人形劇フェスティバル 2020年01月12日

画像1

【Lleida, Fira de Titelles】https://www.firatitelles.com/es

大きな教会のある小さな町。巨人人形の伝統がある町。
毎年行われているのが、リェイダ人形劇フェスティバル、カタルーニャ語で"Fira de Titelles"。
かなり町に浸透しており、町中の人々が参加している。小さな路地が、人形と人であふれる。上演会場は沢山あるが、小さい街(例えば飯田よりずっと小さい)のなかに点在しているので、とても回りやすい。風光明媚でご飯も美味しい。「プロ向け」のコミュニケーション・スペースも快適。参加費激安(下記全部見て、さらにランチとお酒も色々込みで総額五千円)。

全体として素晴らしい人形劇フェス。今回鑑賞した中で大傑作が4つもあった。フェス主催者のオリオル夫妻の人柄も良い。

以下は2018年の記録。

TrukiTrek ★★★
https://www.trukitrek.net/mrt.html
人形劇と、上質なアートアニメの融合。
完全なノンバーバル。全年齢向け(ただしアジア人=犬食いのシーンあり)。

たった一人で暮らす、駅員のおじさん。廃駅寸前、急行が通り過ぎるだけの列車に向かって、毎日ベルを鳴らし、見守るだけの仕事。その駅へ一匹の犬がやってくる。おじさんはあらゆる方法でイヌを追い払うが、賢いイヌは必ず戻ってくる。おじさんは子供時代のトラウマにいまだ苦しんでいたが、次第にイヌに救われていく。

TrukiTrekは元々映画監督をしていた二人が始めた人形劇カンパニー。映画的編集術が人形劇にうまく生かされた、テンポ良く心動かされるコメディ作品。

CÍA. JAVIER ARANDA  ★★★ 最優秀作品賞など三冠 https://www.javieraranda.es/
作品名:VIDA

技術のすばらしさ! 目線の正確さ。カタルーニャ語でなくスペイン語。でも7割ノンバーバル。ウニマスペインのボス、イドヤ女史も大推薦。手と指と少しのぼろきれで作る人形。劇中劇から窺える声色の多様さ、うまさ。イドヤさんによれば、ものすごく謙虚で外に出ていかない性格なので、実力に反してスペインでもあまり知られていないとのこと。

CIA. XIRRIQUITEULA TEATRE ★★★ 子供審査員賞受賞 https://www.xirriquiteula.com/

作品名:Laika 

傑作! ソ連の風景。懐かしのHPO機二台、何重にも映し出す。ライカが宇宙へ飛び立つまで世話をした航空局の女性についての、心温まるコメディ。色合いがLOMO的。このグループは森の音楽祭に来日経験ありとのこと。制作にかけた時間はまるまる一年とのこと、完成度高し。

Pickled Image ★★★ https://pickledimage.co.uk/
作品名:Coulrophobia

傑作! イギリスのブリストルの人形劇団。「道化恐怖症」というタイトル。段ボールの世界で生きるクラウン二人。ひたすらギャグを繰り出す。観客を頻繁に舞台に登場させるがその度に爆笑を呼ぶ。

このクラウン二人は、ときどき道化芝居のお約束ごとをうっかり破ってしまう道化二人。道化芝居から脱線するたびに、ボス道化(殺人ピエロ的造形の小さな人形)が強烈な叱咤をする。さすが人形劇団だけあって、人形操演もすごくうまい。劇中劇のパンチ&ジュディも可笑しい。

道化芝居のお約束の破り方も少しずつ度を超して、だんだんと舞台は崩壊していく。全編通じてうっすらうっすら感じるホラー感、でもずっと大爆笑。

Onírica Mecánica ★★ 
https://oniricamecanica.com/?lang=en
ディズニーのアリスが原作。設定は夜中、ディズニー映画のアリスの歌で始まり。カエルの鳴き声がしてから、いなくなるアリス。懐中電灯で探す人々。ちょっとミステリー風味の始まり、だが「ここで起きるのは全てノンセンス」という最初のアナウンスの割にはnonsense要素はとくにない。ヴィクトリア朝要素も無し。デジタルサイネージ、新しいライティング装置を色々と使用。技術的に興味深い

Le Clan des Songes ★★ 
https://www.clan-des-songes.com/
作品名:Bout á Bout

良い作品。いわゆる「黒の劇場」のテクニック。
真っ黒なバックに浮かび上がる縄が、いろんな形に変化する。
操演が正確。縄だけをつかった、見立てを楽しむ人形劇作品として、かなり完璧。ノンバーバル。全年齢向け

BRUNETTE BROS ★☆ 舞台美術賞
https://www.facebook.com/BrunetteBros/

役者は4人のピエロ。二〇世紀初頭ぽい趣味でゴテゴテペイントされたトラックを何台も引き連れて、仮設サーカス広場を再現。スペイン人形劇界ではけっこうあるあるのようだが、美術の(無駄な)熱量がやばい・・・・・・。観客は、謎のガジェット満載トラックの回りを歩かされながら、ポップコーンくばるピエロにいじられ、ポプコーン機械が壊れて暴走する小芝居を眺めさせられる。開始3〜40分経過後、ようやく本番的な見世物がスタート。スカートの下を小さなサーカステントに見立て、両足の間で小さな人形が人間砲などの芸を見せる。観客に歩き回らせる参加型なので、最後のほうにはなんだか意味不明なほど盛り上がっていた。一生懸命で憎めない、フェス内の愛されキャラ感。

Teatro Gioco Vita★  https://www.teatrogiocovita.it/
作品名:El cielo de los osos

アクロバットしている板付き二人からスタートする影絵。この劇団「テアトロ・ジョコヴィータ」は一世代前は影絵界でトップとしてその名を轟かせており、一時期本当に素晴らしかったらしいのだが、その良さがまだ分からなかった。またの機会を狙いたい。

A2manos ★☆  
https://www.a2manos.com/
作品名:El Cruce

一人芝居。ノンバーバル。小学校の図形パズル組み合わせを使って青年の生活を描く。アタッシュケース一つの中の小さな舞台。歩いたり海に行ったり。ダンスに行って酔っ払って小便、など・・・ 図形パズルが人格を持ち始める、という可笑しさ。

Mimaia-Teatro ★ 
https://mimaia.blogspot.de/
作品名:Roig Pel-boig

Toni Rumbau*によれば詩的でとてもよい(「しかし観客は不満足なのは分かる、しかし僕は演者を良く知っているから良い作品になり得るということが分かるんだ」)らしいが、私には退屈だった・・・。タイプライターで書いたことが本物になる、想像力を描いた作品。主演の人は、東京のプーク人形劇場でも上演したことがあるとのこと。
*Toniはスペインの人形劇研究者で、人形劇情報サイトPuppetring(https://www.puppetring.com/)主宰


以下は参考映像無し

VINCENT DE ROOIJ ★★ https://www.vincentderooij.nl/
作品名:BARKO

https://www.vincentderooij.nl/pages/?page_id=91

10分だけのショー。観客は各回10名ほど限定、本物の飛行機に乗り込む。機長の爆笑ショー。揺れたり、パニックになったり、機長がパラシュートで降りちゃったり。

Puzzle Theatre ★ https://www.puzzletheatre.com/
作品名:Plastique

カナダ在住のブルガリア人夫婦カンパニー。これはビニール袋でその場で鳥に見立てて演じる人形劇。このカンパニーはいつも一つの素材だけ(ティッシュ一箱、とか)で一作品作りあげることにこだわっているらしく、毎回それなりに出来ているのだけど、人形がそれだけシンプルなら、台本や、物の振る舞いのアイディアがもっと爆発的に面白くあってほしい。それがない

LOS TITIRITEROS DE BINÉFAR ★  https://www.titiriteros.com/
作品名:CHORPATÉLICOS

https://www.titiriteros.com/es/chorpatlicos-e21.html

たみこさんオススメ、パコさんの劇団。

しかし今回はパコが出て折らず、おばさんと若い男二人、どちらも役者がいまいち。(舞台美術は、スペインの古い味わいが出ていて中々よさげ。)ガルシア・ロルカなどスペインの重要な詩人を歌に乗せて子供に紹介するみたいなショーなのだが、音楽がみうらじゅんが十代にカセットに撮っていたロック並みに下手なので台無し。これを舞台で見ないで詩集を読んでくださいと子供に言いたい。

ALAUDA TEATRO  ★  https://alaudablog.wordpress.com/
作品名: Cristóbal Purchinela 

https://alaudablog.wordpress.com/cristobal-purchinela/

プロセニアムの上で演じるスタイル。伝統的なスペイン版パンチ芝居。死に神をやっつける、鳥、ワニ、・・・。「クリストバル」というのが、カタルーニャのパンチ。伝統的スタイルをきちんとやっていて素晴らしいのだが、その後バルセロナのLa Puntual劇場の創設者のプルチネラ劇を見てしまい、そちらの方がパフォーマンスや客とのやりとりがずっと面白かったので・・・。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?