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スナック キズツキ

お酒を置いていない変わったスナック「スナック キズツキ」
ここは傷ついた人だけがたどり着ける不思議な店。
ママの名はトウコ。
訪れたお客がため込んだちょっとした「傷」を一緒に発散してくれるのだ。



こんなスナックが現実に存在するわけはなく、
先日見たドラマのあらすじである。
原作は益田ミリさんの漫画だ。

このドラマを見て、少し自分の中で変化があった。

登場人物はみな様々な理由で心が傷付いている。
そしてその傷ゆえに、
人に八つ当たりをしたり、お店で嫌な態度をとったり、大きな態度でクレームを入れたりしている。
そしてそんな自分にひどく嫌気が刺し、
落ち込んで歩いているうちに、
このスナックを見つけるのだ。

なるほど、と思った。

飲食店を営んでいると、
ごくたまにどうしようもない人がご来店することがある。
その度に
「こっちはご機嫌に営業していたいのになんでじゃ!!」
と1人静かに鼻息を荒くしていた。

でももしかしたらこの人達は、
どうしようもなく傷付いているのかもしれない。
いらいらむしゃくしゃして、
ごくごく普通の態度さえ取ることができないのかもしれない。


そう思うようになってから、
そんな人にも優しくすることは少しもできなかった。
何も変わらなかった。
仮にその人が傷ついているからといって、
私を傷つけていいことにはならない。

全くもって許容できない。

心が狭くて申し訳ない。

そもそも現実はこんなドラマのようにうまくいくわけはないので、
その人が傷付いているかどうかも分からない。
ただただ根っからのクソヤロー説の方が濃い。

クソヤローなんて絶対に言ってはいけません。


だが、相も変わらずご立腹した帰り道で、
「まぁあの人も色々あったのかもしれんなぁ」
とぼんやり思うようにはなった。

これだけでも大きな変化だ。

これから京都も桜が咲き、
沢山の人が京都にやって来る。

そして桜に誘われクソヤロー様がやって来ることがあるかもしれない。

そんな時は変わらずしっかり腹を立てたあとで、
帰り道に少しだけ、スナックキズツキを思い出そうと思う。
なんならわたしがスナックキズツキになってやろうと思う。

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