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#1分マガジン「黒い羽根ペン」

作家は絶望していた。このひと月、まったく小説が書けない。頭のなかはすっからかん。物語のかけらも残ってない。

死んでしまおうか。

つぶやいたそのとき。
バサッ。
闇をはたいて書斎の窓に何かが舞い降りた。黒く大きな翼が屋根にうずくまる。

死神だった。

「小説が書けなくて死にたいのか。
俺の羽根は死んだ魂の人生が記憶されている。
ペンにすれば、物語が1本書ける。
ただし、1枚使うごとに、お前の寿命は1年短くなる」

どうする?

男は死神の翼から黒い羽根を1枚抜き取る。
恐る恐るペン先をつけると、どうだろう。
すべるように小説が書ける。

男は寝る間も惜しんで書いた。書き終わると羽根は消える。
死神からまた1枚抜き取って書く。また1枚。
どれもベストセラーになった。

もうどのくらい寝ていないのかもわからない。ペンだけは走り続ける。
死神が窓辺に来たことを感じた。

「お前は50枚の羽根を使った。わかるな」

「ええ、満足しました。連れて行ってください」
男が顔をあげると、目の前には白い翼の天使がいた。

「お前のおかげで黒い魂を浄化することができた。
だから、命の粒はお前に返す。書き続けるがいい」

天使は純白の翼をはためかせ天へと還っていった。

(497字)

* * * * *

この作品は、小牧幸助さんのこちらの企画に触発されて書いたものです。
小牧さんは毎日、くすりとしたり、ドキッとしたり、ほんわかする
エッジの利いたショートショートを発表されています。
小牧さん、すてきな企画をありがとうございます。
ぎりぎり間に合いました!


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