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第1話(01)は、こちらから、どうぞ。 前話(03)は、こちらから、どうぞ。 <登場人物> 翔子:主人公 ジャン:翔子の夫(イギリス人) * * * * * 第1章:翔子ーフライト04 ジャンは卒業すると教授の紹介で美術館にアシスタントキュレーターの職を得た。その2年後に学位卒業した翔子は、小さな古書店に勤めた。ジャンと暮らしていたアパートはシティの近くだったから、金融機関に就職すれば、もっと良い給料が得られただろう。だが、古書店は翔子にとって憧れであり、イギリス留学
第1話(01)は、こちらから、どうぞ。 前話(02)は、こちらから、どうぞ。 * * * * * 第1章:翔子ーフライト03 この国には勉強をしに来たのだからと。はじめは頑なにあらがっていた翔子だったが、ひとりで異国の地にいる寂しさがあったことは否めない。 その冬一番の冷え込みになった朝、部屋のヒーターが故障していることに気づいた。イギリスの冬は寒い。セーターを重ね着しマフラーを巻いて布団にくるまったが、それでも、古い安アパートの窓のすき間から容赦なく侵入してくる冷気
第1話(01)は、こちらから、どうぞ。 第1章:翔子ーフライト02「ブレックファストだよ」 ジャンに耳もとでささやかれて、我に返った。 どうやらいつの間にか再び眠りに落ちていたらしい。朝焼けの雲海を眺めながら、遠い日の追憶にふけっていたように思っていたのだが、どこからが夢だったのだろうか。 ジャンと出会ったのは、ロンドンに留学してまもないころだ。 その朝は寝坊してあわてていた。キャンパス前の信号がウォーキングに変わるのを、せわしなく足踏みしながら待っていた。信号が
第1章:翔子ーフライト01 まだ、機内は暗い。 だが、窓の縁からにじむ光が夜明けを告げていた。 翔子は隣のジャンが一定のリズムでひそやかな寝息を立てていることを確認して、そっと自分のリクライニングをもどした。 周囲を気にかけながら、ほんの数センチだけ窓のシェードをあげる。 たちまち淡い光がきっちりと窓枠の幅で躍りだす。翔子は上半身だけ斜めに窓の方に向けて、光を遮った。 ふふ、いたずらをしている子どもの気分ね。 ためらいがちにシェードを半分まで持ちあげると、眼下