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小説『虹の振り子』

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中編小説『虹の振り子』をまとめています。 国際結婚と家族の物語です。
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#一人じゃ気づけなかったこと

小説『虹の振り子』08

第1話(01)から読む。 前話(07)から読む。 <登場人物>  翔子:主人公 芳賀啓志:翔子の父      芳賀朋子:翔子の母           芳賀登美子:啓志の母、翔子の祖母       芳賀仁志:啓志の父、翔子の祖父         ジャン:翔子の夫(イギリス人) * * * * * 第2章:父ーグラウンド 04  父の文机の周りで山脈を築いている書物の中に、それはあった。  百か日の法要と新盆を済ませると、母は離れに居を移すと言いだした。母屋には部屋がじゅ

小説『虹の振り子』07

第1話(01)から読む。 前話(06)から読む。 <登場人物>  翔子:主人公      芳賀啓志:翔子の父      芳賀朋子:翔子の母           芳賀登美子:啓志の母、翔子の祖母       芳賀仁志:啓志の父、翔子の祖父         ジャン:翔子の夫(イギリス人) * * * * * 第2章:父ーグラウンド 03  翔子が生まれた朝のことを、啓志は近ごろよく思い出す。  日付の変わった深夜に陣痛をもよおした朋子を親戚が営む産院に車で連れて行った。  

小説『虹の振り子』06

第1話(01)から読む。 前話(05)から読む。 <登場人物>  翔子:主人公      芳賀啓志:翔子の父           芳賀登美子:啓志の母、翔子の祖母       芳賀仁志:啓志の父、翔子の祖父         ジャン:翔子の夫(イギリス人) * * * * * 第2章:父ーグラウンド 02  春の海のような人だと思った。  はじめて朋子に会ったのは嵐山の料亭だった。淡い縹色の訪問着がよく似合っていた。庭の桜が風に舞って二、三片うすい水色のきものの肩に乗った