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100字物語「少年のさがしもの」

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毎回、100字でショート・ショート風ストーリーを連載していきます。100話完結をめざし、物語をつなげていきます。テーマは、少年のさがしもの。何が見つかるかは、お楽しみに。
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#ほぼ100字小説

100字物語「少年のさがしもの」#第8話

少年はトンネルを探していた。裏山の崖に作った秘密基地。ガラクタを持ち寄った。切れかけの懐中電灯。壊れたリモコン。空き缶。自転車のチェーン。入口のカモフラージュに集めた枝と枯れ葉は猫が蹴散らしていった。 (to be continued) 毎回、ぴったり100字で1枚のフォトジェニックなショート・ショート風ストーリーを連載。100話完結をめざし、物語をつなげていきます。テーマは、少年のさがしもの。何がみつかるかは、お楽しみに。

100字物語「少年のさがしもの」#第9話

少年は背景を探していた。午後の陽のさしこむ図書館の窓辺。スチールの棚に並べられた色褪せた背表紙の群れ。高い天井にヒールの足音が響く。木枯らしが、落ち葉の舞を指揮する。猫がシルエットだけを残して消えた。 (to be continued) 毎回、ぴったり100字で1枚のフォトジェニックなショート・ショート風ストーリーを連載。100話完結をめざし、物語をつなげていきます。テーマは、少年のさがしもの。何がみつかるかは、お楽しみに。

100字物語「少年のさがしもの」#第10話

少年は翼を探していた。広い河川敷のグラウンド。小春日和の日曜。ジョギングの波にエールを送るトランペットの叫びが、空に吸い込まれてゆく。陽だまりに目を細める猫。河原の土手に寝転べば、ひとすじの飛行機雲。 (to be continued) 毎回、ぴったり100字で1枚のフォトジェニックなショート・ショート風ストーリーを連載。100話完結をめざし、物語をつなげていきます。テーマは、少年のさがしもの。何がみつかるかは、お楽しみに。

100字物語「少年のさがしもの」#第11話

少年は轍を探していた。岬を巡るワインディングロード。自転車を嘲笑うように、エンジン音が風を切り裂き駆ける。展望台の柵から伸びる望遠レンズ。鷹が急降下する。轟くシャッター音。猫がバイクを値踏みしていた。 (to be continued) 毎回、ぴったり100字で1枚のフォトジェニックなショート・ショート風ストーリーを連載。100話完結をめざし、物語をつなげていきます。テーマは、少年のさがしもの。何がみつかるかは、お楽しみに。

100字物語「少年のさがしもの」#第17話

少年は境界を探していた。雨あがりの日曜。空港の屋上デッキは人もまばら。濡れた滑走路は黒く艶やかに光っている。猫が水溜まりに顔を映す。水平線に虹が弧を描く。雲の切れ間に向かって、轟音が直線で飛び立った。 (to be continued) 毎回、ぴったり100字で1枚のフォトジェニックなショート・ショート風ストーリーを連載。100話完結をめざし、物語をつなげていきます。テーマは、少年のさがしもの。何がみつかるかは、お楽しみに。

100字物語「少年のさがしもの」#第18話

少年は象徴を探していた。路線バスで帰る夜の住宅街。競うように明滅するイルミネーションの庭は、ジェリービーンズの色彩。バス停で猫が待っていた。きらめく光を背にモンローウォークを披露する。エレキが欲しい。 (to be continued) 毎回、ぴったり100字で1枚のフォトジェニックなショート・ショート風ストーリーを連載。100話完結をめざし、物語をつなげていきます。テーマは、少年のさがしもの。何がみつかるかは、お楽しみに。

100字物語「少年のさがしもの」#第20話

少年は天秤を探していた。夜明け前のジョギング。丘の上までの最後の坂道。眼下には街灯の波が煌き、東の空には明星が瞬く。山の稜線が白く霞みはじめる。クールダウンをしていると、猫が朝の挨拶をしに寄って来た。 (to be continued) 毎回、ぴったり100字で1枚のフォトジェニックなショート・ショート風ストーリーを連載。100話完結をめざし、物語をつなげていきます。テーマは、少年のさがしもの。何がみつかるかは、お楽しみに。

100字物語「少年のさがしもの」#第21話

少年は刻を探していた。港のレンガ倉庫。傍らにあるのは閉園した遊園地。乗る人のいない観覧車は、海鳥たちの泊まり木。カモメの嬌声が錆色の冬空を掻きまわす。猫がしきりに顔を舐めている。明日は雨かもしれない。 (to be continued) 毎回、ぴったり100字で1枚のフォトジェニックなショート・ショート風ストーリーを連載。100話完結をめざし、物語をつなげていきます。テーマは、少年のさがしもの。何がみつかるかは、お楽しみに。

100字物語「少年のさがしもの」#第29話

少年は動機を探していた。体育館での終業式。誰も聞いていない校長の挨拶。生徒指導のリフレイン。筋書きの変わらないドラマには退屈の勲章を。密談がひそやかに多発し飛び火する。猫がギャラリーから監視していた。 (to be continued) 毎回、ぴったり100字で1枚のフォトジェニックなショート・ショート風ストーリーを連載。100話完結をめざし、物語をつなげていきます。テーマは、少年のさがしもの。何がみつかるかは、お楽しみに。