マガジンのカバー画像

100字物語「少年のさがしもの」

100
毎回、100字でショート・ショート風ストーリーを連載していきます。100話完結をめざし、物語をつなげていきます。テーマは、少年のさがしもの。何が見つかるかは、お楽しみに。
運営しているクリエイター

#スキしてみて

100字物語「少年のさがしもの」#第22話

少年は余白を探していた。冬枯れの林。葉を落としたスケルトンの樹々。枝が無尽に重なり緻密な細密画を空に描く。猫が積もった枯れ葉にダイブする。初雪が線描の隙間を縫って、パラシュートのごとく風に舞い降りる。 (to be continued) 毎回、ぴったり100字で1枚のフォトジェニックなショート・ショート風ストーリーを連載。100話完結をめざし、物語をつなげていきます。テーマは、少年のさがしもの。何がみつかるかは、お楽しみに。

100字物語「少年のさがしもの」#第23話

少年はベクトルを探していた。マンションの建設現場。薄曇りの空に、クレーンが鎌首をもたげ咆哮をあげる。列車の貨物基地の跡地。よく父と来た。今は鉄骨と足場しか見えない。猫がトタンの下を潜り偵察に出かけた。 (to be continued) 毎回、ぴったり100字で1枚のフォトジェニックなショート・ショート風ストーリーを連載。100話完結をめざし、物語をつなげていきます。テーマは、少年のさがしもの。何がみつかるかは、お楽しみに。

100字物語「少年のさがしもの」#第24話

少年はシナリオを探していた。小さなプラネタリウムのある坂の上の天文館。頭上に投影される星の地図。宇宙の旅を終えると、外は黄昏はじめていた。蒼き昴を見つけられるだろうか。隣の空地で猫が集会を開いていた。 (to be continued) 毎回、ぴったり100字で1枚のフォトジェニックなショート・ショート風ストーリーを連載。100話完結をめざし、物語をつなげていきます。テーマは、少年のさがしもの。何がみつかるかは、お楽しみに。

100字物語「少年のさがしもの」#第25話

少年は鏡を探していた。雪の朝。消えてしまった道のあちこちで光が乱反射する。枝は限界までしなって弾け、雪煙を巻き上げる。ランドセルの一団が投げ合う白銀の球は空中で割れ、家の軒下には猫の足跡が残っていた。 (to be continued) 毎回、ぴったり100字で1枚のフォトジェニックなショート・ショート風ストーリーを連載。100話完結をめざし、物語をつなげていきます。テーマは、少年のさがしもの。何がみつかるかは、お楽しみに。

100字物語「少年のさがしもの」#第26話

少年はエコーを探していた。川沿いの並木道。土手の下の小さな教会。ステンドグラスの嵌め込み窓で光がさんざめく。日曜礼拝に向かう親子が前を行く。天に昇るアメイジンググレイスの歌声。猫がしっぽで指揮をとる。 (to be continued) 毎回、ぴったり100字で1枚のフォトジェニックなショート・ショート風ストーリーを連載。100話完結をめざし、物語をつなげていきます。テーマは、少年のさがしもの。何がみつかるかは、お楽しみに。

100字物語「少年のさがしもの」#第27話

少年は変化を探していた。午後の数学の授業。√、Σ、∞。黒板で蠢く謎の外来種の群れ。瞼に眠気が降下する。窓から見えるプールは緑に侵略され、猫がプールサイドで獲物を物色している。ノートを閉じて午睡をとる。 (to be continued) 毎回、ぴったり100字で1枚のフォトジェニックなショート・ショート風ストーリーを連載。100話完結をめざし、物語をつなげていきます。テーマは、少年のさがしもの。何がみつかるかは、お楽しみに。

100字物語「少年のさがしもの」#第29話

少年は動機を探していた。体育館での終業式。誰も聞いていない校長の挨拶。生徒指導のリフレイン。筋書きの変わらないドラマには退屈の勲章を。密談がひそやかに多発し飛び火する。猫がギャラリーから監視していた。 (to be continued) 毎回、ぴったり100字で1枚のフォトジェニックなショート・ショート風ストーリーを連載。100話完結をめざし、物語をつなげていきます。テーマは、少年のさがしもの。何がみつかるかは、お楽しみに。

100字物語「少年のさがしもの」#第30話

少年はサンクチュアリを探していた。ギターのチューニングを合わせていると、窓辺で猫が鼻を鳴らす。覚えたてのコードは不協和音。手始めにホワイトクリスマスをつま弾いてみた。粉雪が舞う。Holy Night。 (to be continued) 毎回、ぴったり100字で1枚のフォトジェニックなショート・ショート風ストーリーを連載。100話完結をめざし、物語をつなげていきます。テーマは、少年のさがしもの。何がみつかるかは、お楽しみに。

100字物語「少年のさがしもの」#第31話

少年は軌道を探していた。忘れられたバスケットボール。拾ってゴールを睨む。幻のディフェンスをかわしながらリング下からレイアップだ。鋼の縁に強打して曲線で跳ねた。猫がリバウンドを追い駆ける。鷹が旋回する。 (to be continued) 毎回、ぴったり100字で1枚のフォトジェニックなショート・ショート風ストーリーを連載。100話完結をめざし、物語をつなげていきます。テーマは、少年のさがしもの。何がみつかるかは、お楽しみに。

100字物語「少年のさがしもの」#第32話

少年は展望を探していた。氏神様へと続く参道。まだ設営されていない屋台が並ぶ。明日は大晦日。煤払いの焚火がはぜる音がする。ポケットの隅で忘れていた5円玉を賽銭箱に投げ入れる。柏手を打つと、猫が見あげた。 (to be continued) 毎回、ぴったり100字で1枚のフォトジェニックなショート・ショート風ストーリーを連載。100話完結をめざし、物語をつなげていきます。テーマは、少年のさがしもの。何がみつかるかは、お楽しみに。

100字物語「少年のさがしもの」#第33話

少年は追憶を探していた。住む人のいなくなった蔦の絡まる御影石の洋館。いよいよ取り壊しが決まったと母が嘆いていた。石畳の坂道に夕陽が影を落とす。船が汽笛を鳴らして、港を出て行く。どこかで猫の鈴が鳴った。 (to be continued) 毎回、ぴったり100字で1枚のフォトジェニックなショート・ショート風ストーリーを連載。100話完結をめざし、物語をつなげていきます。テーマは、少年のさがしもの。何がみつかるかは、お楽しみに。

100字物語「少年のさがしもの」#第34話

少年はドラマを探していた。湖のキャンプ場。漆黒から紺青のグラデーションを描く天。雲が墨を流したように透け、星が動く。南の宙で天狼が目を光らせている。コッヘルでコーヒーを沸かした。猫が焚火の傍らで蹲る。 (to be continued) 毎回、ぴったり100字で1枚のフォトジェニックなショート・ショート風ストーリーを連載。100話完結をめざし、物語をつなげていきます。テーマは、少年のさがしもの。何がみつかるかは、お楽しみに。

100字物語「少年のさがしもの」#第35話

少年は挑戦を探していた。誰もいない冬の浜辺。白い雄叫びをあげてうねる波。すぐに消し去られる猫の足跡。サーファーがひとり灰白色の空を背に、砕け散る荒波と格闘している。潮騒のリフレインが応援歌を轟かせる。 (to be continued) 毎回、ぴったり100字で1枚のフォトジェニックなショート・ショート風ストーリーを連載。100話完結をめざし、物語をつなげていきます。テーマは、少年のさがしもの。何がみつかるかは、お楽しみに。

100字物語「少年のさがしもの」#第36話

少年は進路を探していた。港のドック。運河に架かる橋から貨物船の進水式を眺める。斧が綱を切ると、シャンパンボトルが船腹で砕け散った。ドックに海水が侵入する。デッキの上空で群れるカモメ。猫が毛を逆立てた。 (to be continued) 毎回、ぴったり100字で1枚のフォトジェニックなショート・ショート風ストーリーを連載。100話完結をめざし、物語をつなげていきます。テーマは、少年のさがしもの。何がみつかるかは、お楽しみに。